マグネット

何も無いと寂しいじゃん
そう言って君が冷蔵庫に貼ったペンギンのマグネット
転校生のような顔をして目を逸らしている姿は
あの日の君みたいだな

楽しいことも嫌なこともなかった
誰かと関わること自体が面倒だった
何となく顔を見た時 同じ雰囲気を感じた

ブラケットライト可愛いじゃん
そう言った君が音楽室で鳴らしていたカスタネット
小学生のような顔をして笑っていた姿は今でもすぐに思い出せてしまうな

悲しいことも苦しいこともなかった
君と一緒に居れる時間が特別だった
それとなく顔を見た時 同じ気持ちに思えた

ずっと一緒に居ようなんてありきたりな言葉は言わなかった
そんなことは言わなくてもずっと一緒に居れたから
一番大切にしなくちゃいけない存在だったのに
何でも許してくれる君に負担をかけすぎてしまっていた
引き付けあっていた二人の磁力はいつしか反発に変わった
二度と戻れないのはわかっているけど
本当は戻りたいんだ

何も無いと寂しいじゃん
そう言って君が冷蔵庫に貼ったペンギンのマグネットをはずして
大事そうにバックに仕舞って笑った

あの日の音楽室の時と同じ顔してるじゃん

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