29歳のベランダ
夕方が春になった ベランダにでて思った 青い夕方だった
あの風を知っていた とても懐かしかった いつかは忘れた
懐かしさはいつから感じるのか 小さい頃は知らなかった
何かに出会うたび過去の似たものをたどっては探し当てたり懐かしんだりしている気がする 朝がきて昼になって夕方が沈んで夜になる 繰りかえしている
懐かしむのはそこに大切なものを置き忘れていてもうそれを拾いにはいけないことを知っているから あの時こうしておけばよかったなというか弱い後悔
拾わない方が良かったかもしれない手にしていたら何か違ったかもしれない そんな振りかえり方はもっとも意味がないと知っているからいまを懐かしむ
青い夕方と少し冷えた風 ぬるい空気 漂う気配 昔の自分
振りかえらない 拾いにいかない 過ぎさった 唯懐かしい
もう骨格も筋肉も思考も固まった 子ども 大人になった