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JOL2023について

 みなさんこんにちは!Graci_nranことHi_mathです(?)今回、IOL代表になったわけなのですが、言語亭語倶楽さん(TwitterID @g0kulaku_LO)がJOL2023の解説記事を書いてみて欲しいとツイートされていたので、僕がどのような思考で解いているのかみたいなことを書いていこうかなと思っています。気になるところだけでもかる〜く読み流して貰えたら嬉しいです。


JOLって?

 まずはJOLについて軽く触れておこうと思います。
この記事を読んでる時点ではJOLについて知っているとは思いますが
 JOLとは日本言語学オリンピックのことで、代表選抜対象の中高生以下だけでなく、なんと、大学生以上でも参加することができます!
 言語を題材にした謎解きの問題が5題出題され、2時間でどれだけ規則を解明できるかで競います…と言葉で言っても、伝わらないと思いますから、まずは以下のお試し問題を解いてみることをお勧めします。

 解いてみれば分かりますが、この問題、暗記が一切必要ありません!問題文だけで全ての問題が解けるようになってます。
(とはいうものの、言語学の知識はあった方がいいですし、強い人はみんな結構詳しいです。)

 ここまでJOLについて解説してきましたが、いよいよ本題、JOL2023に入っていくとしましょう。

JOL2023について

問題リンク

解答リンク


 今年の問題は

  1. ハウサ語

  2. クヴェン語

  3. カマン語

  4. プユマ語

  5. モンゴ語

で構成されています。
 とりあえず言語名だけ書いてみましたが、こんなのみてもわかる人はほとんどいないです。(一部わかる変人もいるみたいですが)

 そもそも、JOLでは言語名が隠されているので、全く役に立ちません。APLOやIOLでは役に立つこともありますが、それはまた別の機会にでも。

 では、さっそく第一問から解いていってみましょう。

第1問 ハウサ語

 典型的な統語の問題ですね。
統語の問題では、最初に語順を明らかにすることが多いです。

語順

 まずはわかるところから整理していきましょう。

 ウ) を見てみると、Kandèという単語があります。この単語は「カンデ」に対応してそうですね。このことから、最初に来るのは主語だと考えられます。

 では、主語を書き出してみましょう。

主語

 並べてみると、saab- が”若い”を表してそうです。変化の規則ははまだわかりませんが、‘yaa が娘を、bàabaa がおじを表していそうです。

 ここで、オ) を見てみると、目的語である’yaa が最後に来ています。ということは、目的語は最後だと考えられます。

 残ったのは動詞ですね。主語と目的語を除いたものをみえてみましょう

動詞…?

 こうしてみると、二つ目の方が動詞に関連していそうですね。
このことから、ハウサ語の語順は以下のようになると考えられます。

主語-よくわかんないやつ-動詞-目的語

 では、それぞれについて変化を追っていきましょう。


形容詞

 まずは簡単な形容詞から見ていきます。また書き出してみましょう

形容詞

 よく眺めていると、形容詞の変化には主に二つに分けられることがわかります。語幹-on となるものと、語幹-uwa-C となるものです。これらの違いはなんでしょうか。

 少し考えてみると、あることが分かります。語幹-on は被修飾語が男性の時、語幹-uwa-C となるのは女性のときであるということです。また、問題文をみると、Cの部分は、直後の子音と同じものに変化しています。

Point!
 直前、直後の音に変化する言語は、数多く存在し、この変化のことを同化といいます役に立つことも結構あるので、少し意識しておくといいかもしれません。


名詞

 次に、名詞の変化をみていきましょう…といっても、名詞はあまり変化しません。ハウサ語では、所有格が名詞に組み込まれていると考えられるので、そこを見ていきましょう。

 まず、それぞれの名詞を書き出してみます

名詞

 最後のものは問題文から取ってきたのですが、多少の考察から「彼らのおば」であると予想できると思います。(慣れればできるようになります)

 そして、これらの情報から、これも男性か女性によって変わってくることが眺めていればわかると思います。

 では、わかることをまとめていきましょう。まず分かることとして、「彼らの」では-sù が、「君たちの」では-kù がついているということです。そして、その前には女性の時に直後の子音が、男性の時は-n がついています。

 ここであることに気づけると思います。-aa で終わっているものは、所有格がつくと-a となっているということです。この小さな変化に気づけるだけで、点数が変わるので、最後まで気を抜かないことが大切です。


動詞

 動詞形態はこの問題の二つの難関のうちの一つです。様々なものが絡んでおり、全ての規則を見つけるのはとても大変です。

 まずは動詞語幹を探してみましょう。大抵の場合、何をするにしても、語幹が見つからなければ始まりません。基本的には最優先で挑むことが多いです。

まずは動詞を書き出してみましょう!

動詞

 語幹は何になるでしょうか?2個目と5個目、3個目と4個目を比べると、以下のようになることがわかると思います。

動詞語幹

 ここまで分かればあと少しです。語尾を見てみると、過去形の時は -i が、現在進行形の時は -àC がついていることがわかります。このとき、Cは形容詞と同じで、直後の子音となります。

 これで動詞は出来ました!……本当にそうですか?
まだ終わってないものが一つあります。なんでしょうか?

…そうです。声調です。

 ということで、最後に声調を見ていきましょう。

 これもどうせ過去形と現在進行形で変化が異なるので、それぞれの時制別に見比べてみましょう。すると、次のようなことがわかると思います。

動詞の声調

 これでやっと動詞が終わりましたね!では、最後の謎のとこに挑んで行きましょう。

主語代名詞

 謎の部分と言っていた場所ですが、主語に関する何かでありそうですね。(これを主語代名詞と言ったりします。) ここは簡単なので、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょう!

 とりあえず、主語の性別と時制でまとめてみましょう。(実際に解く時は色々試してみましょう)

主語代名詞1

 こうしてみれば明らかですね!以下のようになることがわかると思います。

主語代名詞2

問題/解答

 さて、これで全ての規則が分かりました。あとはこれを使って問題を解くだけですが、これは宿題という形にしておきましょう。(決してめんどくさくなったわけではありません!) カンデとムーサの性別には気をつけてくださいね!

問題

 解き終わったら自分で採点してみましょう!自分がどれだけ出来ているかの指標になります。

解答



 やっと第一問が終わりましたね。疲れたのでこれくらいで…と言ったら怒られそうなので、続いて第二問に進みましょう。

第2問 クヴェン語

 形態の問題ですね!しっかり整理すれば分かりやすいので、しっかりと取り切りたい問題です。 

形態素で区切る

 では早速ですが、語根と接辞にわけてまとめてみましょう!解説の都合上、載せてしまいますが、自分でやることも大事ですよ〜。

疲れた…

 だいたい分かると思います。

 さて、ここでなんでこんな分け方をするのかについて少し補足を。形態の問題を見る時は、同じくくり(今回なら人称など)のなかで共通部を探します。今回なら-isimma,-tt,-mmaなどですね。このような語幹によらないものを括り出します。このような作業を繰り返すことで、上のような分け方ができます。

 しっかりとまとめると次のようになります。

まとめてみた

 語根’としているのは、語根が1音節かつ短母音のとき、1人称複数の時だけ子音が繰り返されている(?)からです。

音節

 では、1段目と2段目の違いはなんでしょうか?語根を抜き出してみましょう。

 V-ma型の方が短いですね。そうです、1音節の時はV-ma型に、2音節(以上)のときはV-mma型になります。

問題/解答

 ここまで来ればあとすこしですねっ!めんどくさいのでここから先の作業はまた読者に任せようと思います。答え合わせまでちゃんとするようにしましょう!

解答

 これで2問ですか…少し休憩をとってみてはどうですか?あと3問頑張っていきましょう!


第3問 カマン語

 語対応の問題です。実際に参加した人ならわかると思いますが、この問題が一番解きやすかったのではないでしょうか。なのでこの問題は解説せずに…解説しますね。

表にする

 このタイプの問題は、何が何個あるのか調べると分かりやすかったりします。では作ってみましょう!(わからない人はへぇーとおもって次に進んでください)

単語リスト

単語リストを作る

 ここで、蜂が4つ出てきています。また、18〜35で4つ出てきているのはlaawang だけなので、これが蜂だと分かります。

 次に、asi,ila,waa の3つについてみていきます。これらはそれぞれフン、卵、蜜のどれかを表しますが、これが当てはまるのはアーウーのフン、シラミの卵、ココヤシ汁の3つです。すると、ila がついているwateだけ複数単語あることがわかります。このことから、wate がココヤシを、ila が蜜(汁)を表していると分かります。さて、ここでアーウーのフンとシラミの卵の区別がつかなくなりますが、aauu はさすがにアーウーを表していそうです。これより、asi はフンを、waa は卵を、bini はシラミを表すということになります。

 ここでココヤシ(wate)をみると、luaa が枯れているということを表していることがわかり…というふうに芋づる式にわかっていくと思います。とりあえずまとめてみましょう。

語彙リスト

 

問題/解答

 ここまで来ればあと少しです。問題も簡単に解けると思います!問題と解答を載せておくので、自分でやってみましょう!

問題
解答

 半分が終わりましたねっ!あと2問頑張っていきましょう!

第4問 プユマ語

 なんだかめんどくさそうな統語の問題ですね…僕も解説を書きたくないです笑。しょうがないのでやっていきますか。

語順

 とりあえず固有名詞を見ていきましょう。ア) とイ) をみると、主語であるTuyusi とAta が最後に来ています。ということは、主語が最後ですね。

 また、エ) をみると、kan は前置詞っぽいのでおそらく2語目にUkaku が来ているので、受益者は二番目っぽいですね。

 さて、残りは目的語と動詞ですが、ア) とエ) を見比べると、barasa' という語が一致しています。このことより、共通している石を表していそうなので、目的語に、そして、動詞は最初になりそうです。

 以上のことをまとめると、
動詞-受益者-目的語-主語
となっていることが分かると思います。

焦点

 この問題の一番大事と言ってもいい部分である焦点を見ていきましょう。比較したいのでとりあえず表を作ってみましょう。

前置詞

 赤が焦点を、黄色が所有者が君であることを、緑が所有者が私であることを、そして紫が固有名詞を表しています。これを見れば何となく前置詞の規則が分かりそうですね。固有名詞と一般名詞の違いに注意しながらまとめてみましょう。整理がいっぱいで大変ですが、これが基本なので頑張りましょう!(自戒)

前置詞

 とりあえずできましたね…でも、この問題は次が難関です。と言うことで、動詞形態をやっていきましょうっ!楽しみですねっ(脳死)

動詞形態

 さて、語幹を探していきましょう。何によって変わっているかを見極めるのが大事です。今回は焦点が絡んでそうですね。5個だと少ないので、違うとこからも引っ張ってきた方が良さそうですね。と言うことでまとめてみましょう!

 これらも用いてまとめると以下のようになります。

動詞

 共通部分ごとに分けてみると分かりやすいですね。この作業をするのが一番難しんですが。(これは経験を積むほど上手くなっていくと思うので、いろいろと解いてみるのをお勧めします)

 さて、これをまとめてみると次のようになります

動詞形態

 さて、これで規則は以上です。毎度お馴染み(?)設問を課題としておきましょう。

問題/解答

問題

 僕に画像編集技術がない(めんどくさいだけ)なのがバレてしまいますね…いつか修正します。と言うことで解答も載せておきます。

解答


 これであと一問ですね。…この最後のが手強いです(書きたくないです)気合い入れてやっていきましょう!

第5問 モンゴ語

整理

 動詞形態の問題です。なんかよくわからないですね。とりあえず小分けにして見やすくしてみましょうか。

 全然わからないですね。モンゴ語の方もバラさないといけなそうです。オ) と キ) を比べると、bengan(a)という部分が一致しています。これが「追い払う」の語幹になってそうですね。これを用いてバラしてみましょう。声調はあとで考えればいいので、一旦無視していきましょう。

 さて、ここでは5項目あるので、5項目以上になっていると予想できます。要素数を予想しながらやると分かりやすくなることが多いです。

 この時、imis を「許す」の語幹とすることもできるのですが、他の動詞がどれも子音から始まっていることから察しましょう。問題を解こうとすると 51) でうまく行かなくなるのでわかると思います。実際には両方の可能性を考慮して進めます(解説の都合上これでいきます)

問題51

 さて、解説に戻りましょう。この表を見てわかることをまとめていきます。すると、仮にA-X-B-V(動詞語根)-Yとすると、X および Y が肯定か否定かで変わっていることが分かります。また、ア) 〜 エ) には B がないことが分かります。このことより、A が主語を、 B が目的語を指すとわかると思います。

 と言うことでまとめてみましょう!

形態

 と言うことで、形態は終わりましたね!最後は声調です。あと一息頑張りましょう!

声調

 とりあえずどこにあるかまとめてみましょう。「今日」がまだ使われていないので、キーポイントになっていそうですね。

 まず、主語を見ていきましょう。表を見ると、肯定のときに高く、否定の時に低くなっていることがわかると思います。

 つぎに X を見ていきます。まず、否定の時は全部高くなっていそうですね。肯定はというと…そうです。今日かどうかが関わっています。今日の時は低く、そうでない時は高くなっています。

 目的語は簡単ですね。全て低い音です。残りもどんどんやっていきましょう。

 動詞語幹はというと…よくわからないですね。これは問題が悪… よくよく観察すると、第一音節は動詞ごとに固定、第二音節は変化していそうです。また、第2音節の高低と、Y の高低が一致していることが分かります。そうと分かれば簡単です(?)。さっきと逆で、肯定の時は全部低くなっており、否定の時は、今日の時に低く、そうでないときに高くなっています。

 さて、一応まとめて見ましょうか。こんな感じになります。

声調

 ということで、解説は終わり(?)です。

問題

 残ってる問題は課題にしておきましょう。解答も載せておきますね。

解答


総括

 さて、ここの問題の解説は終わりました。まだ書きたいことはあるのですが、期日が明日…続きはまたの機会にでも書き足しておくとしましょう。

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  追記用箇所( )
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 ということでみなさんお疲れ様でした!
みなさんの来年の参加お待ちしています!(僕は協会の回し者ではありません)

以上、Graci_nran でした〜


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