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第55試合「良成最速理論」

最近、気になる事がある。小川良成が輝いているのである。
元日にHAYATAとGHCJrタイトルを行い、その3日後にはJrタッグタイトル戦、8日にはかつての戦友である金丸義信・ザックセイバーJrと横浜で戦っている。
正直、55歳になる小川にはスピードは無い。パワーもない。技も今時の選手の様な派手さはない。
だが、しっかり存在感を出しているのだ。
その理由を考えてみたが、一つの理論が出て来た。
それは「公道最速理論」である。

漫画・頭文字Dの中で高橋涼介が考えた理論で、大学の卒論のテーマにもなった物だ。

医学部なのに

この最速理論のテーマが「ストレートでもカーブでもないポイントで差を付ける」事である。
漫画内でもストレートで速い走り屋は初心者、コーナーを極めて中級と言って居る様に、あからさまに分かる場所で差を付けても、すぐに差は縮まってしまう。
ストレートのスピードが速くても、エンジンや車体回りにお金を掛ければすぐ追いつける。
コーナーを極めてもこの情報社会、理論さえ分かってしまえば、練習を積んで誰でも習得できる。

では公道における「第三のポイント」とは何か?
それは漫画の主人公、藤原拓海と高橋啓介が出した走りで分かる。

藤原はドリフト技術を高めて「コーナーを減速せずに抜ける」事を考えた。でも、これでは前述の通り頭打ちになる。
そこで、道路の溝にタイヤを引っ掛ける事で、外に振られる力に耐える方法を編み出した。これが溝落としである。
そこから発展させ、溝を飛び越えて更に内側を走ったり、いろは坂の急カーブをショートカットしたりなど「その場の状況を最大限に使う」事を学んだ。

一方啓介は、アクセルワークをコントロールする技術を高めて「タイヤのグリップ低下やブレーキの効きを保つ」事を考えた。これも頭打ちになる。
しかし、アクセルの開け方を更に細分化した練習を行った為、「カーブを限界ギリギリのスピードで走り抜ける」感覚を知らずに身に付けた。

2人に共通している事は「技術を更に洗練させた事」である。
洗練させる事で見えなかった物を認識させ、知らない内に応用が出来るレベルまで持って来た。
技術を突き詰めると違う技術が生まれるのである。

小川も同様なのだろう。
技術を突き詰める事で他に応用できるレベルまで高めたのだ。
それだけではない。長年プロレス界に居る事で、その技術の数は現在の選手が持っている分よりはるかに多く、そこから派生した別の技術も相まって、より多角的に一つの動きを見る事が出来るのではないか。

ダイアモンドもただ削れば輝くのではない。
多くの面を寸分ない角度で削る事であらゆる方向から入る光の屈折は最高の輝きとなる。
機械なら寸分狂わず削る事は出来る。
でもその石の状況を見て、あえて削らない、若しくは大目に削る事は出来ない。同じ状態の石でしか最高の輝きは出せないのだ。

身体能力や派手な技で魅せる選手は多い。その方がファンも簡単に分かるからだ。
しかし、そのままで良いとしたら本当の輝きは見られない。
知らない内に贋作を掴まされているのかもしれない。
小川良成のプロレスを観て、技術の極みを見極める力を養おう。

(敬称略)

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