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そもそも経済#11 米インフレ & 利上げ

アメリカのインフレと利上げ。2022年の世界経済の一大テーマでした。そして、2023年も金融市場の話題の中心です。ちょうど今晩(1/12 22:30)に米インフレ指標(CPI)が発表され、投資家もざわついています。

「ニュースでちらほら聞いたけど、全体像はよくわからない…」といった方向けに「そもそも」をわかりやすく説明します。「ある程度、理解しているつもり」という方にも頭の整理になるよう工夫しています。

まず初歩から。物価は「需要」「供給」で決まります。

「高いお金を出しても買う」という人が多ければ値段は上がります。売り手からすると、モノをたくさん仕入れられなかったり材料・人件費が高くなると、値上げにつながりやすくなります。

コロナ後のアメリカでは「需要」「供給」の双方で大きな力が働きました。

◆ 強い需要

コロナ後、アメリカは巨額の財政出動(現金給付、失業対応など)や空前の金融緩和を実施しました。この結果、国民の貯蓄は急増しました。2021年は株高・不動産高も進み、富裕層の資産も膨張。コロナ後のリベンジ消費も相まって、需要が爆発的に高まりました。

◆ 供給制約

一方、2020年はコロナで様々な経済活動が停止し、経済再開後は物流が乱れました。需要が爆発的に回復する中でモノが足りず、半導体や車不足も深刻に。何かが足りなくなれば、ほかの生産にも影響し、モノ不足が連鎖し、長引きました。同時に人手不足から賃金が急上昇し、外食などサービス業の価格も高騰。2022年はウクライナ戦争でエネルギーや穀物価格が高騰し、インフレに拍車をかけました。

◆ 40年ぶりインフレ

その結果、約40年ぶりという記録的なインフレになりました。日本のCPIは3%台まで上昇しましたが、アメリカは一時9%を超えました。コロナ前までは2%前後で安定していただけに、いかに強烈なインフレかわかると思います。

◆ ホワイトハウスも中央銀行も

庶民の不満・不安は一気に高まりました。バイデン大統領は2021年秋ごろからインフレへの警戒を強めました。物価安定は中央銀行FRBの使命でもあります。物価が乱高下していると、国民も企業もまともに経済活動ができなくなるからです。パウエルFRB議長は「物価安定なくして、経済はだれにもワークしない」と強調しています。

FRBは2022年、記録的なインフレに対し、記録的な利上げで対応しました。利上げは需要を弱めるため、インフレを和らげる効果があります。

利上げは「0.25%」刻みが基本ですが、右表のような大幅連続利上げとなりました。

アメリカにとって景気を熱しも冷ましもしない、ほどよい金利(中立金利)は2%台とされます。コロナ直後はゼロ金利で経済を支えたわけですが、2022年は一気にブレーキを踏み込んだかたちです。

その結果、米景気は昨年後半から悪化しており、2023年は景気後退に陥るとの見方が増えています。ホワイトハウスもFRBも本来は景気後退は避けたいところですが、そのリスクを背負ってでもインフレを止めねばならない事態となったわけです。

◆ 難しいジレンマ

FRBは2022年、記録的な利上げを進めましたが、12月には利上げ幅を0.75%→0.50%へ縮めましたかなりブレーキを踏んだのでその影響を見極めたいというのが趣旨です。

急激な利上げでインフレが落ち着くかもしれません。さらにブレーキが利きすぎて、深刻な景気後退や失業急増が起こると、インフレ同様に大問題です。2022年はインフレ対応が最優先でしたが、2023年は「インフレが落ち着くか」「景気がどこまで悪くなるか」の両にらみとなりそうです。

◆ で、物価はどうなりそうか?

2022年後半から「インフレはピークアウトした」との期待が広がっています。ここからはその背景と、今後の金融政策今晩のCPIのみどころを解説します。

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