7月FOMC議事要旨 ポイントまとめ
7月開催のFOMC(米金融政策を決める会合)の議事要旨が発表されました。市場で注目された主な箇所を英文も載せて、まとめます。
なお、「市場との対話」や「FOMC議事要旨」については下記記事で解説しています。
◆ 主な注目箇所
With inflation remaining well above the Committee’s objective, participants judged that moving to a restrictive stance of policy was required to meet the Committee’s legislative mandate to promote maximum employment and price stability.
インフレがFOMCの目標(2%)を大きく上回る状況が続いており、雇用の最大化と物価安定を促進するというFOMCの使命を果たすために、引き締め的な政策スタンスへ動くことが必要だと判断した。
Participants concurred that the pace of policy rate increases and the extent of future policy tightening would depend on the implications of incoming information for the economic outlook and risks to the outlook.
利上げペースや将来の引き締めの程度は、今後入ってくる情報(インフレ指標など)が経済見通しやそのリスクに与える影響によって決まると、参加者の見解が一致した。
Participants judged that, as the stance of monetary policy tightened further, it likely would become appropriate at some point to slow the pace of policy rate increases while assessing the effects of cumulative policy adjustments on economic activity and inflation.
金融政策スタンスがさらに引き締まるなか、経済活動やインフレに対する累積的な政策調整(これまでの急速な利上げ)の効果を評価しつつ、ある時点で利上げペースを減速させることが適切になる可能性が高いと判断した。
Some participants indicated that, once the policy rate had reached a sufficiently restrictive level, it likely would be appropriate to maintain that level for some time to ensure that inflation was firmly on a path back to 2 percent.
政策金利が十分に引き締まった水準に達すれば、インフレが2%への戻る道筋をしっかり確保するため、その水準をしばらく維持する(利上げも利下げもしない)ことが適切だろうと、一部の参加者が指摘した。
In light of elevated inflation and the upside risks to the outlook for inflation, participants remarked that moving to a restrictive stance of the policy rate in the near term would also be appropriate from a risk-management perspective.
インフレの加速や先行きの上振れリスクを踏まえ、短期的に引き締め的なスタンスへ移ることはリスクマネジメントの観点からも適切だと、参加者が指摘した。
Participants judged that a significant risk facing the Committee was that elevated inflation could become entrenched if the public began to question the Committee’s resolve to adjust the stance of policy sufficiently. If this risk materialized, it would complicate the task of returning inflation to 2 percent and could raise substantially the economic costs of doing so.
FOMCが直面する重大なリスクは、世の人々がFOMCの政策スタンスを十分に調整する決意に疑問を抱き始めた場合、インフレ率の上昇が定着する可能性がある点だと、参加者は判断した。このリスクが顕在化すれば、インフレ率を2%に戻す作業は複雑になり、経済的コストが大幅に上昇する可能性がある。
◆ 解説
インフレへの警戒を重ねて示しました。ただ、これまで大幅な利上げを進めてきたことから、その影響を点検していくことも重要だと指摘しました。
政策金利は米経済に中立的な金利(景気に刺激にもブレーキにもならない)に近づいています。これまでのような急な利上げをずっと続けると、経済にブレーキをかけすぎる恐れもあるからです。このため、「ある時点で利上げのペースを減速させるのが適切」としました。
年末にかけ1会合の利上げ幅は0.25%という通常の幅へ戻し、利上げを停止させるというのがメインシナリオであるというスタンスを示した形です。
とはいえ、インフレが収まるのかはわかりません。「利上げペースや将来の引き締めの程度は、今後入ってくる情報(インフレ指標など)が経済見通しやそのリスクに与える影響によって決まる」としています。つまりCPI, PCE, 雇用統計など経済指標や金融市場の動向次第では、金融政策はどちらの方向にも振れうることを強調したかたちです。
ひとことでまとめると、「インフレに警戒が必要だが、かなり利上げしてきたのでしばらくはその影響を見極めたい。基本線は利上げペースを減速させる。ただ、それは今後のインフレ次第」ということです。
今後の利上げペースはどうなるのか。金利先物市場の見立ては下記のとおりです。9月FOMCは「0.50%」か「0.75%」で拮抗。11, 12月FOMCは0.25%程度の利上げを経て、利上げを停止。2022年前半の政策金利の水準は「3.50-3.75%」で横ばいというのが中心的な見通しです。く
8/25-27のジャクソンホール会議ではパウエル議長が講演する見通しです。ここで今後の政策スタンスをより丁寧に説明するとみられます。講演公表時にはこちらのnoteで速報・解説予定です。
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