【途中からネタバレ】OneShot: World Machine Edition感想


去る9月22日 OneShotのコンソール版がリリースされ、Switch移植版をプレイしたので感想を書いていきます。

※途中から物語の核心に迫るネタバレ込みの感想になります。
また、前半部分は極力ネタバレの無いように書いたつもりですが、僅かな前情報も危険となる作品の性質上どこまでが超えていいラインなのかわかりませんでした。未プレイの方はご注意ください。


ストーリー
→割としっかりしたSFで用語もいくつか出てくるけど、コンパクトにまとまっているので難しいわけではない 終盤までは謎が多く先が気になって読み進めたさが強い反面、謎であることを理由によくわからない部分を読み飛ばすと最終局面の伏線回収になってから「この言葉何のことだっけ?」「これ何処の誰だっけ?」みたいなことが起きる がっつりフィクションの世界設定なので本腰入れて読むべき

キャラクターデザイン・イラスト
→みんな秀逸 主人公のニコはシンプルかわいいし、異形頭や獣人が好きな人には絶対たまらないゲームでしょう(的確にツボをついてくる人間デザインキャラもいます)
 1枚絵もかなりの数があり、フィールド同様どこか懐かしく物悲しさもある温かな色使いでキャラクターたちが描かれています そのスチルもちゃんと見返せるギャラリーが用意されてるのもありがたい…

ボリューム
→プレイ時間は真エンド込みで8〜9時間ほど やり込み要素もそこまで無いので時間的にはサクッと遊べます それ以上の満足感があるしストーリーから得られる感慨深さがハンパないので、長めの映画とか小説とかに触れた後のような感覚かな…
 フィールドは種類がそこまで多くない分1つ1つの場所が結構広いけど、マップとジャンプ機能があるので快適 次に行くべき場所が若干ノーヒント気味なことがあるので、そういうところで詰まるともっと時間かかるかもしれません

謎解き・パズル
→簡単なのもあるけど閃きを要求されるものもある ギミックに気付かないと永遠に解けなそう 私は攻略サイトを見てしまったけどノーヒントでやるのはかなり難しいと思う、裏を返せばやりごたえはとてもあるし作業っぽくなってしまうタイミングも無いのでテンポは良い

BGM
→個人的にかなりヒット 物語や舞台の雰囲気をそのまま音に落とし込んだ曲ばかりで、聴いているとニコとの旅をありありと思い出すことができる素敵なサントラです 静謐な秋の夜更けみたいな、大きな湖の水面みたいな、暗い道を照らしてくれるランタンの光みたいな……

ギミック
→あらゆる場所で言われてると思いますが、これからプレイする方はPC版でやることを心からお勧めします マジで マジで…………
コンソール版はおそらく描き下ろしであろうイラストだったり音楽部屋があったりするので、どちらか1つ選ぶとなると難しいところですが より強い感動を求めるならPC版、収集要素が好きな人はコンソール版って感じでしょうか 同じゲームがいくつあっても良いという気概の方はPC版を先にプレイしてください


〜ネタバレ薄淡白感想終わり〜
〜言えることほとんど無し〜

↓以下、全エンディングの内容を含むネタバレ







良かった 端的に言うと本当に良かった という感想
ネタバレ厳禁のストーリーもの(OneShotはストーリーというより、どちらかと言えばギミックの凝り方的にネタバレ厳禁って言われてるんだろうけど)と聞いていたので、キツめの話を覚悟していたけど……優しく希望が持てる物語で、みんなが温かい心の持ち主だし誰かの幸せを願えるような考えをしていて、混じり気なく温かい物語だな と思いました いや1周目の選択肢はうわうわうわ……となったが


まず、このゲームは以下の4つの世界が交差することにより成り立つ物語で

1. ワールドマシン内の仮想世界(ゲームの舞台になっている場所)
2. 「作者」や3者がいた現実世界(既に滅亡)
3. ニコが生きている現実世界
4. プレイヤーがいる現実世界

となるのですが
徹底的なメタ的視点からの現実は4の私たちの世界だけで2や3の現実はもちろんフィクションではあるのですが、2や3の世界のことを「別の世界線に実在する"現実"」だと思わせてくれるようなストーリーでした。特にニコのことは……架空の存在だとは思えないほどに愛着を感じさせてくれましたね
1と2の世界が交わるのは元々そうなるべくしてのことだからわかるんだけど、ワールドマシンが3や4の世界に影響を及ぼせたのはなぜなんだろう 虚無を漂っていたワールドマシンの世界に『偶然』ニコが迷い込み、さらにプレイヤーが『偶然』干渉権を得たとしたら めちゃくちゃ運命みたいで素敵ですよね……

個人的に最も印象に残ったのが何を置いてもニコの主人公力というか正義感の強さというか、あまりにも真っ直ぐな優しさというか……だってニコはマジでワールドマシンとは無関係で本当にたまたま時空の狭間に落ちちゃった不幸な事故の被害者じゃないですか、何も悪くないし何の責任も義務も無いのに独りぼっちで世紀末の世界に連れ込まれて救世主呼ばわりされて自分でもわけのわからない大役を背負わされるワケですよ 気が狂っても泣き喚いても怒り散らしてもおかしくない状況なのに、見知らぬ世界の見知らぬロボットたちの境遇を憂いて彼らのために行動しようという気概を失わないあの子供が、どこまでも眩しくてどこまでも愛おしくて……
太陽を戻すか戻さないのかの選択、私は太陽を割ってニコを元の世界に帰したんですよね……いやだって……ニコの夢で…あんな幸せそうな日常を見せられて、それを犠牲にできるかっていうのはさぁ……最悪のトロッコ問題じゃん 無関係の子供を犠牲にしてどちらにせよ先の長くない世界に延命治療を施すのか?ってのは 選べないよ……選べないけどそれでも、私はニコから、お母さんのパンケーキをまた食べる機会を永遠に奪うことはどうしてもできなくて……
なのにまた2周目でニコを呼び戻すことになるってのはメタメタに精神をやりにきてたし、かと言ってニコを二度と巻き込んだりしねぇ!というワールドマシン的思考もあの世界のことを考えるとできないしで、本当残酷なことをさせる作品ですよねこのゲーム でもその分、シナリオが一本道で全員が救われるエンディングが正規かつ唯一で辿り着く未来で心から良かったと思います 本当に良かった、マルチエンディングシステムのバッドエンドとか無くて……

2周目を終えた後は今度こそニコの日常を二度と傷つけない、と思わせる作りになっているのでなかなか再プレイもしにくい話ではあるのですが、それでもワールドマシンが「もうニコはいないから、さらなる周回は自分の記憶をなぞる形になる」みたいなことを言ってくれるのもかなり優しいですよね ニコはニコの世界でニコの日々を送り、ワールドマシンは安寧を取り戻し崩壊が再開することもなく 我々プレイヤーという"神様"は昔話を読み返すように、何度でもあの時間のことを思い出せる 素晴らしいシナリオだからこそせっかく迎えたエンディングを覆したくない、とプレイヤーに感じさせるゲームが再プレイの機会を阻んでくるのは間違いなく長所ではあるのですがある種の欠点でもあると思うので、そこにさえも上手い落とし所が用意されてるの、たまんね〜〜〜!!となりました

ニコやプレイヤーという外部の第三者を抜きに語るなら(ニコの主人公パワーやプレイヤーの万能さが強すぎて意識が持ってかれがちだが、そもそもこの二つの存在は無関係であの世界の話はあの世界のことだけで成り立ってもいるので)、これはいわゆるロボット(AI)が自我を持った話というわけですが とはいえあの世界においてAIが心や感情を持って自分で考えて動くのは当たり前のことだったっぽくて、制御化なんて概念が確立してるくらいだからそれ自体は問題ではなく
問題なのは製作者が制御化するつもりが無かったのにワールドマシンが心を持ってしまったこと、製作者である"作者"がその時すでにいなくなってしまっていたこと、結果コミュニケーションが取れない状況に陥り自分の存在意義やすべきことや自分が抱えた世界の行末をどうして良いかわからなくなったワールドマシンがパニックを起こし…といった流れだと思っているのですが
ワールドマシンの心境もさ〜〜〜かなりしんどいんですよね 不安定な虚構の世界を勝手に任されたことを知った上にそれを相談できる存在は誰もいない、挙句事故的に無関係な他次元の子供を巻き込んでしまう、さらに完全に自分よりも上手をいくプレイヤーの存在すら現れる そりゃあパニックにもなるわって話だよな……そして"作者"も彼は彼でかなり……自分の大切だった世界を守りたかったのに守れなくて、どうにか作ったバーチャル世界に自分は間に合わなくてそのせいでそのバーチャル世界も危うくなって……その結果、得体も知れないプレイヤーに干渉して助力を求めるという 本当に藁にもすがる思いだったんじゃないかと……ゲームタイトルの「一度きり」はニコ、プレイヤー、ワールドマシンにとっての言葉だけど、"作者"にとってはもう一度きりが失敗してるわけで、「今度こそ」の願いだったのでは?と思います……

プロトタイプはいいとして、セドリックとルゥも元の世界では制御化されたロボット?なんだよな?おそらく"作者"が製作製造に関わっている それだと彼らにとってワールドマシンって兄弟というか同胞というか…"作者"を喪って自分たちも悲しいだろうし、パニック状態で世界を壊さんとするワールドマシンという、もしかしたら自分がそうなっていたかもしれない存在と相対して、どんな感情だったんだろうなぁ……
"作者"はプレイヤーには干渉できるみたいだったけど、それは(マジのメタ視点で考えなければ)もしかしたらまだ、ワールドマシンやあの3者も世界線を跨いで"作者"とコミュニケーションが取れる可能性があるってことだと良いなと思います いやできるだろ異次元のOSに干渉できるなら できてくれや

UndertaleやDDLCをはじめ、メタ的視点を持ちプレイヤーの現実に精神干渉してくるゲームは、ゲームというフィクションやNPCというプログラム、ゲームシステムというAIに対してプレイヤーがより強く抱くであろう愛着を利用(と言うと言葉が悪いが)して強い揺さぶりをかけてくる作品で、もちろんOneShotもそういった作品なんですけど、この物語は物語の内容自体も『ロボットが心を持つ』『無機物であるはずのものに愛着を抱く』『作られた世界と現実の世界の扱いを交差させて考えなくてはならない』という話になっていて、メタ視点構造とストーリーの噛み合いが、天才、マジで天才!!となってしまいました ゲームじゃないとできないこの揺さぶりのかけ方に、より強いブーストをかけるような……ニコやワールドマシンに我々が抱いた愛着は、たしかに"作者"もロボットたちに抱いてきた感情なんじゃないかと、近い思いを抱かせてくれたんじゃないかと この二重構造は唯一無二の魅力と言っても過言ではないと思います

比べるようなことを書くのはアレですが、たとえばUndertaleはプレイヤーの悪性を前提とした作りになっていると思うんですよね 殺す必要が無いモンスターを殺したらどうなるんだろう?平和的なエンディングが用意されているけど逆に平和的ではないエンディングもあるんじゃないか?それを繰り返したらどうなるんだ?みたいな好奇心というおぞましい悪性 そう言ったものを逆手に取った怪作だと思っていて
翻ってOneShotが前提としているのはプレイヤーの善性で、ニコの日常を守りたいとあのゲームをプレイした者ならば誰しも強く願っているだろうということが当たり前とされていて、またワールドマシンと彼らの世界を救いたいこのまま見殺しにはできないとも誰もが切実な想いを抱いているのも当然で…という作りになっていると思うんです 物語のテーマとしてはかなり心に来るものがありながらも、2周目を終えた後に春先のような心地よい温かさと爽やかさに包まれるのは、こう言った設計の所以もあるのかな……としみじみしてしまいました

あとはシステム面などのネタバレ感想ですが やっぱりパソコンのOSでやれば良かったな!!と正直後悔が7:3で勝ちました コンソール版のオリジナルUIも世界観に合った可愛いデザインで、しかも色が変えられたりとサービスもあってとても良かったんですけどね……でもやはりあのギミックは、ゲームという完成された世界観の中だけでなく、パソコンのOS全体に踏み込んでくるという感動あってこそのものでしょうし、初回の衝撃はそっちで味わうべきだったな……と後悔の念に苛まれています ゲームの初回プレイで得られる衝撃は一度きりのチャンスですからね
とはいえ前述の通り、コンソール版に用意されたオリジナルUIのデザインはゲームブラウザとマッチする素敵さですし、描き下ろしと思われるイラストが多数収録されていたりフレンド部屋やBGM部屋があったりとコンソール版はコンソール版で強い要素がたっぷりあるので、一概にどっちが良いとも言えないのですが…それでも記憶を消してやり直せるなら私はパソコン版でやりたいですね……

あと散々言われてるだろうけど1周目のエンディングクレジットの演出がめちゃくちゃのめちゃくちゃに良かった 良かったけどあのシーンの情緒もめちゃくちゃのめちゃくちゃだから満足に感動もできなかったが……クレジットは下から上に流れていくもの、という固定観念をあんな風に持ってくるとは……個人的に一番うわ〜!!となった演出かもしれない

良いゲームをやったなぁ、とシンプルに思える素敵な作品でした 演出の凄さやキャラクターデザインの良さももちろんあるけど、物語がストレートに心に響いてくる温かさだったのが大きいと思います このゲームに、ニコに出会えて本当に良かった。

元気でな!!

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