【米雇用統計】賃金インフレ 現状は?
毎月初旬に発表される米雇用統計は金融市場の一大イベントです。最近は雇用者数よりも平均時給の方が注目されることもあります。平均時給がなぜ注目されるのか、そしていまはどういう状況なのか、コンパクトに解説します。
◆ まず事実確認
下記がアメリカの平均時給の推移です。コロナが襲った2020年は特殊要因で振れがあります(下記注)が、基本的に右肩上がりです。いまや平均時給33ドル台ですから、日本円で4500円になります。この金額だけでも改めて驚かされますね。
【注】コロナが襲った2020年春は外食、レジャー、小売りなど比較的時給の低い業種で失業が急増したため、計算上、平均時給が大幅上昇しました
では、前年同月比にして、CPIコアと並べます。
コロナ直後の振れを除けば、結構動きが似ているようにもみえます。別のグラフで相関関係を確認します。
まずコロナ前までの2011年1月~2020年2月でみてみます。
横軸に平均時給、縦軸にインフレ率をとっています。「賃上げが強い時ほど、インフレが強い」という右肩上がりの相関関係がみえますね。
コロナ直後の2020/3~2021/6は、さきほど説明した特殊要因で前年同月比が乱れています。このため、2021/7~2023/3でコロナ後をみると、こうなります。
コロナ前と比べ、かなり右上にシフトしました。それでも「賃上げが強い時ほど、インフレが強い」という右肩上がりの相関関係があります。両方をあわせると…
統計上の相関性の高さを示す相関係数は0.91(1が完全相関、0が無相関)と非常に高くなっています。
◆ なぜ賃金と物価は相関?
ざっくりいうと、こういう感じです
一目瞭然ですね。
そして、インフレがきついと、企業は賃金をもっと上げないと採用しづらくなり、「賃上げ」と「インフレ」の循環も起こりやすくなります。
◆ サービス価格が特に重要
モノの価格は原材料や製造設備のコストが大きく影響します。一方、外食やレジャー、医療、教育など、サービス価格は人件費に左右される面が大きくなります。
パウエルFRB議長も「サービス価格(住宅除く)のコストの大半は賃金」と話しています。そして、FRBがインフレ指標の中で特に重視しているのが「住宅を除くサービス価格」です。
「住宅を除くサービス」はインフレのピークアウトが遅れています。それは賃金上昇率が高いのが主因です。言い換えれば、賃上げの勢いも鈍り始めれば、FRBが注目する「住宅を除くサービス価格」も落ち着き始めるはずです。
従来、雇用統計は「雇用者の増減数」に注目されていました。いまも注目されますが、それ以上に「平均時給」が注目されます。いま、失業率は歴史的に低く、社会的な問題はむしろインフレです。このため、インフレとの関係性の強い「平均時給」の方に注目がグッと集まっているわけです。
◆ で、賃金情勢はどうなのか…
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