【勝手な詩】 影を追う鍵
人にはそれぞれ事情がある
顔の裏にもう一つの顔があり、
その顔にもまた口があり、
言わないことだけを言う。
事情は、雨の中に隠れたカサの骨、
一本一本がそれぞれの空を支えている。
誰も見ていない虹は音をなくし、
耳元で秘密の歌を囁く。
左手で描いた地図には、
道の代わりに影が揺れていて、
誰も知らない町がある。
そこでは時計の針が後ろ向きに回る、
事情という名の風を追いかけながら。
そして誰もが目を閉じる時、
胸の奥で鍵を持ったもう一人が、
ひっそりと扉を開けるのだ。
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