見出し画像

「コーティング」の具体的イメージをつかもう

テント生地におけるコーティングは主に 4 種類あります。それぞれのコーティングが表面でどう実際に施されているのかを紹介します。

コーティングは目に見えないので違いがわかりにくいです。ところが表面をイメージできるようになると、別途説明する各コーティングの性質を理解しやすくなってきます。


DWR 耐久撥水

まず 1 つ目が DWR です。これは Durable Water Repellent の略で、日本語で言うと耐久撥水です。

Patagoniaのフッ素化DWR

普通の撥水スプレーだと 1 回洗濯して落ちますが、耐久撥水と言われるくらいなので、洗濯をしても落ちません。

以前は C8 の DWR が主流でしたが、環境負荷が悪影響を与えるため、現在は C6 の DWR が主流です。

山と道のUL All-weather Jacket。C6 DWRのようだ。

一部のメーカーでは C6 DWR をやめて、フッ素を使わない C0 の DWR に切り替えています。

DWR加工はフッ化炭素を含む機能的な化学加工で、アウトドア業界は耐水性の製品を製造するために長年DWR加工に依存してきました。しかしそれは環境に害を与える生分解性のない化学薬品です。フッ化炭素は非常に優れた撥水性を有しますが、その悪影響により、私たちの製造する衣類からそれを完全に廃絶することに取り組んでいます。

Patagonia

しかしながらフッ素を使わない耐久撥水加工は性能が下がってしまうことが課題。各社で研究開発をすすめているのが現状です。

DWR加工を施した製品のうち(パタゴニアの防水性/耐水性製品の90%)2022年秋までにインサレーションや中間着、一部のアウターウェアを含むDWR加工の重要度が比較的低い製品をフッ化炭素不含有に移行します。一日中着用するレインウェアなどのDWRの適用が重要な製品については、これらの製品の機能性を満たすDWRの代替策はまだ見つかっていません。残り10%の製品への解決策を発見すべく、第一線の化学者がパタゴニアを支援しています。

Patagonia

上記は主にレインウェアの話でしたが、テントにおいてもDWRの記載をみかけることがあります。カタログに書かれていなくても、実際はDWR加工されている場合が多いです。

MSRのハバハバシールド1
フライシート、インナーメッシュ、フロアシートのそれぞれのコーティングが表面裏面ともに細かく記載されている。
montbellのステラリッジ  レインフライ
ウレタンコーティングとの記載はあるがこれは裏面のこと。表面について記載なし。
montbellのステラリッジについて撥水加工を問い合わせたところ、DWR撥水加工との回答。C0 DWR or C6 DWR といった詳細について回答不可とのこと。
finetrackのカミナドームの記載
PUコーティングとの記載はあるがこれは裏面のこと。表面について記載なし。
finetrackのカミナドームについて撥水加工を問い合わせたところ、フッ素を利用した C6 DWR撥水加工との回答。フライシートだけでなく細部まで詳細に教えて頂いた。

DWRの模式図としてたまに見かけるのはこのようなイメージですが、実際は異なります。

DWRの模式図としてよく見かける誤ったイメージ

生地のなかの繊維を1本1本コーティングしているほうがイメージに近いと思われます。繊維同士の隙間があるので、DWR加工をしても通気性は変わらないのが特徴。

DWRの模式図として正しそうなイメージ
DWRの実際のイメージ
繊維1本1本に撥水剤がコーティングされている様子

PU ポリウレタン(エステル結合)

ここから先は

1,115字 / 8画像

この記事は現在販売されていません

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?