三人姉妹

2015/03/14 13:00
シス・カンパニー「三人姉妹」
@大阪/シアターBRAVA!

シス・カンパニーが企画する「KERA meets CHEKHOV」というシリーズの2作目らしい。ケラリーノ・サンドロヴィッチがチェーホフをやるってわけだな。(ちなみに、1作目は「かもめ」だったらしい・・・見たかった。)

地点の影響で、チェーホフはいろいろ見ているけれど(いや、地点ばかりだけど)、地点って、テキストを重要視してるし、アンダースローという空間もあるからか、セットも衣装も独特なんだけど、シス・カンパニーの「三人姉妹」は、ホールも大きいし、衣装もセットも道具もみんながっつり作られてて、雰囲気がかなり本格的で、世界に入り込めた。サモワールをプレゼントするシーンも出てきたりして、サモワールが高価なもので重要なものだというのは、地点で教えてもらって知っていたから、なんだかちょっと感動した。

チェーホフ四大戯曲といえば、「かもめ」「桜の園」「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」だ。「かもめ」と「桜の園」は地点で何度も見ているけれど、「三人姉妹」は初めてだった。
「桜の園」は没落していく貴族の話だったけれど、この「三人姉妹」も労働者階級ではない軍人の家に生まれた人々だ。だけど、軍人だったお父さんが死んでしまったので、生きるために、一番上のお姉ちゃんは教師をしているし、一番下の妹も労働することに対する夢や理想を持っていたりして、「桜の園」よりも前向きなんだよね。と言って、夢や希望であふれているわけでは決してない。夢を描いていても現実は厳しいし、当時の女性が働いても、理想には程遠い理不尽さもある。結婚して家を守るのが当たり前みたいな時代だからなおさらだ。兄(あるいは弟)であるただ一人の男兄弟も、若いころの理想とはどんどんかけ離れた世俗にまみれた人になっていく。

それは、どの時代も同じなのかもしれない。若いころの理想は、どんどん社会人として生活していくうちに、無難な人生に"収まっていく"感じ。三姉妹の行く末は、バラ色でもないし、本当にやりたいことをやっていけるわけでもない。どんどん窮屈になっていく世界がわかっていても、それでも「生きなければ」という強い意志がある。最後の最後で三人姉妹が絶望にさいなまれながら決意する「生きなければ」という言葉の強さと、悲しさが何だかぐっと来た。

まあ、キャストがみんな魅力的で骨太な人たちばかりだったので、ちょっと客席が遠くて表情とかまでは感じれなかったけれど、見ごたえ十分でものすごくおもしろかった!また、このシリーズが来たら観に行こう。大阪には来てくれそうだし。

・・・そういえば、シス・カンパニーは北村想との日本文学シリーズもやっている。今年は「草枕」だそうだ。こっちは東京だけでしかやってくれないからなぁ。東京に見に行かないと。

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