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慣らし運転の終わり



1月に免許を取り、3月に納車されたジクサー250だが、先月の終わりに走行距離1000kmを抜け、慣らし運転が終わった。


おっかなびっくり一般道を走っている時には、総走行距離が中々100kmに辿り着かず悩み。

ふと思い立って夜中にマックを食べに行くところから始まった道の駅巡りで初めての長距離ツーリングをした。

それから総走行距離は300kmを超え。そこで1ヶ月点検。

走りながら得た様々な課題をもとに、装備を揃えて快適な旅ができるように整えながら進めていく。

深夜の横須賀に高速道路で向かってからというもの、高速道路ツーリングの味を覚えてしまった。

都心、環状線、海ほたると、高速の旅を重ねて、ついに3ヶ月にして総走行距離1000kmに到達。

バイタルのある人なら1ヶ月以内に到達するとも言うが、齢30を迎えてから初めて二輪を味わう自分としては、上出来かと思う。


ところで。

愛機のジクサー250は、当初とにかくお淑やかな性格だと思っていた。

「慣らし運転が終わるまでは5000rpmを超えない運転をするように」と、バイク屋さんからも言われていたし、取扱説明書にも書いてある。
なので、シフトタイミングインジケーターを5000rpmに設定して、きっちり守って走っていた。

必然的に回転数をかなり抑えた走り方になる。
20km/hで2速、30km/hで3速、40km/hで4速。
そうすると、ものすごく静かな走りになるのだ。

エンジンの唸りとは無縁の、単気筒エンジンのトコトコとした音。カスタムなしの純正マフラーが奏でる穏やかな音色。ロードノイズの方が大きいとさえ錯覚するほどに静かだった。

制限速度通りに走るには余力に溢れているその感じ。低速トルクが強く発進時には力強く前に引っ張ってくれるが、走る時には必要以上の音を立てない。そんな印象。

しかし、100km/hの高速道路を走るようになった時、6速まで上げたとて5000rpm制限は守れない。

速度をあげようとスロットルを徐々に開き、回転数を上げると、今までの静けさからゆっくりと獣の咆哮のような唸りに変わり始める。

その音はある意味で言えば250ccの余裕のなさの現れとも言えるかもしれないが、一方で心躍らせる音でもあった。

慣らし運転の最中、滅多に聞くことのないその唸りに、知らず知らずのうちに心奪われつつあった。


そして総走行距離1000km、慣らしが終わった。

気がつけばエンジンの振動がわずかに変わっている。
運転技能の向上の方が大きいかもしれないが、ギアもスコンと入るようになった。

そして私が真っ先にやったことは、シフトタイミングインジケーターの設定変更だった。

ジクサー250の本来のシフト目安はギアごとに概ね6000-8000rpmと言われている。

そしてカタログ上、最大トルクが出るのが7300rpm、最高出力が出るのが9300rpm。
レブリミットは100000rpm。

こうしてみると、5000rpmがいかに低いかがよくわかる。

今回の設定では、概ねの最大トルクを目指してシフトタイミングを7500rpmに設定した。

給油を終え、設定を終えて走り出す。

ギアを上げ、スロットルを開ける。

いつもすぐに点滅するインジケータと共に上へ上へと上げるギアだが、設定を上げたのだからもちろんインジケータは点滅しない。

回転数の制限を探るようにスロットルを開け続ける。
トコトコというおとなしい音が、徐々に聞き覚えのある咆哮に変わる。

心地よいその音に心奪われながら、更にスロットルを開いたその時。

「これは不味い」
すぐにそう思った。
今までの感覚では制限速度など優に超えてしまう。

今まで3速は30-40km/hくらいでしか使っていなかったが、7500rpmでは70km\hくらい出るのだ。
音に心奪われていては速度が出過ぎる。

速度を面白い、意図的に低いギアを選択してみれば、大きな唸り声と強い力に引っ張り上げられるような感覚にさえなる。

250ccですら、これなのか。
優しい淑女のような顔をしていた愛機が、赤い口を開け尖った歯を剥き出しにした戦闘狂だったかのように思えてくる。

だが。
それが味方なら心強い。

バイクの面白さというものに沈められていくのを感じた。


ーーー新東名高速で120km/hで走る時、力不足を感じ始めるのはまた後の話。

※法で許される最高速度で力不足を感じられるのはそれはそれで幸せなことなのかもしれない。