タイムフリーが終わる前に♪9の音粋(#キュウオン)「詞ノベーション特集」2022,5,16つまみ聞き

音楽歴史探偵力を遺憾なく発揮するDJと言葉にできない→言葉にしろよ!DJ2人の音楽トーク番組。bayfm9の音粋(#キュウオン)月曜日。2022,5,16「詞ノベーション特集」タイムフリーが終わる前に是非お聞き下さい!ここではちょっとつまみ聞き。DJはスージー鈴木(スー)ミラッキ大村(ミ)
スー)はい、第111回でございます。あ、42?ミラッキさん42歳おめでとうございます。いつかの番組の中で「この歌詞は発明に近い」という言い方をしたんです。今回は歌詞のイノベーション、題して「詞ノベーション」を考えてみたいと思います。
ミ)スージー鈴木、造語でございます。
スー)はい、元広告代理店でございます。ハッハッハッ。私の流れは、ロックのビートにどう日本語の歌詞を乗せたかという歴史を追ってみたいと思います。まずはですね、今回一番私が好きな歌詞の曲を最初にかけようと思います。なんか持って回って最後まで取っておくのね、水曜日っぽいので。
ミ)アッハハハハ。
スー)1番始めにドーン!と好きな曲、こっから入ろうと。
ミ)水曜9の音粋は「道」ですからね。(※DJ藤田太郎の水曜日は「○○への道」というコーナーがあり、取り上げた1曲に関わりのある曲をかけラストにその曲をかける)

【1978年桑田元年制定】
スー)エネルギーがあって、ナンセンスで勇気を感じるこの曲なんですけど、歌詞はこんな感じです。あ、1番始めのパートはミラッキさんに捧げられてるんじゃないかと思うんです。☆ここから朗読:森本レオ風^^;「ヒマラヤほどの消しゴム一つ 楽しい事をたくさんしたい ミサイルほどのペンを片手に おもしろい事たくさんしたい」消しゴムとペン、モノを書いて世の中楽しくしようじゃないか、というメッセージだと読むと、これは放送作家への応援歌です。
ミ)クリエーター全般へですね。
スー)「消しゴムとペン」というので楽しい事おもしろい事っていう話から入って、次がいかにもこのバンドっぽいんですよ「夜の扉を開けて行こう 支配者達はイビキをかいてる」
ミ)うん。
スー)「支配者」ですよ。中々今こういう歌詞を書くバンドっていうのは。後にも先にもあんまり無いかもしれませんけれど。ちょっと文学的って言いましょうかね、都市文学な感じがします。でもこの曲が本当に最高なのは、ナンセンスなフレーズがあるところ。日本語のロックの歌詞ってのは難しくっちゃダメで、意味不明な軽~い、ちょっとコミカルなフレーズがあると活きるんですよね。この曲にもありまして「誰かに金を貸してた気がする そんなことはもうどうでもいいのだ」イイですよねえぇ。ハハハ。この歌詞は、別に無くてもいいんですよ。ただ、あるから、すごくねぇ重くならずに、軽快にロックっぽくなると思うんですよね。という歌詞が1993年に発表されています。繰り返しますが、一番好きな歌詞ですね。ハハその日によって変わりますけど。洋楽ならジョニ・ミッチェル『サークルゲーム』日本語ロックならこれじゃないですかね。
♪ザ・ブルーハーツ『1000のバイオリン』
スー)いい曲だなと思います。日本語がリズムに乗っている、これは前提として、文学性、文学的なセンス、後はナンセンス、コミカルな感じこの3つが大事。加えてブルーハーツが新しかったのは、歌い方。歌詞がめっちゃ聞き取り安かったじゃないですか。
ミ)はい。まっすぐに。
スー)ね。普通に歌ってるように聞こえますが、これ、当時すっごく新しくって。何かって言うと、僕も半分そうなんですけど、生まれた頃から日本語ロックがあった世代っていうのが90年代に台頭して来た。それが、80年代に日本語を歪めて歌うっていう流れを断ち切って、子どもの頃から日本語ロックを知ってる人間に、普通に日本語を歌う、っていうのが歌い方の発明でも、あったんですよね。ブルーハーツの新しさはそこにもあります。
ミ)そうですね。また、ここまでまっすぐな歌い方の人は、今いないですからね。
スー)あー、かもしれないですね。80年代行きますね。皆さんからメールもらってます。ごっちゃんさん、バラードきりんさん、moonyさん、村ちゃんさん、ブルートパーズさん、全員《詞ノベーションはサザンだ》と。まさにその通りなんですけど。今から1世代前の、洋楽が大好きで、みんな洋楽を聞いてるリスナーに対して、日本語という言うなればロックではダサいものを、いかに洋楽っぽくリズミカルに歌うかという事はやはり、桑田佳祐以前以後、だと思います。サザンのデビューが1978なんですけど、これが詞ノベーションの起源ですね。
ミ)なるほど。
スー)だから、今年は「桑田45年」です。フフッ。桑田佳祐が発明した一番重要なことは「リズムに乗せる」って事ですよね。あと、リズムに乗せる為に意味から解放する、自由になる、もっと言えばナンセンス。ナンセンスでいいじゃないか、っていう発明なんですよね。こんな歌詞があります「あっそうあっそう思い切りそげなこと」方言使ったり「どいつもこいつも話の中身が どうなれこうなれ気持ちも知らずに」ラップ、そして大サビで「別れ話はMISTERY 昔話はHISTORY…しゃぶりつくよにPATIENTLY」英語とのチャンポン。意味が全く分かんないんですけど、なんとなく、わかると。この歌詞の歌い方、これが最大の発明でした。これが紀元でございます。‘79年桑田2年でございます。
♪サザン・オールスターズ『思い過ごしも恋のうち』
スー)今Twitterでね《親父の世代が(サザンは)なに歌ってるか全く分かんないと言ってた》と何人かつぶやいてますが、ホントにそうで、これが本当に新しかったんですよね。今聞いたら、割と普通に聞こえると思うんです、若い方には。これ凄かったんですよ。あと「しゃぶりつくよにPATIENTLY」どっか、エッチっぽいんですよね。フフフッ。
ミ)そうそう。なんかあんだろうなって。「男は立てよ行けよ女の元へ」も立てよなあ、みたいな。
スー)フフッそうそうそう。エロティックで肉体的な感じもして、そこもロックっぽかったんですよ。いろんな意味で桑田元年だったんですけれど。次は桑田佳祐と同級生1956生まれ佐野元春でございます。桑田佳祐と同じ早口でかつ、英語っぽい日本語を歪めた発音するんですけども、なんか発音の仕方とか歌い方が桑田佳祐より都会的で洗練されてるんですよね。ビートにきっちり乗る、って感じがします。桑田佳祐はちょっとデタラメって言いましょうか、エイヤッ!って動物的にやってる事に対して、ちゃんと数学的に乗ってる感じがします。方言やエロは出て来ません。ムフフ。
ミ)アハハハハ。
スー)そん中で、一瞬吉田拓郎的な字余りに聞こえる曲なんですけれども、よく聞いていただくと、案外ブルース・スプリングスティーンぽくちゃんとリズムに乗っているという、計算された感じがありますね。こんなフレーズがありますよ。「女神のような街頭の光に誘われながら 夜の小鳥たちはガードレールの上で翼を休めている」いいですねぇ。一番好きなのはここですね。「今サーチライトの中で一人の男が鉄条網をくぐり抜けようとしている 片手には宝石もう片方の手の中では 狂暴な情熱が吠え始めている」ブルーハーツの先祖みたいな感じしますね。なんか、英語の文学を日本語に訳したような言葉遣いって言うんですかね。すっごく洗練されてて、桑田佳祐よりも都会的な感じが、当時しました。それでも、変わった歌詞、変わった歌い方でございますね。
♪佐野元春『君をさがしている(朝が来るまで)』
スー)こういう訳で、はっぴいえんどに始まって桑田佳祐から佐野元春、って話はよく語られるんですよ。でももう1軸あって、ここ重要だと思ってるんですよ。こっちの方がメインじゃないかと思う時があるんですけど。何かと言うと、文学性、意味、どうでもいいじゃないかと。日本語なんて言葉なんて意味いらないんだよ、英語も含めてカッコ良ければいいんだよっていう流れがあって。こっちの方がマーケットが大きいんですね。こういう歌詞が85年に生まれるんですよ。「Oh yeah!アッパッパーなlady, feel so bad about me! Get out, get out」はあ~⁈っていうね。
ミ)いいですねえ。
スー)もう思わず書初めに書こうかと思いますよね、意味が無さ過ぎて。
ミ)ハッハハハハ。
スー)BOØWYです。すっごい言葉も歪んでますし、歌詞カード見ても何言ってるかさっぱりわかんない。何となくエロティックな話をしてるんですけど、この中間部「Oh yeah!アッパッパー」なんて日本語ロックでは中々出て来ないですよね。英語もデタラメなんですよ。「lady, feel so bad about me」。「body feel exit」の15年まえですからね。
ミ)後の小室哲哉的な。
スー)そう。こっちの方がマーケットが大きいっていうか、東京都内だけじゃなくて北関東のリスナーも付いて来る感じがします。で、こっちの方が発明かもしれないな、と思う時があるんですよね。ミュージックマガジンでは語られない話かもしれませんけど。こっち、重要だと思います。そしてこれはあの、ロックン・ロールバンドの後継だと思うんですけど、それはまた後程ご紹介します。
♪BOØWY『BAD FEELING』
スー) 話戻りますけど、佐野元春の所でミラッキさんから重要な指摘がありましたね。
ミ)あのー、さっきかけた『君をさがしている(朝が来るまで)』が81年でこの1年後尾崎豊が出て来るんですよね。って話を。
スー)で、吉川晃司も影響下にあるね、岡村靖幸も繋がって行くと考えると、尾崎→吉川→岡村靖幸、同級生。ハハッ。
ミ)そう、1965年生まれ。昭和40年会。
スー)古田敦也ハハハ。なるほど、昭和40年会に佐野元春が大きな影響を与えてるっていう事実が判明しましたね。

【ミラッキ・ターン】
スー)重要な指摘はTwitterからも、ゆうなさん《(氷室京介)なんなく西城秀樹風味があるんですが、音のせいかしら》。いいトコ指摘しますね。
ミ)歌い方の歴史です、これは。
スー)全く同じ歌い方ですね。吉川晃司が出て大ヒットしたのは、先に佐野元春がいて露払いしてるんですよね。あの歌い方を啓蒙してるんですよね。
ミ)ハハッ。露払い。
スー)同じく氷室京介大ヒットしたのは、西城秀樹があの歌い方を、啓蒙、って言葉はアレかな、広めてるんです。地盤作ってんですよね。
ミ)洋楽のような歌い方の秀樹さんがあって、ヒムロックがあって、河村隆一に繋がってという。
スー)(☆再び森本レオ風に^^;)これぞ、歌詞、詞ノベーション。
ミ)ハハハッ。私のゾーンです!
☆言葉にできない→言葉にしようよ、それが作詞だろ!あの日あの時など、表現しないであれだけ売り上げた人はいない。例えようもない夕焼け→例えようよ!言葉や文学表現にいちゃもんつけてるミラッキさんのくくり。
♪オフ・コース『言葉にできない』
☆表現しているけれど、何を言ってるかわからない枠。奥さんもいる妻帯者→妻帯者は奥さんいるんだよ。
♪岡村靖幸『聖書(バイブル)』
スー)オフコースから岡村靖幸、高低差が激し過ぎる。まだ若いな42歳。オジサンは耳がキーンとしましたよ。
ミ)ハハハハッ。
☆日本語からも離れた、ピエール瀧版、意味ないハナモゲラ語。
♪電気グルーヴ『ノイノイノイ』
☆よりより意味から解放
♪フリッパーズギター「ラブ・アンド・ドリームふたたび」

【紀元前に遡る】
☆告知:スージーさん5/31(火)南青山BAROOM ピチカート・ファイブドーナツ盤大音量でかけるイベント

スー)1回紀元前、それもはっぴいえんど以前に時計を巻き戻します。濃いのを2曲。まりこボンボンさんからメール《日本語詞ノベーションと言えば、阿久悠と松本隆だ》。ああそうだなと、60の音粋行ってみたいんです。まずはザ・モップス『朝まで待てない』。1回ニューバージョンかけたんですけど、オリジナルバージョンかけたいと思います。67年ですが、これが阿久悠さんの実質的な作詞家デビュー。実質的って言ったのは、その前にスパイダース書いてるんで。フフ。
ミ)出ました!ハハハハッ。
スー)ハハもう、スパイダースはいいだろうという事で。鈴木ヒロミツボーカル、ザ・モップス。GSの中ではロックっぽい。状況的にはGSの時代ですという、そこに対してビートルズの影響を受けて、日本でもバンドブームが起きました。その代表がスパイダースであり、沢田研二のいたタイガースなんですけど、日本語で歌う事に馴染んでなかったので、花よ星渚よ、というような少女趣味な歌詞が多いんですよ。それが当時の少女にはめっちゃ受けたんですけど、ビートルズやストーンズの世界からは遠かった。その時に、はっぴいえんど以前で、今で言うロックっぽい言葉遣いですかね。『朝まで待てない』にこういう歌詞があるんですよ。「Can’t wait!ドアを閉ざして Can’t wait!お前は俺を Can’t wait!冷たく拒むだろう」お前、俺とか、ちょっと今の日本のロックに近いマッチョな感じ…。
ミ)さっきのBOØWYの歌詞をもう1回、手に取りたくなるような歌詞でしたね。
スー)あー、BOØWYにも近いかもしれない。英語とのチャンポン、今の日本語ロックに通ずるマッチョな世界観。阿久悠さんはこの時まだ作詞家本業というより、放送作家の方がメインで企画性が高いんですけれども、期せずして、日本語ロックのプラットフォームみたいなモノができてる。とはいえ、今聞いたら若い方はダッサイなと思うと思うんですけど、原型みたいなのができてるのに注目して欲しいんですね。で、かつ、鈴木ヒロミツの歌い方って言うのが、ちょっとダミ声で、不良ぽくって、それもさっきのBOØWYに繋がって行くって言いましょうか。ま、そもそも日本のロックていうのがマーケットがあんまりなかったですし、GSの中では(モップスは)そんなにメインじゃなかったんですけど、かなり先進的な取り組みをやっていて、さすが阿久悠!と思うところです。歌詞に注目して聞いて欲しいと思います。1967年11月リリースされました。
♪ザ・モップス『朝まで待てない』
スー)GSのムーブメントは女の子にキャアキャア言われる、芸能界的な要素があったんで、歌詞の歌い方もロックっぽいけど分かりやすい、って言いましょうかね。ロックと歌謡曲の中間みたいなところでできたんです。これが69年くらいになりますと、新宿にフーテンとかヒッピーとかいう若者が集まって、文系崩れの、もうちょっと知的な思想深い歌詞を書きたい、というムーブメントが出て来ました。あの、ミラッキさん、松本隆好きですよね。
ミ)私、大好きですね。
スー)細野晴臣好きですよね。
ミ)好きですよ。
スー)じゃあ、その二人のデビュー作、聞いてみませんか。
ミ)お!
スー)松本隆作詞、松本零という名前ですけど、細野晴臣作曲、エイプリルフール。(※1969年1年だけ活動したバンド)ただねぇ、今から6分間の曲をかけますけど、是非ねぇ、ラジオを消さないで下さい。
ミ)フフフッ。
スー)今、いい気分で恋人と語り合ってる方もですね、一回これを聞いてみて、フフッ新たな恋愛の世界に行くかもしれない。ハハ。
ミ)珍しいですね。ハハハこんなに先に説得してるスージーさん。ハハ。
スー)えーとね。えーっと。ちょっとね、コワい感じ。
ミ)なるほど。
スー)難しいって言いましょうかね。松本隆さん本人がその曲の説明書いてるのがCDにありましたんで、ちょっと読みますね。タイトルからして『暗い日曜日』っていう曲。こんな感じで書いてますよ《だから~ベルベットアンダーグラウンドのサンデーモーニングの世界に近いかもしれない。カフェっていう言葉は珍しかったんじゃないかな。詞に出て来るのは。僕は中学の頃にフランス文学で育ったから、趣味が出てしまったんだね。当時の時代はアメリカ志向だったから、自分の中にあるフランス趣味を居心地悪く感じていたな》
ミ)ハハハ、そんな、そんなナレーション。ハハ。
スー)もうね、誰のモノマネだかわかりませんけど、ハハッ!えー、ラジオでかけるのがはばかられるのはなにかと言うと、暗くって、当時の髪の毛が長くて陰鬱な文学少年が、とりあえず1回作詞してみました、みたいな感じなんで。
ミ)はい。
スー)すっごく、ある種タッチが知的なんですけど、全然ポップじゃない。と。
ミ)大衆向けの歌詞ではない訳ですね。
スー)そうそうそう。でも、まごうことなき、松本隆のデビュー作でございますし、作曲家としての細野晴臣のデビュー作でもございまして、歌っているのは、この前お亡くなりになった小坂忠さんでございますんで、歴史的な音源だと思います。これ聞いたらね、なんつうんだろうな、大学卒の文系系のロックていうのが、こういう感じで始まって行ったんだなっていうことと、はっぴいえんどってポップじゃないっていうかね、なんか知的な感じでとらえられてるかもしれませんけど、これ聞いたらね、はっぴいえんど、めっちゃポップですよ。ハハハハッ。
ミ)なーるほど。エイプリルフールはロックだ。
スー)エイプリルフールはね、これ、ちょっとかぁなりねえ。ぜひ、消さずにハハッ、一緒に完走しましょ。ハハッ。
ミ)大丈夫ですよ!だってさっき『ノイノイノイ』聞いてたみんなですから。
スー)ダイジョブですよね。今日は月曜日ですが、エイプリルフール松本隆作詞家デビュー作『暗い日曜日』。
♪エイプリルフール『暗い日曜日』
スー)心なしかタイムラインが止まったような感じがしますけど。
ミ)ハハッ、そんなことないです。
スー)ベースはもちろん細野晴臣でございます。ドラムは松本隆でございます。エイプリルフール。
ミ)22歳の細野さんと20歳の松本さん。
スー)そうです。この10年後に松本隆は『セクシャルバイオレット№1』を書きます。
ミ)わからない。ハハ。
スー)わかんないですねハハハッ。ま、「やってみた」って感じで、まだまだ、こなれてないって感じがありますけれども、この方法論を洗練させて、はっぴいえんど『風待ろまん』ができる。ま一説にはそれ(『風待ろまん』)が起源でもいいと思うんですけれども、この方向性が2年後はっぴいえんど『風待ろまん』で花開く。こういうのかけて、DJが今のラジオに似つかわしくない曲かけてるな、っていう自責の念もあるんですよ。私、子どもの頃山下達郎「サウンドストリート」(※NHK-FM夜音楽番組山下達郎‘83-86木曜担当)聞いて、GS特集でジャックスというバンドをかけてたんですよ(※’60年代4人組ロック・バンド。楽曲はプログレロックを思わせると言われた。‘70年代後半から再評価)。それも『からっぽの世界』という放送的にかけにくい曲で、(※心の暗闇をさらけ出すような不気味にも思える歌詞。差別的な言葉が含まれ放送禁止になる)その時ウチのおかんが怒ったんですよ「なにこの気持ち悪い番組!消しなさい!」なんて言われて。でもね、それで僕、ジャックスっていうのを知って、フフこういう大人になってフフ。まあ、こういうのが苦手な方もいるかもしれませんが、もしかしたら今日エイプリルフールを聞いた事によって、次のすっごい評論家とかミュージシャンが出て来るかもしれない。
ミ)そうですね。まさにジャックス聞いた曽我部恵一がサニー・デイ・サービスで90年代に活躍して、それを聞いたのが80年生まれの私、バトンを繋いでいます。
スー)良かった良かった。だからもしかしたら私がエイプリルフール聞かせるのも意味が無くはないかもしれないですね。で、今日のある意味ピークになるんですけれど、こういう話で中々日本のロックのマーケットは確立しなかったと。はっぴいえんど『風待ろまん』が名盤って言いますけど、そんな売れた訳ではなかったんですよね。で、凄い事が起きます。ある意味日本ロック、日本語とロックの歴史で最も大きな事件が起きます。あさっての方角から日本語の歌詞をロックに乗せるバンドが出て来ました。皆さんご存じのBOØWYの先祖、キャロルです。何が画期的だったかと言うと、まずメロディをデッタラメな英語、もっと言えば英語っぽいなんか訳わかんない言葉で1回作詞しちゃうんですよ。作っちゃってその後、そのデタラメ言語を日本語に置き換える。もう頭の中は洋楽、洋楽大好きやったんで、とにかく英語なんですよ。でも英語だと売れないので、無理矢理日本語にする。大瀧詠一が日本語のメロディと英語のメロディがある、って言ってまして、英語で作ると英語っぽいメロディになるんですよ。だから日本語に置き換えてもちょっと発音がおかしくなる。『ルイジアンナ』という曲ですけど「かわいいあの子は」を♪きゃわいーいあンのくぉおは、って言うんですね。英語っぽいというか不思議な母音が生まれて来る。英語のメロディに無理矢理(日本語で)やるんで、リズム感重視で、日本語の意味があんまりない。そもそもルイジアンナって何?って話なんですけどね。桑田佳祐も初期そういう方法論で作ったって書いていました。で、なんとそのデタラメ英語の音源が残ってるんですよ。アルバムグッバイキャロルっていうのがありまして。
ミ)これは凄いですね。
スー)デモテープでございます。史上初かもしれません、あるかなぁ?50年前のデビュー曲『ルイジアンナ』の試作デモテープと本チャンをメドレーにしてます。聞いてみると、矢沢永吉作曲法が、手に取るようにわかる。
♪キャロル『ルイジアンナ』試作♪キャロル『ルイジアンナ』
スー)日本語のロックができましたよ。こういう感じで。
ミ)ホントですね。出来上がってる過程が聞ける。
スー)さっきのBOØWYのところでも言ったんですけど、エイプリルフールと比べると、こっちのが全然マーケットが大きくて。理屈なんかどうでもいいじゃないか、カッコ良ければ、というマーケットがそれまで無かったんですよ。キャロルが編み出して、それに桑田佳祐が大輪の花を咲かせた。「歪めた歌い方」と言ってますが、今の若者はこれが歪めたと聞こえない、これがフツーになったということですね。矢沢永吉だ、桑田佳祐だ、佐野元春だ、後にミスターチルドレンだとか何だとか、「歪める日本語」がフツーになって来たんで、ロックというのがJ-POPっていう大きな大輪の花が開くっていう。
ミ)今と違い、 ‘70年代半ばくらいまでは、ロック・バンドは当たり前の存在ではなかった。GSはあっても。
スー)なかった。で、洋楽が本物で、日本語のロックなんて偽物だって感じがあった。だから英語っぽくしたかったと。今のミュージシャンでこのデタラメ英語から作る人って、ま、いるかも、しれませんが、普通に日本語から作る人が多いと思うんですよ。
ミ)そうですね。うーん。
スー)こん時っていうのは、いかに日本語でロックをするのが難しかったか。そこに編み出した訳のわからない矢沢永吉の言語、それをイイ感じの英語チャンポン日本語に戻すジョニー大倉のセンス。ねええ。今日も1日キャロル三昧とか、やってくんないかなあ。
ミ)アハハハハ。
スー)でもねえ、1日もたないと思いますよハハハ。

【’80~‘90 J-POPの花開く】
スー)1988年昭和の土壇場に目を映してみたいと思います。1つは矢沢、桑田のような歌い方がフツーになった浸透した。もう1つは、リスナーが生まれた時からサザン聞いているような状況で無理矢理洋楽に近づける必要がなくなった、という所にJ-POPがあると思うんですね。‘88女性作詞家、詞ノベーションを取り上げたいと思います。ま、その前に松任谷由実や中島みゆきなど天才がいて、女性の言葉遣いが耕されてる部分はあるんです。1人はNOKKOです。レベッカのNOKKOという方は作詞家としてもっと評価されてもいいと何回も思ったり書いたりもしています。ちょっと色っぽく危険な香りがする’80年代後半の女の子の心情を切り取ったりする、色っぽいんですよ。セクシーで。可愛くて、キュートで。フフッ「女・なかにし礼」。『MOON』という歌詞ですけど、☆三たび森本レオ^^;「娘は十三になって盗みの味覚えて 黒いリストに名前を残した」これはユーミンの『セシルの週末』よりも危険度が高い。この歌詞は素晴らしいですねえ。『MOON』でございます。続けて、森高千里。この人の作詞家としての言葉遣いはまさに発明ですね。コミカルな中に時代の本質を突く、「平成の青島幸男」と、私呼んどります。
ミ)あー、凄い。
スー)『ザ・ストレス・ストレス中近東バージョン』びっくりしましたね。昭和の土壇場「ストレスが女をダメにする ストレスが地球をダメにする」その前にタイトル、あジャケットめっちゃ可愛いんですけど、“中近東バージョン”てなんやねん。もう、あさっての方向から来た感じがしましたねNOKKOの歌詞、森高千里の歌詞は革命でございました。昭和から平成に向けての、女流作詞家の詞ノベーション2曲つづけてどうぞ。
♪レベッカ『MOON』♪森高千里『ザ・ストレス・ストレス中近東バージョン』
スー)ムッフフフフフフッ。凄いな。
ミ)これ女性の職業作詞家とか女性シンガーソングライターとは違う作詞っていうのが。
スー)フフ違いますよ、三浦徳子(よしこ)とは違いますねえ。フッフフフ。そんなこんながあって、ミスチルがあって、椎名林檎があって、RIP SLYME があって、米津玄師があって、藤井風があって、今、adoに至ります。洋楽コンプレックスは無くなったので、英語っぽく言葉を歪めるのはなくなった、と言いました。確かに今の若いミュージシャンの曲は聞きとり安いですよね。ただねぇ、米津玄師とか聞いたら、すっごい歪んでるって言いましょうか、佐野元春チルドレンという感じが、私にはします。そして、adoの『踊』2021年桑田44年発売です。びっくりしましたね。もうこれぞ矢沢永吉、桑田佳祐。佐野元春の系譜だと思いました。  ミ)なるほど。
スー)ちょっと読んでみますね。☆本日4度目の森本レオ^^;「半端ならK.O.ふわふわしたいならどうぞ 開演準備しちゃおうか 泣いても笑っても愛してね ほらsay no低音ひびかせろ」ええーっ⁈へッへッへッへッ。
ミ)ハハハハもしかしたらこれ、若い世代にとっては、歌詞はこういうもんじゃない?って思ってるかもしれない。
スー)ハハハ。だとしたら、日本語のロックは、進化してますっ。ま、これ自作自演ではなく歌詞は作ってないんですけどね。歌い方もね“千の声を持つ女”と言う風に私書きました。ミル・マスカラスです、これね。
ミ)フフフフッ。
スー)もう、ホント凄い。さっきのリズムとか文学性とか全部飛び越えて2.5次元まで行ってる感じがしますね。モップスとかエイプリルフール、キャロルの流れを踏まえて聞いて欲しいと思います。
♪ado『踊』
☆椎名林檎、ハロプロつんく、アイドルアニメ電波ソング等、ボカロオリジナルソング等を聞いてクリエーター。それに日本語ロックの歴史も連なる。
スー)今日は詞ノベーションの中でも歌い方という所に特化して、平成の辺りまで行った所でございます。最後は令和の岡村ちゃんハハッ、ado。あと、ミル・マスカラスわかんないじゃないか、って。わかんないですよね。ハハッ。昔、“千の顔を持つ男”っていうプロレスラーがいたんですよ、大人気。  スー・ミ)ヒャハハハハッ。  スー)私のトークは意味から解放されてますから。桑田佳祐ですから、クレイジー×12ですから。以上でございます。で、こういう流れの中で、1番冒頭にかけましたブルーハーツ『1000のバイオリン』が、ちょうど中間くらいにある訳でございます。個人的にはナンバー1の歌詞なんですけど、もう1回聞きたいなあぁ。  ミ)うん
スー)聞きたい!けど、9の音粋で同じ曲2回かけるのは、私でもできないなあ。ふう。(☆←深呼吸⁈)という訳で、別バージョンかけていいですか。
ミ)なん、なんですって?これは…。
スー)『1000のバイオリン』じゃないんですよ。全く別の曲なんですよ。  ミ)はあ。
スー)『1001のバイオリン』って曲がありまして。  ミ)(☆囁き声で)なんか1つ増えた。
スー)最後にもう1回「誰かに金を貸してた気がする」っていう歌詞を聞いて味わって終わりたいと思います。日本語詞ノベーションの中間に立つ金字塔でございます。あれ?ちょっと待って、私ね、誰かに金を貸してた気がするな。ま、そんなことはどうでもいいのだッ!
♪『1001のバイオリン』ザ・ブルーハーツ
☆ちょっとコスい手を使ったと白状するスージーさん、藤田太郎さんにも見破られたと^^;
スー)ホントに、ヒマラヤほどの消しゴム一つ、楽しいコトしたいなあ、ねえミラッキさん。
ミ)いいですねえ。
スー)ミサイルほどのペン。書きましょう、面白いコト。  ミ)書きましょう。
スー)私もライターだ。書きますよ!面白いコトね。
☆ロックビートに日本語歌詞をどう乗せて行ったかを、音楽歴史探偵スージーさんが、若いリスナーへのバトン繋ぎも込めて語った胸アツの時間でした。’60-2021を眺めても、リズム・文学性・ナンセンスを満たした歌詞を、聞き取りやすく歌ったブルーハーツの秀逸さは際立つ。スージーさんが愛してやまない『1000のバイオリン』は金字塔。オープニング、ラストと聞いても心震えた。

☆来週(5/23)《イエイ‼総選挙》〆切5/20(金)中 Twitterは#bayfm月9
☆なぞかけ最優秀賞ブルートパーズさん

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