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議会改革のトップグルーブ市議会同士で意見交換、さらなる高みを目指す――長野県飯田市議会が福島県会津若松市議会を視察

 全国に先駆けて、(公財)日本生産性本部が作成した地方議会成熟度評価モデルの実装化に取り組んでいるのが福島県会津若松市議会と長野県飯田市議会だ。飯田市議会の議会運営委員会のメンバー等は2023年10月26日、会津若松市議会を視察。会津若松市議会側は議会改革の要点を熱く語った。議会改革のトップグループとして知られる両市議会。互いにさらなる高みを目指している。

■「条例で決めたからには、実現しなければならない」

視察の冒頭、挨拶する長野県飯田市議会の井坪隆・議会運営委員会委員長。
会津若松市議会の議会改革について説明する松崎新・議会運営委員会委員長(奥右)。その左は髙梨浩・建設委員会委員長。

 飯田市側は議会運営委員会(井坪隆委員長、8人)と熊谷泰人議長、竹村圭史副議長、事務局職員2人の計12人が視察に参加。当初、視察は15時開始予定だったが、渋滞等に巻き込まれ、会津若松市議会への到着は約40分遅れ。それでも予定を超える17時20分頃まで約1時間30分にわたって視察・意見交換が行われた。
 会津若松市議会側で説明を行ったのは松崎新・議会運営委員会委員長と髙梨浩・建設委員会委員長の2人。まず、松崎氏が会津若松市議会の議会改革の要点(キモ)を熱く語った。
 会津若松市議会では2008年6月に議会基本条例を制定した。松崎氏はまず、「会津若松市議会は、これまで連綿と続いている、活発な議論を重んじる伝統と個々を尊重しあう民主的な政治風土をしっかりと受け継ぎつつ、未来に向けた新たな価値の創造に向けて、不断の努力を重ねるとともに、市民の多様な意見を反映しうる合議体としての議会づくりを通じ、市民の負託にこたえていくことを決意するものである」という条例前文を紹介。「条例で決めたからには、これを実現しなければならない」と強調、そのために各種条例などを整備してきたことを説明した。
 会津若松市議会はかつて、飯田市議会を視察し、議会による事務事業評価を学んだが、会津若松市議会では「難しい」と判断。全体最適性を見るため総合計画の政策課題の評価を行っている。松崎氏は「議員は基礎的な知識を持っていないが、学び続け、知識を得ないと執行部との質疑も不十分なものになってしまう」と議員としての姿勢を述べた。

■通年議会のメリットとは

視察には飯田市議会側から議運メンバーと正副議長など12人が参加した。

 会津若松市議会では2022年8月から通年議会を導入。通年議会の特徴を生かし、政策サイクルのさらなる充実を図り、政策サイクルの再設計を行った。
 会津若松市議会の政策サイクルは、①市民との意見交換会、②広報広聴委員会、③政策討論会に加え、予算決算委員会を主なツールとして構成していた。
 通年議会導入に合わせて、これまで主に議会閉会中に行ってきた市民との意見交換会及び政策討論会の調査研究活動を、常任委員会である予算決算委員会の所管事務調査に位置付けた。
 
これにより、市民意見の聴取→政策研究→予算審査→決算審査までの政策サイクルを一つの委員会で、1年間を通じて一貫して行い、専門性を高めることができるようになったという。
 飯田市議会も通年議会の導入を検討しており、事前に一事不再議と専決処分の取り扱いについて質問。会津若松市議会では一事不再議について、議会基本条例第17条で「議会で議決された事件については、同一会議期間中(臨時会のときは同一会期中)は再び提出することができない」と規定。
 また、通年議会導入に合わせ、①その経費の財源が国庫支出金又は県支出金である衆議院議員、参議院議員、福島県議会議員又は福島県知事の選挙に係る補正予算に関すること②法律等の制定又は改廃に伴い市の条例の制定等が必要となり、当該法律等の施行に併せて条例制定等をしなければ市民生活又は市の事務に支障が生じる場合であって、かつ、緊急を要するため議会の議決に付すための時間的余裕がない場合において、当該法律等の制定又は改廃の規定に則した当該条例の制定等を行うこと(年度末の税条例などを想定)ー-の2ケースを市長の専決処分事項として整理し、指定した(先例集)。
 松崎氏はさらに通年議会によって、意見交換会出席のための活動も公務災害の対象になること、臨時会議をフレキシブルに開催できることもメリットとして挙げた。
「コロナ渦で十数回補正予算を組んだが、会議開催がスムーズ。(議員も)住民にすばやく説明できる」と松崎氏。 

■事前準備と委員間討議

 意見交換では飯田市議会側の議員が、議会運営のあり方などを次々に質問した。それに対して松崎氏や髙梨氏は、予算・決算審査の事前準備での論点整理や委員間討議の重要性などを指摘。「定例会の議案になってから(の審査)では遅い」「議員同士が話し合い、議会がまとまって提言したら執行部は聞かざるを得ない。そのため議会では専門的知見も得ながら調査研究して方向性を見出していく」などと回答した。
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視察の最後に挨拶する長野県飯田市議会の山崎昌伸・議会運営委員会副委員長。

 視察の最後に山崎昌伸・飯田市議会運営委員会副委員長が挨拶。「いい視察ができ、感激、感動した。会津若松市議会に追いつけるように頑張っていきたい」と話した。
 この十数年、両市議会は議会改革の先頭グループとして走ってきた。さらなる高みへの挑戦を期待したい。
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)

〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html

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