クライアントが動き出すには、高めるのではなく、高まるが大事
こんにちは。埼玉県春日部市のデイサービスでリーダーをしている後藤と言います。
今日は、「高める」と「高まる」の違いについて考えてみようと思います。
病院や施設、在宅の分野で聞かれる言葉
歩行能力を「高める」
認知機能を「高める」
モチベーションを「高める」
日中の活動量を「高める」
地域ケア会議やサービス担当者会議に参加すると
どうしたら、モチベーションを「高められますか?」とアドバイスを求められることがあります。
ちょっとこの言葉が引っかかります。
「高める」というのは、外発的な作用によるもので、
【原動力が外にある】
ことになります。
そして、原動力が外にある場合、大概、上手くいきません。
凄腕の治療家、理学療法士等が、歩行能力を高めても、一時的なもので、治療家の手を離れた途端、もとに戻っていくのを見てきました。
私には、そのような腕がないので、ものを言える立場にないかもしれません。
作業療法士の資格を取ってから9年
回復期病棟→老人保健施設→急性期病院→訪問→デイサービスと経験を積ませてもらいました。
その中で感じたのは
急性期でも
回復期でも
生活期でも
クライアントのリハビリテーションの獲得のために、大事なのは、
「どうやって高めるか?」
ではなく、
「どうやったら高まるか?」
ということに尽きるのではないかということです。
回復期で歩けるようになった患者が、数カ月後車椅子で生活していたり
訪問のときだけ、頑張るけど、他の時間は何もしないで過ごしていたり
デイケアで、リハビリをすることがリハビリだという男性に会ったりしました。
大事なのは、
クライアントの内にある原動力が高まる環境をどう用意するか?
人の行動には、論理よりも感情が大きい力で働きます。
説明を受けて、頭では納得しても気持ちが付いていかないということはよくあります。
クライアントへの問いかけが
「リハビリやらないと歩けなくなるよ」
「デイにいかないと寝たきりになるよ」
「自主練習やらないと変わらないよ」
「リハビリを頑張ったら、歩けるようになるよ」
とアメとムチ(外発的に動機づけ)を与えて動かそうとしても、短期的には成功するかもしれませんが、長期的に見て、大概うまくいきません。
ダニエル・ピンクの著「モチベーション3.0」では、アメとムチでの動機づけは、モチベーション2.0とされています。
人間の脳は、潜在的に現状維持を望みます。
人間の脳は、やらない理由、やらなくていい理由を作る天才です。
現状で、なんとかなっているなら、尚更です。
では、人間の内側にある原動力を高められるか?
心理学者のエドワード・L・デシは、人間の内側にある原動力には、3つの欲求があると述べました。
それは、自己決定理論(SDT)と呼ばれ
①自律性=えらべる
②有能感=できる
③関係性=つながれる
で表されています。
我々、医療介護の業界のクライアントは、何かしらのハンディキャップによって、上記の3つの欲求が満たされていません。
逆に、アメとムチによって、コントロールされてしまうことがあります。
現在デイサービスに勤務していますが、デイサービスの特性として、集団の力があります。
このクライアントは、どの欲求が満たされていないのか?
集団の力をどう使えば、3つの欲求を満たせるか?
その力がどうやったら、他のクライアントに伝播するか?
そんなことを考えています。
利用者に触らなくても、この欲求を満たせられる環境を用意することで、3つの欲求を満たすことが出来、
結果として、
歩行能力、認知機能、モチベーションは、「高まって」いきます。
デイサービスのやりがいはここにあります。
クライアントのことで、困ったとき、悩んだとき、
「どうやって高めるか?」
ではなく、
「どうやったら高まるか?」
の問いを立ててみるのも手かもしれません。
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