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金利と株価の関係は?

おとといYouTubeに流した「金利と株価の関係は?」が好評でした。少し遅れましたが、noteバージョンです。上記のサイクル、大局観で意識しておくことが重要です。

「金利上昇→株安」?

私もTwitterでよく、「金利上昇を受け、ナスダック株が大幅安」と書きます。報道でもよくみかけます。ただ、自戒もこめてですが、その意味合いに触れず、雑に説明している面も否めません。一体どういうことか。基本的なところから確認したいと思います。

背景説明の前に、まず事実確認を。

上記はアメリカの代表的な金利である10年物国債と、ナスダックの株価指数です。「金利上昇で株安」が目立つのはで囲ったあたりです。赤い線が上昇し、青い線が下落していますね。今年に入ってからは特に目立ちます。

ただ、もう一度よくみてください。グラフ全体では、青い線も赤い線も上がっているともいえますね。緑丸のところは逆の動きですが、常に逆の動きをしているわけではありません。グラフの左のほう、コロナが襲った2020/3ごろは両方とも下がっています。

つまり、金利と株価の関係は一筋縄では語れないということです。そのカラクリをみていきましょう。3つのPartにわけます

◆Part1 「金利って?」

金利は「経済の体温」と呼ばれることがあります。この表現、金利の特性をうまく言い当てています。

原則として、景気がよければ、金利(体温)は上がります。たとえば会社やお店の売り上げが好調なら、高い金利を払ってでも銀行からお金を借り、新しいお店をつくったり、工場を建てたり、人を雇ったりします。個人もお金をかりて住宅を買おうとする動きも強まりそうです。

金利にはいろいろあります。企業が銀行にお金を借りる時の金利。個人でも住宅ローンや自動車ローン、カードローンでずいぶん異なります。政府が国債を発行してお金を借りる時も金利があります。

そうした金利は基本的に連動しています。借り手によって金利水準は異なりますが、銀行などの貸し手は「誰にどの金利で貸すのがリスク・リターンがよさそうか」と考えます。国債の金利だけが突然急騰するということはあまりありません。企業や個人のおカネへのニーズが強まれば、まわりまわって国債の金利も上がりやすくなります。つまり経済活動が活発ならば幅広い金利が上昇します。

◆体温は高すぎてもダメ

それなら金利は高いのがいいかというと、そうではありません。運動して体温が上がれば、体にも心にもよさそうです。しかし、心拍数が170/分になると倒れてしまうかもしれません。適度な負荷の運動でも5時間も6時間も続けられません。

経済にも話を戻すと、金利が上がると企業や家計もお金の返済負担が高まり、活発な経済活動(運動)をしづらくなるのです。身の丈にあわない過剰な活動はインフレバブルと重なる面もあるといえるでしょう。つまり金利も体温も低すぎるのは元気のない証拠ですし、かといって高すぎるのも好ましくないといえます。

◆米金利で確認

米10年物国債の利回りで確認してみましょう。2019年には米中対立が深まり、世界の貿易や景気への不安が増しました。経済活動が弱まるとの懸念から金利は下がりました。さらに2020年春にはコロナが急拡大したことで経済活動は停止。金融緩和も相まって、金利は大きく下がりました。

2020年後半には経済再開が進み、2021年春には大規模な経済対策が加わり、景気は急回復。金利も大きく上昇しました。さらに21年後半以降はインフレが加速し、FRBによる急速な利上げへの警戒が強まりました。経済活動は強まったのですが、その結果、金利が大きく上がり、今度は高い金利が経済活動の制約になりつつあります。

◆金利と株価

Part1でみてきたように金利と景気の関係は複雑です。株価もまた上記のように「金利上昇」が株高と同時に起こることもあれば、株安をもたらすこともあります。

上記のサイクルはしばしば市場関係者が意識するものです。

まず金融相場。これは2020年のコロナ以降の株高が象徴的です。きわめて低い金利のなかで景気が徐々に回復に向かい、投資家心理が明るくなる過程です。次が業績相場。景気回復により金利が上昇しはじめますが、景気のよさが企業業績の回復にもつながり、株価も上昇を続けます。2021年はこれに近い時期が多かったと思います。

ところが金利上昇が行き過ぎると、次第に株価の上値を抑え始めます。これが逆金融相場です。2022年はじめからの株安はこの局面に移った可能性があります。もちろん金利上昇が今後一服し再び株高が進む可能性もあります。そうなった場合は「業績相場」の一時的な調整局面だったといえるかもしれません。どちらになるかはしばらくたってからでないとわかりません。

最後が逆業績相場。景気が悪化し、金利が下がる中でも、株式市場のムードの改善は遅れ、株価が下がる局面です。

大切なことは「金利上昇→株安」のように短絡的に考えないということです。いまはどういう局面にあるのか。経済情勢や金融情勢など幅広くみわたしながら、総合的に判断していくことが重要です。

アメリカの経済、金融市場にとっての最大の焦点はインフレです。約40年ぶりのインフレで、国民の不満も強まっています。FRBはインフレへの警戒を強めており、急速な利上げと量的緩和の縮小を進める構えです。

インフレが長引き、FRBが急速な利上げを進めるようなら、金利はさらに上がり、経済活動に逆風となります。そうなれば株価への下押し圧力にもなってしまいます。後藤のTwitterやYouTube, noteでは今後も物価動向やFRBの姿勢の変化を伝えていきます。

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2022年4月12日 後藤達也



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