見出し画像

「2008年とは全く違う」JPモルガンCEO

米銀最大手のJPモルガンチェースが4日、アニュアルレポートを公表しました。SVB破綻を機に広がった金融システムのストレスについてのジェイミー・ダイモンCEOのコメントが市場で注目を集めました。
https://www.jpmorganchase.com/ir/annual-report

JPモルガンは世界で最も影響力、収益力のある銀行です。そして、ダイモン氏はリーマンショックのあった2008年もCEOを務めていた米金融界の重鎮。米議会や世界の金融当局への影響力も大きく、今回の騒動に対する彼の評価には米メディアも大きく扱っています。

というわけで、主な発言をピックアップするとともに、後藤が少し解説を添えます。SVB破綻からもうすぐ一カ月。近いうちにnoteで、今回の騒動や市場の状況もまとめようと思っています。

▼「シリコンバレーバンク(SVB)やクレディスイスの破綻や銀行システムへのストレスは、単に規制要件を満たすだけでは不十分であることを明確に示している」

【後藤解説】
 2008年のリーマンショック以降、世界の金融当局は危機の再来を防ぐため、資本や流動性を十分に保つようにするなど金融規制を強化してきました。このことは効果を発揮したものの、形式的な要件だけでは、危機を完全に防ぐことはできない、とダイモンは指摘しています。

▼「今回の銀行システムの混乱は、ほとんどのリスクが目に見えないところに隠れていた。…SVBの法人顧客は、預金を一斉に移動させうる少数のベンチャー企業が大半を占めていた」

【後藤解説】
 SVBはベンチャー企業から集めた預金を、安全とされた米債券で運用していました。期間の長い債券を満期まで持つ前提でしたが、2022年以降の急激な金利上昇で、債券価格が下落。資産価値が大きく下がり、預金が一気に流出しました。
 一般的な銀行は多数の国民や企業から預金を集めているため、分散が効いています。しかし、SVBは一握りの大口顧客の影響が多く、かつシリコンバレーのベンチャー企業ということで顧客特性も似ていました。数日のうちにゴソッと預金が抜け、ダイモン氏は「預金の粘着性が欠落していた」と表現しています。

▼「皮肉なことに、銀行は安全資産である国債を保有するように促されていた」

ここから先は

1,584字

ベーシックプラン

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?