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河の流れ

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶ泡沫は、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。」
鴨長明の、方丈記の冒頭である。

ゆく河の流れを悠久の時を表し、そこに浮かぶ泡沫を人の一生に譬えているのだ。惚れ惚れするような文章で、実に的確に無駄なく真理を伝えてくれているように思う。日本三大美文、と言われるのも頷ける。

人類が誕生したのは、およそ500万年前と聞く。地球の歴史、宇宙の歴史まで含めれば途方も無い長さになる。その悠久の時の流れの前には、いかに平均寿命が伸びたとはいえ、せいぜい100年前後の一生など、正しく泡のようなものだ。

しかし、その泡沫がまた、とんでもなく貴重で、かけがえのないもので有ることも私達は知っている。

いや、むしろ儚く消えゆく命だからこそ、かけがえのない大切なものだと言える。

自分は途方もない偉業を成し遂げたわけでも、歴史の教科書に出てきたような偉人のように、自分を律して生きているわけでもなんでもない。ごくごく平凡な一個人だけれど。この、儚く大切な人生を全力で生きていきたいと思う。


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