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仕事がイヤで飛行機に飛び乗った人とジューシー

オフシーズン。いつもだとオフシーズンと言えどもそれなりに宿泊客はいるけれど、今年は訪れる人も少なく(競争の激化と考えている)数日間ノーゲストの日があった。

がっくりと肩を落とすところ、少し気分を変えて普段なかなか出来ない沖縄の観光地巡りをしてみた。この商売、意外にもメジャーな観光地にそうそう度々訪れることは少ない。観光地でどんなことが催されているか、また施設拡張などいろいろ変化について常に勉強しなければならないのに、出来ていないもの。

特に首里城は入場料もかかるし、周辺の駐車場は高いしでちょいと足が向かなかったところ。今回、有料区域に入るのは23年ぶりという観光事業者にあるまじき状況(笑)。琉球の歴史には興味あるのだが、自分はどちらかというと「護佐丸・阿麻和利の乱」近辺の第一尚氏時代が好きなので、勝連城址や中城城址に積極的に通っていたという言い訳もしておこう。

久しぶりに入る首里城は書院の辺りが復元拡張されており、各種展示も充実していた。数年後には御内原(うーちばる)という江戸城で言えば大奥のような男子禁制区域も復元されるらしい。完成が待ち遠しい。

首里城周辺のことは玉陵や金城町の石畳道も含めてまた後日詳しく書きたいと思っているが、今日は首里城の拡張されていた書院のところでの出来事について。

首里城書院の辺りでは喫茶コーナーがあり、琉球宮廷料理のお菓子とさんぴん茶を310円の手頃な値段で頂ける。ちんすこう、くんぺん、ちいるんこう、花ぼうるといった菓子だが、ちんすこうとくんぺんは馴染みがあるが、ちいるんこうや花ぼうるは滅多に口にすることはない。ほんわりといい香りのただようさんぴん茶(たぶんピンクの棒状の紙容器に入った花さんぴん茶だろう)とよく合う。

さんぴん茶は沖縄ではメジャーなジャスミン茶のことだが、中国語の「香片」シャンピェンXiāngpiànから名前の由来がきている。だが中華系の人に香片茶と言っても通じない。ジャスミン茶は茉莉花茶Mòlìhuā chá。うちの宿でウェルカムドリンクで出すさんびん茶は中華系のお客様には「请喝茉莉花茶」とご案内している。

この喫茶コーナーには私の他には香港かららしい子連れのファミリー6人と日本人の男性観光客一人がいた。ガイドの方の案内を聞き終わり、隣にいた日本人男性に「どちらからですか?」と話しかける。私自身は地元住みであることを伝えつつ「何日滞在されますか?」「どのあたりに行かれたいんですか?」などと会話が弾む。するとその男性が「仕事がイヤになって逃げるように飛行機飛び乗ってきたんですよ。だから宿も決めて無くて。どこかカプセルホテルにでも泊まろうかと思ってましたが、どこかいい宿知りませんか?」と私に訊ねた。

(笑) 「こういう者です」とごーやー荘の主であることを名刺を渡しながら伝えて、「もし滞在期間中に通りかかったら立ち寄ってみてください」と言ったところでこの男性が「あ、今日と明日泊まらせてください!」。図らずも首里城の中で営業してしまった。ウケる(笑)

では後ほど、とその場を分かれる。喫茶コーナーを出る時に受付の人に「くわっちーさびたん」(沖縄言葉で「ごちそうさまでした」)と言うと喜ぶので皆さんも言ってみて)

夜になり、その男性がチェックイン。「先程はどうも」などといいながら、近所の銭湯や食事処などを案内。銭湯、食事から帰ってきて、ごーやー荘のゆんたくタイム開始。

※「ゆんたく」とは沖縄言葉で「おしゃべり」の意味。沖縄の民宿やゲストハウスでは「ゆんたくタイム」や「ゆんたく場」と言う、宿主とお客、お客同士が語り合い情報交換をするスペースや時間があったりする。

「沖縄初めてなんです」「民宿とかも初めてで」「仕事サボってきてるので顔出しNGで(笑)」「美ら海水族館に行くならその周辺の○○ってところに行ったらいいですよ」。などと二人ゆんたくが弾む。そして私から初めての沖縄旅行にと三線ライブをサービス。

美ら海水族館周辺でオススメの沖縄そば。きしもと食堂八重岳店。 こう言うと「なんだガイドブックと同じ程度の案内かよ」と沖縄通の旅行客には言われるかもしれないが、私がきしもと食堂を推すのは「ジューシー」がとにかく美味い!ジューシーとは沖縄では「炊き込みご飯」のこと。この記事のトップ画像に貼ってある写真の炊き込みご飯である。

私が初めて沖縄の食堂に入って沖縄そばを食べようと注文した時、「ジューシーは付けるね?」と聞かれて、なんか食後の果物のデザートかな?と思って「はい」と返事したら炊き込みご飯が出てきたという沖縄の100大不思議に数えられる食べ物である。ジューシーとは沖縄言葉で「雑炊」のこと。厳密には炊き込みご飯のような米の粒がはっきりしたものは「ジューシーメー(ジューシー飯)」、雑炊やおじやのようなものは「ボロボロジューシー」と呼ぶ。

こんな案内もしたおかげか、彼はその日の目標のコースを最短で巡り、きしもと食堂のそばとジューシーも食べ、さらに東海岸の海中道路から西海岸のサンセットビーチで泳いで夕焼けもみてきたらしい。

その日の晩、二夜目のゆんたくをしながら、その仕事がイヤになって飛行機に飛び乗ってやって来た男性は「ご主人のその沖縄愛をもっとオープンにしたほうがいいですよ!」と力説され、それなりにTwitterやFacebookやInstagramなどSNSもやっているのは伝えたが、今、都市部の人たちの間ではnoteが主流になってきていると言われた。

そして今私はnoteでそのことを書いている。

note投稿記事の第一話は、仕事がイヤになって飛行機に飛び乗ってやって来た男性に感謝の意味を込めつつ、沖縄の観光にまつわる話を散りばめてみました。沖縄愛を少しでも伝えたくて。

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