グラモスの話 - ホタル実装直前号

 6月19日、グラモス関連のテキストが倍増する。6月19日とは崩壊スターレイルver2.3アップデートの日であり、新キャラクター『ホタル』、新遺物『蝗害を一掃せし鉄騎』が実装される日である。従来『蒼穹戦線グラモス』の記述に頼っていたのが、急に増えすぎ。パイスーだって初耳なのに。

 グラモスの話はもしかすれば詳細にわかるのだと思う。少ないテキストを膨らませて、神秘的な世界に想像を働かせられるのは、今のうちだ。これはそういう記事。


グラモス真実

 テキスト確認にはhoyowikiで蒼穹戦線グラモスを開くのが手っ取り早いのだが、この記事を読み書きしながらいちいち参照するのも面倒だから、ここにコピペしちゃう。オーブ、縄の順番で読むのがいいだろう。

蒼穹帝国グラモスは数万光年もの広大な領土を持ち、野心的に遠くの銀河を見据えている。帝国の最盛期、グラモスの女皇ティタニアは巨大な艦隊を編成すると、文明の果実をすべての未開の辺境に届け、帝国の慈悲を感じさせ、統一することを誓った。

しかし、遠征は失敗に終わってしまった。天幕の彼方から虫の末裔が無限に沸いて出てきたのだ。グラモスの軍隊は反撃と敗北を繰り返し…いくつもの植民地が失われ、自慢の鋼鉄の艦隊も次々と陥落した。複眼と羽を持つ虫の包囲攻撃の中、グラモスの民の叫びは絶望に埋もれ、蒼穹は砕け散った。

ある日、機械の鎧を身に纏った騎士たちが空から舞い降り、天を覆っていた虫たちを殲滅した。その後、白銀の騎士たちは帝国の各星区を往来し、ボロボロの領土を越え、星系を滅ぼす災厄に抵抗した。彼らはまるでスウォームに抗うために生まれた戦士。鉄面の下に隠された彼らの素顔は誰も知らなかったが、彼らの降臨は神の恩恵の如く、蒼穹の希望を取り戻した。女皇の統率のもと、グラモスの鉄騎兵団は空を駆け巡り、ついには敵を食い止め、帝国に一息つく時間をもたらした。

しかし、代々の仇との絶えない戦いの中で、帝国はますます自身の敵のようになっていった——空高く飛ぶ鉄騎は増え、虫の潮が襲来した日のように蒼天を覆う。人々が女皇と騎士を見る視線は、スウォームに向ける恐怖の眼差しと同じのものになった。いつか帝国は望んでいた勝利を手にできるかもしれない。だがその時、グラモスはまだ人類が穏やかに暮らせる楽園のままだろうか?

戦火の消えないグラモスの辺境で、鉄騎兵団は最後の防御線を構築した。戦艦の上で、沈黙する騎士たちは使命を帯び、帝国全体の希望を載せて、群星を覆い尽くそうとする敵を迎え撃つ。

グラモスの鉄騎兵団

博識学会の歴史学者は、グラモスはスウォームによって滅びたと考えている。しかし、中には別の見解もあった。それは、グラモス共和国は強敵を完全に超越したから滅んだというものだ。

スウォームによる恐るべき進攻から戦局を逆転させるため、執政議会は一か八か、人類の本質に手を加えることを決めた——「戦いのために生まれた」兵器を創造することにしたのだ。

その成果が「ティタニア」だった。何の権力もない女皇がテレパシーによって指揮を執り、彼女と繋がる騎士を束縛する。彼女が織り成す夢の中で、戦士たちの存在意義とはティタニアと彼女の「帝国」を守ることであった。短い生命の中、彼らは学び、戦い、女皇の統率を受け、恐れることなく敵に立ち向かい、名誉ある戦死を遂げる。

この嘘がいつ暴かれたのか、それを知る者はいない。グラモスの領土の旧人類の割合が一定数を下回った時か?科学者たちが、女皇が監禁に抵抗を始めたと気づいた時か?それとも…スウォームの攻勢が消えた日からか?

人々は鉄騎兵団が存在しない「帝国」のためにすべてを費やしたことしか知らない。数十年にも及ぶ血戦の後、機甲と虫の残骸がグラモスの星域全体に広がり、1本の「死の川」となった。残されたスウォームなど、もはや脅威ではない。議会のリーダーは平和の鐘を鳴らし、民たちに蒼穹を覆っていた天災を退けたこと、そして共和国は再び夜明けの光を迎えることを伝えた——しかし、訪れたのは夜明けではなく、もう一つの夜の始まりだった。

その後、グラモスという名の文明は消えていき、人々が待ち望んでいた平和は主のいない星域に降臨した。星屑と残骸が川となって、共に星の間を静かに流れる。

グラモスの静寂の墓碑

 オーブの方から素直に読もう。かつて女皇ティタニアの君臨するグラモス帝国という世界が存在した。スウォームとの遭遇で領土を失い苦境に立っていた。鉄騎兵団が出現してスウォームを撃退した。グラモス帝国は領土を回復できたが、鉄騎兵団と市民との間には不穏な空気が漂い始めていた。

 続く縄のテキストで、グラモス帝国という世界観が欺瞞であったと語られる。現実にあったのはグラモス共和国だった。共和国の科学者に造られた鉄騎兵団は、女皇を通じて操られ、虚構の帝国のために命を捧げた。スウォームを退けるまでに共和国の嘘が暴かれた。内戦の末に滅びたとする。

 要するに、グラモスは共和国と帝国との二重構造だったわけだ。共和国が帝国を支配し、帝国には支配者の存在は秘匿されていた。縄とオーブはそれぞれ共和国側と帝国側の視点を書いたものと捉えていいだろう。いずれにせよスウォームには勝利したらしい。

 夢という単語でピノコニーを想起するかもしれない。ピノコニー=グラモス説などいかにもな予想も聞こえるが、一旦おいておこう。

グラモスの嘘

 短いテキストの両方が、鉄騎兵団の幻想と学者の憶測という、不確かさを内包するものとして提示されている。どこから嘘で、どこまで真実なのか?

侵略兵器説

 グラモス帝国の世界観で、鉄騎兵団は失われた領土の奪還という名目でスウォームと戦っていた。グラモス帝国を嘘とするなら、失われた領土というのも嘘くさい。鉄騎兵団は領土拡張のために造り上げられた侵略兵器だったと考えることもできる。

 空を覆う鉄騎兵団は虫の潮に似てきたという。虫の脅威に対抗するために虫を模したといえばいかにもな話だが、この虫は繁殖の星神に由来することを忘れてはならない。増えて拡大する存在だ。

 そう考えるとグラモス帝国という欺瞞にも理屈が通る。本当に護国のためなら二重構造は必要だったろうか。事実が違うから必要になった。最初から侵略戦争の正当化が目的だったわけだ。壮大なプロパガンダだ。

対人兵器説

 実はスウォームと戦っていたという話すら疑問視できる。鉄騎兵団の認知は改ざんされていた可能性があるということだ。

 鉄騎兵団は女皇ティタニアのテレパシーで統制されていた。装甲「サム」を装着すると声と口調が変わる。紀行PVで明らかになったように、誰であれ同じ声同じ話し方になる。すべて装甲「サム」の機能ではないか? 戦闘機による脳機能の補助というのはSFでは革新的アイデアではない。鉄血のオルフェンズに登場する阿頼耶識システムといえば知名度が高いか。認知を補助できるなら改ざんもできる。

 帝国という虚構の成立も単純な嘘ではなく認知の改ざんといえば説得力が増す。前述の侵略兵器説とも関連してくるだろう。領土拡張を目的とするなら敵はスウォームに限らない。帝国という嘘、奪還戦争という嘘、スウォームという嘘を通すために認知の改ざんが必要だった。どうだろう。

 正味根拠は薄い。とはいえ非人道的兵器を作る勢力ならとことん人道から外れるだろうな、だったら嬉しいなと思う。SFってそうじゃん。

グラモスの謎

 嘘か真かとは別に、よくわかってないフワフワした部分もある。

何年前?

 スウォームなどの単語からうっかり宇宙の蝗害時代と早とちりしそうになるが、実はグラモスがいつの時代の話かは実質語られていないに等しい。

 いわゆる宇宙の蝗害というイベントは琥珀紀で約800紀前。スタレ宇宙史でも特に古い出来事のひとつだ。1琥珀紀が開拓歴換算で76年~240年(≒1世紀)だというから、掛け算して数万年前というスケールになる。宇宙規模では時間の流れ方が異なるから単純比較はできないが、仙舟の暦が現在8100年。見比べると頭痛がしてくる。

 宇宙の蝗害自体は古い出来事なのだが、タイズルスの殞落後も現在に至るまで全期間に渡ってスウォームは発生している。アルジェンティ初登場の同行クエスト『宇宙幻覚の夜』で遭遇したように。スウォームという単語が示しているのは、宇宙の蝗害以後という、ただそれだけの事実だ。

 ホタルが短命という話も混乱を加速させる。ロストエントロピー症候群という病気は、鉄騎兵団の出自を考えれば、遺伝子改造に由来する先天的疾患とみるのが自然だ。ホタルは長命種ではありえない。グラモスの年代を古く見積もるほど長いコールドスリープを仮定しないと辻褄が合わない。

 逆にホタルに合わせてグラモスの滅亡をここ最近と見積もると、情報の少なさが気になり始める。星核ハンター「サム」として指名手配されているのは、グラモス鉄騎兵団が皆サムを着ていたと知っていればおかしな話だとわかる。鉄騎兵団の実情について、銀河でほとんど知られていない。

 次元界オーナメントがおおむね現代に近い時代を扱っているようなのは考慮に値するだろうか。サルソットやウェンワークなど滅んだ世界もあるが、殆どの世界は現代に渡って存続している。ヘルタ宇宙ステーションなどここ数琥珀紀のものだったはず。『蒼穹戦線グラモス』だけを宇宙の蝗害時代ととると、ひとつだけ時代背景が全く異なることになる。

 この辺は本当によくわからない。進展に期待。流石にあるだろう。

おまけ(仙舟)

 同時に実装される次元界オーナメント『劫火と蓮灯の鋳煉宮』の鋳煉宮とは、仙舟「朱明」工造司の焔輪鋳煉宮のことだ。この朱明への旅行記が書籍『涯海星槎勝覧・仙舟朱明』で読めて面白い。字面から想像するよりずっと清廉なビジュアルだそうだ。筆者が今一番気になっている仙舟の供給に助かる限り。今後あるだろう仙舟続編では朱明で工業SFをやってくれると嬉しいね。

 同時実装のオーナメントのもう一方『奔狼の都藍王朝』とは仙舟連合と敵対する犬型種族、歩離人に関するものらしい。都藍とは現実のトゥーラーン、中央アジアを元ネタにしている、らしい。知らない。このオーナメント、追加攻撃アタッカーに適するというが、スタレで追加攻撃といえばカンパニー。仙舟でカンパニーといえば仙舟「曜青」。曜青の狐族と歩離人には特別な関係が云々。…と一周して繋がりありそうな、ないような。ストーリーに期待。

 ver2.4で実装見込みの雲璃と椒丘はそれぞれ朱明、曜青の人物だ。バージョンを跨いでいるから、この辺の話は気長に待つ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?