離風霊船の舞台放映のこと

昔のことを思い出して、ふと気づく。
あのころ、舞台のテレビ放映なんてのは、あまりなかったと思う。
宝塚ファンだったので、宝塚の放映がないか常にチェックしていたけど、宝塚の放映はたまにあっても、その他の舞台(ストレートプレイ)なんてのは、ほとんど放映されてなかったんじゃなかったかな。(チェックしてなくて見逃してただけかもしれないが。)

それに舞台の映像を販売するってのも、まだまだ少なかった。
もちろんそのころはDVDなんてなくて、ビデオテープだったし、映像を販売することもあまりなかったと思う。
初めて第三舞台のビデオを買ったときも、舞台映像ではなく過去を振り返るインタビューがメインで、過去公演の一部だけを抜粋して紹介している感じのビデオだった。それでも繰り返し見ていた記憶がある。

ちなみに、そのころの宝塚ですら映像販売はしてなくて、「実況CD」だった。公演を拍手とかも込み込みで録音したものをCDにして売っているのだ。そんな実況CDを買って、繰り返し聴きながら歌ってたなぁ〜。

そう考えると、商業演劇でもなく、紀伊国屋ホールや近鉄劇場とかの大ホールでの有名公演の上演でもない。いわゆる小劇場であるスズナリで上演した舞台を放映するってのは、珍しいことだったんじゃないか。今の時代でもスズナリで上演している劇団の舞台をテレビで放映することって、ないもん。有名な人が出ているわけでもなかったと思うし。(高橋克実さんは出ていたけどそのころはまだ無名に等しかった。)
「ゴジラ」は岸田國士戯曲賞をとってるからなのか、とも思ったけど、いまでも岸田國士戯曲賞をとってる作品が放映されているかといえば全然そうでもないし。
それに、お客様が入場する様も撮影していたし、カメラワークもきちんと考えられていたから、ちゃんと撮影クルーが劇場に入って録画していたと思う。

考えてみたらすごいことだ。
あのテレビ放映は奇跡に近いことだったのかもしれない。

いまは、自主制作で簡単に舞台DVDが作れるようになった。自身で自由に販売することもできるし、販売してくれる専用のサイトもある。オンデマンドで自宅で舞台映像を見ることもできる。こういうのも時代の流れだとおもうし、舞台に対する垣根も低くなってきているとは思うけれど、こういうアプローチって、興味を元々持っている人が劇場でDVDを買ったり、映像を見たりすることがほとんどなんだと思う。
テレビってすごい媒体で、演劇に関わったことのない人が「たまたま見る」という新たなきっかけが存在する。
映像で見た世界を実際に劇場で観たい!という夢を描いたあのころの私を考えると、そう思ってくれるようなアプローチが、いまの舞台DVDでできているのか、と考えてしまうね。

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