〜heldioガイド〜【O-2】小河舜先生
heldioとは?
・慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生が「英語史をお茶の間に」をモットーにVoicyで毎朝6時に配信されているラジオ
・このガイドは、heldioを楽しむための道案内となることを願い、お茶の間の住人が作成しているものです。
・アルファベットのAから順にheldioにまつわるキーパーソンやキーワードを紹介します。
\今日からあなたもheldioリスナーに/
小河舜先生(上智大学文学部英文学科)
小河先生は現在、〜heldioガイド〜【M】まさにゃん(森田真登先生)で紹介した武蔵野学院大学の森田先生ことまさにゃんと並び、heldioには「準レギュラー」と言って差し支えないであろう頻度でご出演されている。
英語史を広く一般に普及させる活動=hel活にご尽力されている小河先生のhel活履歴はhellog#5445. 小河舜さんとのhel活(まとめ)に記されているが、ズラリと列挙されたリストに目を見張る。
それだけでなく、堀田先生が同僚の井上逸兵先生とYouTube上で運営されている「いのほた言語学チャンネル」のゲスト対談回にもご出演経験がある(第144回から150回までの隔回)。実は小河先生は英語史研究者だけでなく、ピアニストの顔もお持ちなのであるが、動画ではその辺りのお話も聴けるので要チェックだ。
さらに記憶に新しいところでは、khelf発行の『英語史新聞』第8・9号の英語史ラウンジでは小河先生のインタビュー特集がある。
『英語史新聞』第8号 2024年3月発行
『英語史新聞』第9号 2024年5月発行最新号
khelf、『英語史新聞』についてはこちら↓
〜heldioガイド〜【E】英語史新聞、英語史コンテンツ
かくしてheldioリスナーにはすっかりお馴染みの存在となった小河先生であるが、heldio初登場回を覚えていらっしゃるだろうか。
〜今から遡ること約1年前の2023年6月〜
小河先生ほか3名の研究者+堀田先生の計5名でのざっくばらんなトーク形式であったのだが、この回の印象は今では考えられないほど薄い…
#747. 金曜夜のコトバ対談(生放送) --- 「khelf 声の祭典」第1弾 2023年6月17日
その理由は、のちに3Msと呼ばれることになるご出演者3Mのうち2Mが同席しており、全トーク量の8割以上を占めていたからであろうか。
真偽のほどは定かではないが、3Msはハッシュタグ登録されているので、Voicy内の検索欄でぜひチェックされたい(3Msについては別記事で触れる予定)。
ウルフスタン
初回は聞き手役に回っていた小河先生であるが、その後ほどなくして始まった「ウルフスタンシリーズ」は大旋風を巻き起こした。
えっ、ウルフスタンなんて聞いたことがない!という人もご安心を。恐らく十中八九のリスナーは、この放送がきっかけで初めて知ったことだろう。お茶の間にウルフスタンを広めることになった記念すべきシリーズであるが、果たしてウルフスタンとは何者か?小河先生はウルフスタンの何を研究されているのだろうか?
ざっくりとまとめると、
・ブリテン島がヴァイキング(デーン人)による侵入を受けていた1000年前後(古英語の時代)に生きた高位聖職者であり、「レトリシャン」であったと言われている。
・ロンドン司教やヨーク大司教という要職を歴任
・デーン人側クヌートの側近としても働く
・説教等たくさんの著作が残っているが、キャリアの前半と後半でヴァイキングへの言及の仕方やその他の言葉遣いに変化が見られる(後期になると婉曲表現や説明的な表現が増える)
→言葉遣いに変化が見られるのは、社会的な立場が影響しているのか、年齢を重ねるという個人の内面の変化によるのか
・lawという単語はなんと古ノルド語(ヴァイキングが使っていた言語)からの借用語!
→ロンドンにいる頃から英語本来語と併用してlawを用いていたが、クヌートに仕えるようになるとlaw一辺倒に。lawが本来語に完全に取って代わったのは中英語の時代になってからであるが、ウルフスタンの著作はlawが浸透するきっかけとなった。
英語史の研究にはさまざまなタイプが存在する。
抽象的な大きな流れを捉えることもあるが、このように個人の言語使用、更には1単語を考察するというミクロな迫り方もあるのだ。
#759. Wulfstan て誰? --- 小河舜さんとの対談【第1弾】
#761. Wulfstan の生きたヴァイキング時代のイングランド --- 小河舜さんとの対談【第2弾】#763. Wulfstan がもたらした超重要単語 "law" --- 小河舜さんとの対談【第3弾】
#765. Wulfstan のキャリアとレトリックの変化 --- 小河舜さんとの対談【第4弾】
名前プロジェクト、イギリスの地名
小河先生は〜heldioガイド〜【N】名前プロジェクトでご紹介した名前プロジェクトのメンバーでもあった。ありがたいことにシンポジウムでの発表内容は、ダイジェスト版としてheldio上で公開されている。上述のウルフスタンシリーズと併せて聴くと理解が深まるだろう。
テーマは、テキストジャンルや執筆者によりヴァイキングがどのように呼ばれていたかという呼称の違いについてである。
呼称には呼ぶ人と呼ばれる人の2者間の関係だけでなく、場の要請、その呼称を聞く(見る)ことになる第3者の存在など複数の要因が反映されるため、実に社会的な問題であり、情報が豊富に詰まっている。
#1075. 「後期古英語期におけるヴァイキングの名称 --- 社会に呼応する名前とその役割」 --- 小河舜さんのシンポ発表ダイジェスト
名前というと、人名の他に地名を思い浮かべる人もいるだろう。地名にはその土地のさまざま歴史が「記録」されているため大変面白いのだが、小河先生はイギリスの地名もご研究されている。
#1090. 地名に残る格変化の化石 --- 小河舜さんとまだまだ名前プロジェクト
ゼロから学ぶはじめての古英語
最後になるが、現在heldioで最も人気のシリーズといえば、小河先生・まさにゃん(森田先生)・堀田先生の3名でお届けする、「はじめての古英語」である。古英語に親しみを持ってもらおう!という目的のもと、毎回古英語で書かれたテキストを超精読する=3名の専門家による時代背景や語学・文学的な解説が聞けるという他では味わえない企画である。シリーズは早くも第8弾を終え、今後も定期的に放送が予定されているとのことなので、楽しみに待ちたい。
シリーズ最新回
#1107. 「はじめての古英語」生放送(第8弾) with 小河舜さん&まさにゃん --- Bede を読む (5)
たくさんの引出しを持たれている小河先生
今後も小河先生のご出演回はもちろん、heldioを皆さんの毎日の相棒にどうぞ!