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「デキる議員」になるために、議会・議員の基本の「キ」を学ぶ――新人議員勉強会を開催――ローカル・マニフェスト推進連盟

 ローカル・マニフェスト(LM)推進連盟は2023年5月28日、都内の早稲田大学で「デキる議員になるための議会と議員の基本の『キ』」をテーマに、新人議員勉強会を開催した。「一般質問はどうやればいいの?」「会派って何?――疑問や不安、期待や希望が入り混じる新人議員たちがベテラン議員らから、議会と議員の「基本の『キ』」を学んだ。

■つながり合い、学び合う場に

新人議員勉強会の冒頭、主催者を代表して挨拶するLM推進連盟共同代表の子籠敏人・東京都あきる野市議(中央)。
「激変する時代―地方から・議会から変えていく主体となれ」と題して基調講演を行う北川正恭・早稲田大学名誉教授(元三重県知事)。

 新人議員勉強会(早稲田大学マニフェスト研究所共催)は、リアル(現地)とオンラインの併催。地方議員を中心に100人以上が参加した。このうち半数強が2023年4月の統一地方選挙を中心に1年以内に初当選した議員だった。
 冒頭、主催者を代表して超党派の地方議員らの集まりであるLM推進連盟共同代表の子籠(こごもり)敏人・東京都あきる野市議が挨拶。子籠氏は「僕自身、ここの仲間から教わったことが多い。つながり合い、学び合ってほしい」と参加者に呼びかけた。
 勉強会では最初に、北川正恭・早稲田大学名誉教授(元三重県知事)が「激変する時代―地方から・議会から変えていく主体となれ」と題して基調講演を行った。
 北川氏は、機関委任事務を全廃した2000年の地方分権一括法により、地方は自己責任・自己決定で地方政府をつくっていく時代になったことを強調。「独任制の首長は必ず間違う」と指摘し、「議会こそが民意を反映し、政策提案していくべき」と訴えた。

■「議会は決めるところ」「早く信頼できる人を見つけること」

パネルディスカッション「議長経験者に聞く!新人議員のギモン『議会のお作法』」の様子。パネリストの田中健・愛知県知立市議(右)と川上文浩・岐阜県可児市議(左)。

 続いて、パネルディスカッション「議長経験者に聞く!新人議員のギモン『議会のお作法』」が行われた。パネリストは田中健(たけし)・愛知県知立市議と川上文浩・岐阜県可児市議。いずれも議長経験者で議会改革を牽引してきたことでも知られる議員だ。水谷たかこ・東京都小金井市議が聞き手となって、新人議員が抱くであろう疑問や不安をぶつけていくかたちでパネルディスカッションは進んだ。
 川上氏は冒頭、「議会は決めるところ。自分たちが決めたことを市民に説明する。首長や職員が説明するのではないことは覚えていてほしい」と議決機関としての議会の説明責任を強調。「新人議員は何がわからないかもわからない。誰に聞けばいい?」との問いかけに田中氏は「早く信頼できる人を見つけることが大事。そして失敗を恐れず、トライ&エラーで」とアドバイス。
 新人議員時代、先輩議員から「教えないから勝手に勉強しろ」と言われたという川上氏は新人議員同士で勉強し、議会の先例の見直しなどに取り組んだ。「自分の質を磨く努力が必要」と語った。
 会派について川上氏は「一般市では要らないのではないか」と指摘。「『議会は困っている人を助ける』ことから(議論が)始まる。少数意見をいかに大事にして大きなものにしていくか」とポイントを話した。
 田中氏はもともと最大会派に属していたが、7年前に割って別の小会派に。議会改革を進めることで所属議員が増え、現在は最大会派となり、同会長を務める。田中氏は会派を「緩やかな政策集団」と位置付けていると語った。

■事前調査・ヒアリングを徹底的に行ってから一般質問に臨むべき

 6月議会が新人議員の多くにとって一般質問デビューの場。川上氏は、一般質問について「何をやってもいい」が事前の調査・職員へのヒアリングを徹底的に行ってから臨むべきだと力説。田中氏は、一般質問には「政策のタネが隠れている。ものすごく意味がある」と話した。
 テーマは委員会のあり方にも。川上氏は決算審査の重要性を強調。決算を起点に政策サイクルを回していく意義、可児市議会では政策提案の重要性を高めるため委員会代表質問を制度化していることなどを紹介した。
 最後に田中氏は、「他流試合」の重要性を指摘。「自分のまちの中だけでは成長しない。(LM推進連盟の場などで)『こんなやり方があるのか』と知ること。20人の議員のうち3人が『そうだね』となると変わってきた。議会がよくなるとまちもよくなる」と呼びかけた。

■議員は、特別職の公務員になったという自覚を

「議会と議員の基本の『キ』―議会のミッションロードマップ」と題して特別講演を行う前大津市議会局長の清水克士氏。

 続いて、前大津市議会局長の清水克士氏が「議会と議員の基本の『キ』―議会のミッションロードマップ」と題して特別講演を行った。
 清水氏はまず、「議員は、法治国家の議事機関の構成員、特別職の公務員」であるのにもかかわらず、「公務員になったという意識が希薄。自覚をお願いしたい」と切り出した。首長は議会から監視されるが、議会を監視する制度、機関は想定されておらず、「議会が暴走するとなかなか制度的に止められない恐ろしさがある」とし、透明性の高い住民に開かれた機関である必要性を述べた。
 また、法理論と実態の乖離は、一般社会でもあるが、議会の世界は「顕著だ」と指摘。「先例」(自分たちがやってきたこと)や「申し合わせ」(自分たちだけで決めたこと)を重視し、たとえば地方自治法103条2項で「議長及び副議長の任期は、議員の任期による」(つまり4年)と定められているのに「申し合わせで議長の任期は申し合わせで1年」としている議会が多いことを挙げ、これは「世の中では“脱法行為”と言う」と話した。
 また、一般職の地方公務員は職階によって異なる職階制賃金が支給され、地方公務員法第39条で研修を受ける権利が保証されているのに対し、特別職の地方公務員(議員)は「ベテランも新人も基本的に同報酬」であり、「職責を果たす能力を有する者が任命される。研修を受けることを予定していない」と指摘。「議員になろうとするならば、議員に立候補する前に自治体と議会・議員に関する基本的な知識を備えていなければならない。」という大森彌氏(東京大学名誉教授)の言葉を紹介した(『自治体議員入門』)。

■「現状が正常ではないことを知っておいてほしい」

 さらに議会のシゴトを議事機関の権限から分類すると「立法機関」「議決機関」であり、「議会の権限の機能別分類」では次のようになると説明した。

【行政監視機能】=(法定)検査権、監査請求権、調査権、(法定外)一般質問
【政策立案機能】=(法定)条例制定、(法定外)決議、提言
【住民広聴機能】=(法定)公聴会、参考人招致、(法定外)議会報告会、議会モニター

 清水氏は「議会は法に書かれていることは軽くスルーして、法定外のやってもやらなくてもいいことを一生懸命に努力している。現状が正常ではないことを知っておいてほしい」と語った。さらに議選監査委員制度は、二元代表制の根本原理に反する制度などと強く批判。大津市議会では自治法改正で選択制となったことを機に、議選監査委員を廃止したことを説明した。

■「新人議員のミッションロードマップ」とは?

 大津市議会では2015年3月に議会基本条例を制定(同年4月1日施行)。同年4月の改選で、5月から新体制となった市議会では、①議会基本条例の「具現化」②議会活動に対する市民への「説明責任」③市議会の「見える化」を目的に、議員任期4年間の「ミッションロードマップ」(議会版実行計画)を策定した。
 政策立案・議会改革のテーマと工程が記されたもので、議会運営委員会において毎年度末に自己評価・検証、最終年度には外部有識者等による第三者評価・検証を実施。評価で抽出された課題を次期任期への申し送りとして取りまとめ、次期ミッションロードマップの前提としている。
 清水氏は、このような大津市議会の政策サイクル・評価サイクルを説明した後、「新人議員のミッションロードマップ」として「短期:会派における議会実務の研修」「中期:法的根拠に立ちかえっての調査研究」「長期:立法趣旨に見合う議会活動への改革」を提示し、講演を終えた。

■「議会での困り事」などをグループワークで話し合う

グループワークでは「議会での困り事」などを話し合った。
参加者が6~7人でテーブルを囲んでグループワーク。
グループワーク終了後、各テーブルごとに「困り事」「聞きたい事」などを発表した。

 講演等を受けて、参加者は6~7人ごとにテーブルを囲んでグループワーク。講演を聞いて感じたことや、議会での困り事・聞きたい事などを30分ほど話し合った。どのテーブルでも対話が白熱。それぞれの議会ごとに異なるルール(申し合わせ)などに驚く姿が見られた。
 グループワーク終了後は、各テーブルごとに代表者が話し合った内容を発表。「一般質問ではどうしたら政策を実現できるのか」「他会派との距離感が難しい」といったものから、「あるテーマについて一般質問で取り上げようとしたら先輩議員から『やめた方がいい』と言われた」という悩みの声もあった。
 閉会の挨拶で子籠敏人・共同代表は「活動のヒントを持ち帰ってもらいたい」と参加者に呼びかけるとともに、参加者の熱心な姿を見て「今後もこのような(新人議員勉強会の)場を設けたい」と話した。
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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