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タイさんの取材ヨレヨレ日㉒ カーナビがなかった時代の夜討ちは大変

全国紙の記者は、入社直後にはまず、地方の支局に配属されます。支局では、夜討ち朝駆けの際には自分で車を運転するのが原則です。私が記者になったころにはまだ、カーナビが普及していませんでした。住宅地図と電柱の住所表示だけを目印に、慣れない道を運転するのはとても危険でした。
 
本社の記者になると、ハイヤーを使うケースが多くなります。プロのドライバーが運転してくれるので、移動中にヒヤッとするような危ない目にあうことはほとんどありません。ただ、カーナビがなかった時代は、たとえハイヤーに乗ったとしても、取材先の家を見つけるのに苦労することがありました。

ある銀行の頭取に夜討ちを仕掛けた時のことです。頭取の自宅は都内ではなく、隣接する県にありました。かなり郊外だったためにまだ区画整理が進んでないようで、住所は「●丁目〇番地◎号」という分かりやすいものではなく、4桁の数字の「~番地」という表記。とても探しにくい家でした。

しかも、周囲には街灯が少なく、夜になるとほぼ真っ暗。ドライバーが「多分、このあたりだと思いますよ」と示した地点でハイヤーを降り、小さな懐中電灯で一軒一軒表札を確認しながら、目指す家を探しました。

ようやく見つけたのは、ハイヤーを降りてから約40分後。門柱のインターフォンを鳴らしたところ、奥さまと思われる女性が「今夜は帰りません」との一言。どっと疲れたことを思い出します。

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