【五島崇行とは誰か?】6

前回は古巣である書店に戻ってくるまで、今回は初めて働く事になった大型書店でのお話しをしていこうと思います。
1000坪越える売り場でワンフロアというのは、当時でも多くはなかったんではないかと記憶してます。
また新規オープンという事もあり、開店準備からしていかなければいけない状況でしたが、それだけの巨大店舗の開店の経験を持った社員も少なく現場は、あまり統制が取れてなかったというのが最初の印象でした。
配属されてすぐに、「常備スリップ付いてるやつは棚に入れない方が良いんじゃないですか?」「返品先が明らかに違うやつは別の箱に仕分けた方が良いじゃないですか?」とか聞いて、「新人さんにもちゃんと指示しないといけなくないですか」という意味を遠回しに、配属先の上司に伝えてた気がします。

それでも新規店舗の開店メンバーというのは不思議な連帯感に包まれるもので、仕事が終わると自然と上司も含め仲の良いメンバーが集まり、飲みに行ったりしつつ、オープンする頃にはチームのようなものが出来上がっていました。

そして、いよいよオープン直前、正式な配属部署の振り分けが始まります。
棚担当(確か芸術だった気がします)と物流部署と2つから選べるという事でしたが、当時の店長から物流部署の重要性の説明と、開店準備中の私の評価などがあり、是非、物流をやって欲しいと頼まれました。
やはり書店員の花形といえば棚担当でしたが、裏方に回るのも悪くないと思い物流を担当する事に決めました。
この決断が私の能力形成の中で、パソコン屋の経験に次いで大きなものとなります。

1000坪超の売り場を支える商品の入荷量とは、果たしてどんなものか。
裏方だけをやるという仕事が、どんなものか。
そして、その重要性とは。
オープンしてすぐに理解できました。

基本的に書店の入荷は1日2回。
朝に注文補充品の入荷があり、昼過ぎには新刊と翌日発売の雑誌があります。
朝入荷した商品を検品、仕分けして、出社した棚担当が、すぐ売り場に展開できるように準備します。
お昼休みを挟んで、当日の新刊と翌日の雑誌が入荷してきますので、それまでに検品所はクリアにしなければなりません。
また翌朝、同様に入荷してきますので、毎日それの繰り返しです。
単純な作業故、いかに効率良く荷物を捌いていくかというのが、重要になります。
また裏方にいると全体の入荷量、返品量を目視で把握できるので、データを見るよりも売れているジャンル、発注の足りてないジャンル、あるいは無駄な入荷が多いジャンルというのが一目の元、確認できます。
確かに裏方が正常に機能しないと、書店の日常の業務が滞ってしまう重要なポジションだというのが、すぐに理解できました。

そういった商品管理の重要性も、さることながら何よりもスタッフのマネジメント、基本的なルール作りの重要性というものに改めて気が付かされました。
物流部門には何故か、のんびりめのスタッフが配属されてましたが、物流は時間との勝負、何を何時までに誰が処理するをいうのを明確にし、スタッフを動かさなくてはなりません。
上司部下の関係性はなかったですが、必然的に私がスタッフのマネジメントをするようになっていました。
また直属の上司はいましたが、物流業務しかも大型店舗での勤務の経験も無い人だったので、的確な指示なども無いまま、部署内でのルール作りも私が作って行く必要がありました。

ルーチンワークをこなしながら、自分がいなくても物流が滞りなく機能するガイドライン作り、気が付けば誰よりも早く出勤し、閉店までいるような事はさすがに無かったですが、毎日残業して帰るのが当たり前の生活になっていました。
その甲斐あってか、他のどの部署よりも仕事の速さ、処理能力というのは高くなり、気が付けば他のスタッフから頼れる存在になっていました。

私が作った部署が他のスタッフからの信頼を獲得できた反面、その分私自身はルール作りやスタッフ育成に没頭するあまり、書店内の誰よりも厳しい指導をする事で有名となり、場合によってはスタッフに厳しく接し過ぎる事も多々あり、「物流の怖い人」または「五島さんは厳しい」という、あまり嬉しくないイメージが浸透してしまい、払拭するまでには、それから長い期間を有する事になってしまいました。
(いや、もしかしたらまだそのイメージのままかも・・・)

当時は反省する心の余裕もなかったですが、思い返せば本当につらい接し方をしていたので、すまない事をしたなって思います。

そんな良い事も悪い事も経験をしながら、部署替えの話が出てきますが、そのお話はまた今度。

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