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訪日観光回復 景気・為替に影響は?

外国人の訪日観光が回復しています。下記のように10月49万8600人9月の2.4倍に増えました。すでに観光地や都心部などでは外国人旅行客とみられる方が増えていると感じる方もいると思います。

最大の要因は10/11に入国規制が緩和されたことです。さらに円安が進んだことで、外国人からみて、日本での消費のオトク感が強まったことも誘因になっているとみられます。

とはいえ、コロナ前の2019年10月と比べると80%減と回復はまだまだ道半ば。特に中国からの観光はコロナ対策の影響で2万1500人と、2019/10と比べ97%減になっています。

今後の回復はコロナ情勢や各国の規制に左右されますが、基調としては回復を続けるとみられています。コロナ前の2019年には年間で3000万人以上の訪日がありました。当時よりさらに円安が進んでいることを踏まえると、2023年は急回復する可能性もありそうです。

では景気為替への影響をみていきましょう。身近な話題をマーケットに結び付けると、経済がおもしろくなると思います。

まず国土交通省の調査。コロナ前の2019年の1人あたりの支出は下記のとおりです。

https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001345781.pdf

コロナ前のように年間3000万人強ともなれば、単純計算で年5兆円近くが日本国内で消費されることになります。2021年度の個人消費は284兆円なので、ざっくりその1-2%が押し上げられるといえます。

円安の影響で、同じ「1万円」でもドルなど外貨での負担は数年前より軽くなっており、1人あたりの支出が増える可能性もあります。日本国内でも観光は増えており、海外からの客とあわせ、観光業界の収入は急速な回復が見込まれます。

◆ よくわかる旅行収支

では旅行収支という統計でもう少ししっかりみてみましょう。

外国人が日本で消費するのは「サービスの輸出」とも言えます。外国人がトヨタの車を買うのと、外国人が日本のレストランでお金を支払うのは似た構図といえますよね。

逆にいえば、日本人が外国にいって、レストランにお金を払うのは「サービスの輸入」。日本人がiPhoneを買うのと似た構図です。

この「旅行の輸出入」を差し引きしたのが旅行収支

さきほどのグラフのようにコロナ前は毎月2000億円台の「黒字」でした。つまり、日本人が海外でお金を使うより、外国人が日本にきておカネを使ってくれる額のほうが多かったわけです。

コロナ禍では双方の旅行が縮小し、旅行収支は0に近い水準となりました。これが今後は旅行黒字が再び増していくとみられています。

◆ 為替への影響は?

旅行黒字ということは、外貨を日本円に替えようとする注文が多いことになります。つまり「円高圧力」となるわけです。

為替介入や投機筋の売買のように、短期間で大きな額の取引があるわけではありませんが、ボディブローのように日々フローとして効いてくることになります。

年間で数兆円規模になれば、為替市場への影響も無視できない程度になるといわれています。

為替も円安が進めば、外国人からみれば値下げのようなもので、そうすると客足が戻りやすくなります。その客足によって「外貨を売って、円を買う」動きが広がります。これは車などモノの輸出にも当てはまることです。

つまり、「金利差」といったテーマで円安になっても、「金利差」だけで永久に円安が続くわけではありません。円安になれば「オトクだ」と思った外国人が円に換えて消費するので、こうした貿易(旅行を含む)の経路をたどって、円安に歯止めがかかるわけです。為替と貿易は相互に影響しあうものだということがわかると思います。

もちろん、外国人観光客がどれほどの勢いで戻っていくのかはわかりません。ただ、こうした身近な話題も、外国為替市場と密接に絡んでいるというのは経済・金融のおもしろいところだと思います。これからもいろんな話題を経済や市場に結びつけてお話しできればと思います。

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