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〜heldioガイド〜【P】プシュ!かんぱ〜い

heldioとは?
・慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生が「英語史をお茶の間に」をモットーにVoicyで毎朝6時に配信されているラジオ

・このガイドは、heldioを楽しむための道案内となることを願い、お茶の間の住人が作成しているものです。
・アルファベットのAから順にheldioにまつわるキーパーソンやキーワードを紹介します。
\今日からあなたもheldioリスナーに/


プシュ!かんぱ〜い

だなんていきなり言い出して、Graceさんはおかしくなってしまったのだろうか…(本人の認識としては)決してそのようなことはなく、下書きを誤って公開してしまったわけでもないので、どうか最後までお付き合いいただきたい。

heldioは4年目に突入

2021年6月2日に開設されたheldioは、先日めでたく3周年記念を迎えたばかり。これまで本当に1日も休まず毎朝6時に更新されてきた偉人チャンネルであるが、初期の頃と現在では大きく変わった点があることにお気付きだろうか。
ゲスト出演の対談回が増えた、コメント数が多くなりリスナー同士のやり取りが活発化しているなどいくつか挙げられるのだが、最大の変化といえば、配信時の堀田先生のテンションが上がった!ことである。
実際コメント欄にて、過去回を聴いてみたら、先生の声のトーンが今と全然異なりビックリしたという声が寄せられている。
最近heldioリスナーになったという方は、第1回と3周年記念の1098回を聴き比べていただきたい。当初は淡々とした説明口調であったのが、明るく語りかけるスタイルに変わったことがよくわかるだろう。
放送時の第一声、「おはようございます!」に毎朝元気をもらっているというファンも多いのだ。
#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?
#1098. 本日は heldio 3周年記念日,helwa 1周年記念日です

飲みながらのトーク回

この変化の延長なのかはわからないが、いつの頃からかお酒を交わしながらのトーク回が現れた(heldio史に刻まれる出来事のため、初回がいつかご存じの方はぜひお知らせください)。その開始合図が「プシュ!かんぱ〜い」なのだ。堀田先生が収録に利用されているマイクが高性能なおかげで、ビールの缶を開ける快音とそれに続く歓声がお茶の間によく響き渡る。トークの話題は多岐にわたり、言語を中心にしつつ、それ以外のことも含めてゆるーく&熱く語る回が多い。
長々と説明するより実際に聴いていただいた方が雰囲気をつかめると思うが、おすすめは何と言っても3Msの登場回である。

3Msの活躍

3Msとはお名前がMから始まる五所万実先生北澤茉奈先生尾崎萌子先生のトリオのことである。名前だけでなく、全員がいのほた言語学チャンネルの相方である井上逸兵先生の門下生であること、声がよく通りお話し好き、元気いっぱいでパワフルなど共通点の多さから3Msという愛称で親しまれることとなった。

3Msの「かんぱ〜い」回

#1061. 聞き手ベースの言語学 --- 北澤茉奈さんとオーディエンス・デザインを導入します
#1062. 21世紀のオーディエンスデザイン with 3Ms & 小河舜さん
#1065. LENA で言語社会化の研究? --- 尾崎萌子さんとの対談 (3Ms)
タイトルからおわかりいただけると思うが、賑やかながら、それぞれのご専門の話をされているため、どれも貴重である。

もちろん、通常の?!対談回も存在する。
北澤先生
#1088. 企業の対外的なメッセージについて語る --- 北澤茉奈さんとの対談 (1)
#1092. 企業の対外的なメッセージについて語る --- 北澤茉奈さんとの対談 (2)

北澤先生は、不特定多数の人に向けて発信されるパブリックメッセージ、その中でも取り分けアメリカ企業のミッションステートメント等、企業の対外的なメッセージの変遷(主に1980年代以降)を研究されている。
対外的メッセージは自社についてアピールする良い機会であるため、他社との違い・独自性が強調されることが多いのだろうか。
実はそうでなく、社会貢献や環境への配慮など社会からの要請、中立性が求められるといった事情から個性を出しにくい。
メディアの移り変わりというのも、メッセージの伝え方言い方に影響を与えるという。従来の紙媒体ではメッセージが届く範囲が限られており、ゆえに個別性が高かった。ウェブ上での公開が主流となった昨今は、誰が見るかわからない、相手が見えにくくなったという特徴があるが、対話・口語的な話し言葉に近いメッセージが多くなっている。
メッセージの内容自体にも変化が見られ、商品の説明より「生活を豊かにする」といったサービスの結果に注目するものが増えた。さらに言葉での説明が減り、代わりに写真等を併用するマルチモーダル化が進んでいる。

私たちの言葉の使い方=何をどのようにどれだけ言うかは完全に発信者の「自由」ではなく、(想定した)受け手やもっと広い「周囲からの期待」により調整していることがわかり面白い。普段自らの言葉の選択にどのようなものが影響を与えているか、逆にいないのか、考えを巡らせてみてはいかがだろうか。

尾崎先生
#807. 言語社会化って何? --- 尾崎萌子さんとの対談
#811. 子供の言語社会化 --- 尾崎萌子さんとの対談
「通常回」かと思っていたが、よくよく聴き直したところ、プシュ!が入っていた。しかし尾崎先生の研究内容をバッチリ聴くことができる。

尾崎先生は言語社会化について研究されている。私たちは誕生後、成長して行く過程で母語を学び、言葉や行動などあらゆる面において、その社会の「成員らしさ」を獲得する。このように言葉を通じて社会化され社会化された言葉を使うようになるプロセス言語社会化と呼ぶ。日本を例に取ると、日本人らしさや日本語話者らしさをどのように身に付け、日本社会に馴染んで行くのかを明らかにするのだ。
尾崎先生の主な研究対象は0歳〜4歳の子どもへの絵本の読み聞かせ方に見られる日米差であり、世界中で親しまれている絵本『はらぺこあおむし』の読み聞かせデータを収集された。皆さんはどのように読んでもらったか、もしくは自身が読み聞かせをしたか何か覚えていることはあるだろうか。
結果は0歳児に対する読み聞かせで一番大きな差が見られた。日本では大人があおむしのフリをしながら、「お腹が空いたなー」「うーお腹が痛いよ」などと語りかけるケースが多い。一方アメリカでは0歳という年齢であっても、ページ内の絵について「何匹いるか」や「何色か」と問いかけることが一般的だという。人の気持ちを推し量る、人の立場に立つといった共感的な態度が重視される日本と、状況や周りの世界の理解に重きを置くアメリカという差が浮かび上がるが、このように言葉の実践をとおして社会ごとに適応した個人が作られていくのである。
しかし言語社会化は幼少期だけに限った現象ではなく、人生のあらゆる段階に関わる。たとえば学生を終えて会社で働き始めた新社会人が、初任者研修等における言葉のやり取りをとおしてどのようにメンバーの一員になっていくかということも研究対象となる。
社会への入口となる言葉は、改めて本当に面白いと思う。

五所先生
五所先生については、以下の別記事があるのでそちらをご覧いただきたい。
〜heldioガイド〜【G】五所万実先生

heldioはこれからも進化して行くだろうが、毎日聴き続けて今後の発展をぜひ一緒に見届けようではないか。いやそれだけでなく、コメント投稿等をとおして積極的に関わる仲間が増えたら嬉しい。英語史の輪を広げよう!

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