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記録的な米インフレ 3月8.5%

■ 40年ぶり

3月の米CPI(消費者物価指数)は前年同月比で8.5%の上昇に。2月の7.9%から加速し、約40年ぶりの急激なインフレとなりました。指数で8.5%ですから、個別の品目やサービスによっては数十%の高騰も多くあるという深刻なインフレです。

■ ガソリン・食品が深刻

ガソリン食品のインフレが特に深刻です。2月までも急上昇が続いていましたが、ロシアのウクライナ侵攻を機に、3月には原油や素材、穀物などが急騰したことが拍車をかけました。ガソリンや食品は生活に密着したモノ。低所得者にも打撃となり、国民の不満にもつながっています。

■ 複合要因がたくさん

エネルギーの高騰以外にも要因がたくさんあります。

①強い需要:コロナ後の経済対策や金融緩和で、家計の懐は温まりました。コロナ禍で消費を抑えていた反動もあり、需要は非常に強い状態が続いています

②モノがない:コロナ後、生産や物流が停滞し、サプライチェーンの各所で目詰まりが起こりました。2021年に入ってから需要回復に供給が対応できない状況が続き、モノが手に入らない状況が長期化しています。売れるモノが足りなければ、当然価格には上昇圧力がかかります

③人手も足りない:コロナ後、需要の急回復によりサービス業などで人手不足が強まりました。しかし、復職に慎重な人が一定数いたり、リモートワークを優先する人も出たりして、業種によって人が確保できない状況が極まっています。企業・店舗は賃金を大きく上げたり、少人数で仕事を回したりしています。コロナ前の価格で安定してモノやサービスを提供するのが難しくなっています

■ 悩むFRB

アメリカの中央銀行、FRBは2%のインフレを目指し、金融政策を運営しています。半年ほど前までは強いインフレは「一時的」としてきました。FRBは2%からの多少の振れは容認する運営となっており、昨年秋までは強力な金融緩和を続けてきました。

しかしインフレは収まるどころか加速し、いまや8%台と2%を大きく逸脱しました。いつ沈静化するかも見えにくい状況です。国民の不満は強まり、バイデン大統領も昨年終盤から懸念を強めています。

FRBはあわてて金融緩和の修正を進めています。3月にはコロナ後で初となる利上げを実施。5月と6月の会合では一気に0.5%の利上げを実施するとの見方が増えています(通常は0.25%刻み)。国債購入などの量的緩和も急速に手じまう方向です。

NY市場ではインフレやFRBの急速な金融引き締めを警戒し、ここ数日、長期金利の上昇や株安が進みました。4/12は前日までの警戒が強かった反動で、CPI発表後、長期金利は低下しましたが、米国株は結局、終値で3日続落となりました。

金融緩和の急激な巻き戻しは企業や家計がお金を借りる金利にも上昇圧力がかかります。企業収益を圧迫するほか、住宅購入に逆風となります。さらに運用マネーも縮小に向かいやすくなるため、株価にはネガティブな要因となりやすくなっています。特に2020年に急上昇したナスダック株は金利上昇の悪影響を受けやすくなっています。

■ ピークアウトの兆しも

食品・エネルギーを除いたコア指数は6.5%と小幅ながら市場予想を下回りました。前月比では伸びが鈍り始めており、今後、前年同月比の数値は鈍化していくとの見方も増えています。

ただ、仮に6%→5%と鈍化していったとしても、FRBの目標の2%からはまだまだかけ離れています。市場では年後半も連続利上げを進めるとの予想が大勢。インフレがどれほど収まるのか、FRBはどう対応していくのか。引き続き、今後の市場を左右することとなりそうです。

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2022年4月13日 後藤達也

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