7月7日生まれの友達

小中学生の頃、僕には7月7日生まれの友達がいた。
彼の誕生日をどんなルートで知ったのかは覚えていない。
ただいつの間にか知っていた印象だ。

彼はとにかくよく喋る人間だった。
彼との思い出を振り返っても沈黙してた試しがない。
また彼はアニメやゲーム等のサブカル分野の知識に非常に長けていた。
同学年でウルトラマンやおじゃ魔女どれみの話を気兼ねなく出来たのは彼だけだ。
※僕は従兄弟に「おじゃ魔女どれみの最終回がとても良かった」と話した時に「そんなの見てるの?」と一瞥されてから人前でそんな話をしなくなった。
彼のそっち方面への知識は幅広く、尊敬の念すら覚える程だった。

小学5年生の時、友達みんなで彼の家に泊まりに行くというイベントがあった。
友達の家に泊まると言うのが初めてで、普段は21時過ぎには就寝する僕も日付が変わる頃までみんなでデュエル・マスターズ等をして遊んだ。

しかしながら、小学生の頃はクラスが違っていたこともあってあまり話したりする機会も無かった。
中学生になり、クラスが同じになるとより交遊を深めていく様になった。
中一の終わり位の時期に、僕は一時期彼の子分だったので、その頃は友達兼子分という関係だった。
前述の通り、彼はよく喋る人間であまり他の人とはしない話題でも拾ってくれる人物だった。
僕は彼を面白い人間だと思っていた。
それまで面白いというのはコントや漫才等のネタをすることで生まれる、所謂創作物だと思っていた。
話をどう広げるか、どう展開するかで、こんなに面白い人間になれるのか!面白い人間に憧れがあった僕は感銘を受けた。
今にして思えば僕のバイブルの一つだったと思う。

しかしながら中学を卒業してからは別の高校へ進学し、中三の頃はクラスが違ったこともあって、中学を卒業してからは会うことも無くなった。

ところが程なくして彼は高校を中退したと聞いた。
詳しいことは分からないが、高校の環境に合わず中退しそのまま引きこもりになってしまったそうだ。
僕は何だか悔しかった。
自分にとっては普通に友達だっただけでなく、別に一目置いていた人物だ。
そんな人が環境から追いやられて、引きこもりになってしまったことが堪らなく悔しかった。
僕は母親にお願いし彼の母親宛に僕のメールアドレスを
送付して貰える様に頼んだ。
母親はお母さんネットワークを使って彼の母親に僕の連絡先を渡してくれた。

それから暫くした高二の秋か冬頃、彼からメールが来た。
今現在も引きこもりではあるが、何と僕とメールだったらやってもいいも思ってくれたみたいなのだ。
子分になる位忠誠を尽くしておいて良かった。
暫くはメールでやり取りをしていた。
しかし丁度高二の終わり位の頃だ。
彼は通信制の高校へ復学することになった。
それと同時に久しぶりに会わないかということになった。
僕は本当に嬉しかった。
それと同時に一度全てから心を閉ざしてしまっていた彼との会うことに少しの緊張も覚えていた。

約2年ぶりに会った彼は当時と雰囲気が変わっていた。
あまり久しぶり感を出さずにスッと話し始めた様な気がする。
会って話すと彼は当時のままだった。
相変わらず広い知識と止まらないトーク力で、あの頃、同級生にも関わらずリスペクトを覚えたあの頃の彼だった。
僕は本当に嬉しかった。
彼は高校に行こうが行くまいが、外に出ようが出まいが僕の知っている彼のままだった。

それからは相変わらずメールでのやり取りをしながら時折会ってカラオケに行ったりご飯に行ったりした。
僕が地元を離れた後も、帰省の際は会って遊んでいた。
彼は通信制の高校を卒業した後に地元で就職した。
しかし、それから一年程経った頃、彼は退職し再び引きこもりになってしまった。
そのタイミングで僕も彼と連絡が取れなくなってしまった。

それから約7年。
未だに彼とは連絡が取れずにいる。
風の噂では殆ど自室から出ずに家の中で過ごしているらしい。
色んな人が呆れているらしい。

たまに悔しくなる。
あんなに面白くて凄い人物がどうして社会や環境のせいで心に傷を追わないといけないのだろうか。
本当に悔しい。
しかしながら、それでももしまた彼に会うことがあれば、きっと彼はあの頃のままであるのだろうと思える。
あの頃のままでいたからこそ引きこもりを繰り返してしまったのだろう。
そんなつまらないものの為に、彼自身が殺されることがあってはいけないのだ。
そんな彼自身を守っていけるのならば、僕個人としては仕事をしなくてもいいし、家に籠ってたって構わない。
誰に迷惑を掛けたとしても自分を守っていけるならば、それはその人にとって大切なことの筈なのだ。

願わくばまたひょんなことで連絡が出来るようになったら嬉しい。
7月7日は彼の誕生日だ。
どこかで自分の受け入れられないものの戦いながら日々を過ごしている。
周りから何と言われていようあの面白い人間である彼を僕は知っている。
天にいるらしい顔も知らない男女が年に一度川を渡ってイチャイチャしてる日。
僕は必ず彼のことを思い出している。

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