見出し画像

クオリティ・マネジメントの原典

 ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」経営フレームワークです。ボルドリッジはまた、米国マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)の「審査基準」であり、それをもとに自己診断・審査を行い、組織の改善点を見つけ、改善します。

 これは、1980年代に、製品の品質や性能で先行していたドイツや日本の品質管理を研究し、品質の範囲を製品やサービスからオペレーションや経営全体に拡張し、かつ、組織成熟度の考え方を取り入れそれを評価尺度にして、米国企業の競争力強化を目的につくられたものです。

 品質管理を、製品やサービスの品質だけでなく、オフィスのすべての業務に拡張する考え方は、1978年に原著が発刊された、フィリップ・B・クロスビーの「クオリティ・マネジメント よい品質をタダで手に入れる法」に紹介されています。MB賞創設の10年ほど以前のことです。
 日本語版のカバーには、そのエッセンスが紹介されています。 

クオリティ・マネジメント 
よい品質をタダで手に入れる法

 「最初から正しい仕事をする」ことは、製品やサービスのコストを上げません。 「まちがったことをやる」ことが、コストを高くするのです。
 米国企業では、売上高の15~20%もの金額を、手直しや検査、保証、 予定外のアフターサービスなど、 品質関連に費やしています。
 ちょっとしたミス、 よくない品質は、 企業の信用を傷つけるばかりか、政府の規制にもつながります。
 これらの頭の痛くなるような問題のほとんどは、品質マネジメントをきちんとやれば、防ぐことができるのです。
 大きな工場からハンバーガースタンドに至るまで、 常識的な品質の原則を適用すれば、利益を上げ、 あなたの仕事は成功するのです。
 この本は、専門的知識は何もいりません。そればかりか、 従来の専門的な品質管理が、製造工場のものだというカラを打ち破って、オフィスやサービス業に従事している人びとにも役立つ品質マネジメントについて述べたものです。
 “品質”とは、仕事をしているすべての人の問題なのです。

フィリップ・B・クロスビー著「クオリティ・マネジメント よい品質をタダで手に入れる法」(小林宏冶監修、1980年、日本能率協会刊)

 原著 "QUALITY IS FREE - The Art of Making Quality Certain" By Philip B. Crosby (1978, McGrow-Hill) 

 この本は、品質管理は製造ラインでのみ行われ、管理事務所では行われないという従来の考え方を克服する方法を示しています。
 モノの品質については、品質を定義し、測定し、そして改善するための効果的として、統計的品質管理がすでに活用されていました。この本でも、それについて説明されています。
 しかし、この本では、品質は実際にはモノではなくヒトから始まることを強調し、そのための品質改善のツールを示します。
 品質に関与するのは、製造にかかわる一部の人々だけでなく、商品やサービスの生産とマーケティングに携わるすべての人々であるとしています。

実際、この本の中で、品質構築ツールの一部を紹介します。

・品質管理成熟度グリッド
 現在の品質システムを測定するための全体的な目標システム。改善すべきオペレーション領域を容易に特定します。
・品質改善プログラム
 事業を好転させることができる、実績のある14ステップの手順。
・特定のプログラム
 ホワイトカラーおよび非製造従業員向けの初めての欠陥防止プログラム。
・マネジメントスタイルの評価
 個人的な資質が製品の品質にどのように影響するかを初めて示すマネージャー向けの自己診断プロセス。

"QUALITY IS FREE - The Art of Making Quality Certain" By Philip B. Crosby (1978, McGrow-Hill) 

 成熟度による診断・評価、製造業以外では初めての欠陥防止プログラム、などは、「証明された」ものとしてボルドリッジに引き継がれています。

 もう少し、この本を詳しく見ていこうと思います。
 新たな発見がありましたら、また、この場で共有させていただきます。

★★

 ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?