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第27試合「個性」

サイバーファイトグループの祭典サイバーフェスを6月6日に控えて、各団体が動いている日々だが、そんな中DDTの竹下幸之介が4月いっぱいDDTの興行を欠場する事になった。
当初、怪我や休養による欠場かと思ったがその数日後、彼はアメリカに居た。
何とDDTの先輩ケニー・オメガが在籍しているAEWにスポット参戦したのである。


現在、渡来に制約が多いご時世であるのに、欠場してまでアメリカに行ってしまうフットワークの軽さは凄いと思う。

竹下幸之介は6月のサイバーフェスで上野勇希と組み、NOAHの清宮海斗・稲村愛輝と対戦する事が決まっている。
21歳にしてK-DO無差別級タイトルを獲り、防衛記録を更新した若き天才はこの数年伸び悩んでいる。
丁度、NOAHでも同じ様に清宮が伸び悩んでいる為、この一戦はファンが待望した一戦であると同時に、2人の次世代エースの復活の場になるのではないかと言う期待もある。

実は、私は最近プロレス観賞を復帰した為、竹下が何故伸び悩んでいるかを知らない。
そんな私が言うのは変な話であろうが、竹下には伸び悩む理由はないと思う。
まず考えたのは、DDTと言う超個性派集団に入って自分の色が出せない理由かと思ったが、先のAEWでの試合・バックステージを見た時分かった事が有る。

竹下幸之介は何もしなくていい。そのままでいい。

試合内容はクラシックタイプながら、丸め込みを返しながらジャーマンスープレックスに持って行くパワーも兼ね備えている。
そして何より、このバックステージである。

彼はたった一回しか話していない。それも日本語である。
しかし、中澤マイケルとタッグを組む事が分かった時のあのパフォーマンスは声に出していないのにしっかりしている。

DDTという団体は日本でも異色な団体である。勿論レスラーも異色である。
試合中にPVを挟むわ、股間にタイツを挟むわ、創作物語を挟むわ。
正直、それがDDTであると分からなければプロレス団体として認識されないレベルであるが、しっかりプロレスをしている。
そんなDDTで普通にプロレスをしたら埋もれるのではないかと言う不安もある。
しかし、その不安は払しょくされている。それが秋山準の参戦である。

秋山は昨年からスポット参戦をしているが、やっている事はDDTのプロレスではない。秋山準が全日本・NOAHでやって来たプロレスである。
それでも違和感なくDDTに馴染んでいるのは周りが合わせられるからだ。
DDTがいかにやりたい放題の異色団体であっても、プロレスをする以上、基礎は備わっていないといけない。
歌が下手な人は上手く歌えないが、歌が上手い人は下手に歌える。
DDTのレスラーは上手いのである。

それに個性が強いからと言って無理に個性を出す必要はない。
個性が無い事も個性になるのである。
問題は周りとのギャップであって、無理して個性を出そうと頑張っても徒労に終わる場合がある。
今の竹下こそ「おまえはそれでいいや」なのである。
秋山の参戦は竹下の為と言ってたファンもいるが、私も竹下にDDTで普通のプロレスをする事を教えている感じがする。
最近のプロレスは試合後にマイクで締めて、SNSでファンに発信する。試合以外でもやることが多い。
だが、秋山準や武藤敬司がサイバーファイトグループに参戦したことを通じて「個性を出さない個性」もある事が分かった。
1990年~2000年代はマイク締めも無いし、SNSもない。それでも個性を出せた。
やるべき事は何が何でも個性を出すのではなく、今ある武器でいかに個性を出せるか考える事なのではないか。
そして竹下幸之介には「試合で魅せる」力が有る。
今、竹下がやる事は「DDTでいかに王道でいられるか」なのではないか。

そういう意味ではAEWでの試合は言葉は使えない・日本でのパフォーマンスが使えないと言う状況でいかに自分を出すかの実験にもなる。
ゴールデンウィーク中に帰国してDDTに戻ったその時、彼は変わらずいられるのだろうか。

(敬称略)

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