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FRB入門 #1

アメリカの中央銀行、FRB。経済や株式市場の報道で連日あらわれるキーワードです。しかし、中央銀行って、小難しい世界。「なんとなくわかっているけど、実はよくわからない」「いや、なんとなくもわかっていない」という方も多いのではないかと思います。このnoteで、だれでも数分で読める解説を連載します。FRBのキホンをおさえ、ニュースの意味がスッと理解できることを目指します。

今回はまず「中央銀行って?」「物価安定、なぜ必要?」「なぜ2%?」「なぜ利上げ?」といった一番基本的なところからみていきます。次回以降、テーマを広げ、深掘りします。みなさまのご意見も踏まえ、ほかにはないわかりやすい「FRB入門」をつくり、株価や為替との関係もみえやすくしていきます。

そもそも中央銀行って?

中央銀行、日本だと日銀です。役割・理念を大づかみにいうと「国民が生活を送りやすいよう、金融面の環境を整える」ということです。お札を発行が一番イメージしやすいと思いますが、ただお札を発行するだけでなく、物価の安定金融システムの安定を保つことによって、健全に経済発展が進むよう、様々な政策を実施しています。

物価の安定、なぜ必要?

物価が激しく動く世界を想像してみてください。少し極端ですが、1万円で売っていたものが、翌年には2万円になり、次の年に5000円になっているような状態です。

こんな乱高下が続くようだと、将来が不安になりますよね。いつモノを買うべきか悩ましいですし、がんばって貯金をしても、将来買おうと思っていたものが買えなくなるかもしれません。子供の養育費、老後の生活も読めず、お金の面での人生設計が難しくなります。住宅ローンを借りて、家を買うのも怖くて手を出せないかもしれません。

企業もそうです。物価が激しく動くようだと、中長期的な売上高の見通しも立てづらくなります。そうすると、長期的な視点での人材採用や工場建設といったプロジェクトも立てづらくなります。

このように物価の乱高下が続くと、経済活動が委縮してしまい、長い目での経済発展が阻害されてしまいます。このため、世界の中央銀行は利上げ・利下げなどを通じて、物価安定を目指しています。

なぜ「2%」目標?


FRBや日銀など、多くの中央銀行は物価目標を「2%」としています。ただ、大昔から2%を目指しているわけではありません。日銀が「2%」としたのは2013年。海外でも2%が広がったのは21世紀に入ってからです。

「物価安定」を目指すなら、「0%」でいいようにも思えます。ただ、デフレと呼ばれる物価下落状態に陥ると、経済の停滞が長引き、金融政策の対応が難しくなるとの見方が中央銀行のなかで多くあります。

このため、0%より少し高い「2%」を目指すのが適当ではないか、という考え方が広がってきたという経緯があります。経済学者が理論的に詰めた結果というより、ざっくりとした数字ながらも次第に採用が広がり、グローバルスタンダードになったというのが実態です。

なぜ「利上げ→インフレ抑制」?

中央銀行の「利上げ」「利下げ」というのは、通常、銀行同士が取引する短期金利の上げ下げを意味します。中央銀行が日々、資金を供給したり、吸収したりして、銀行間で取引している金利を誘導するのです。

金利は銀行間金利だけでなく、住宅ローン国債金利などいろいろあります。ただ、それらは個別の事情だけで決まっているわけではなく、連動しています。銀行間金利が上がれば、基本的には他の金利にも上昇が波及しやすくなります。

このため、中央銀行が利上げすれば住宅ローン金利や企業の借入金利も上がります。個人は家を買いにくくなりますし、企業は新たな攻めの経営に出づらくなり、経済活動を抑えます。経済が弱まると、高いお金を払ってでもモノを買おうとする人が減るため、インフレは落ち着きます。逆に物価が上がりづらいときは、利下げで景気を刺激し、物価を上昇させます。

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記録的なインフレ → 記録的利上げ

いま世界で記録的なインフレが起こっています。アメリカでは6月のインフレ率が9.1%(CPI)と約40年ぶりの高騰を記録。国民の不安・不満は高まり、バイデン大統領も問題視しています。FRBは大慌てで利上げし、インフレを抑え込もうとしています。

ただ、難しいジレンマがあります。さきほど説明したように利上げは景気に逆風となります。インフレ退治には利上げが必要ですが、利上げが行き過ぎると景気が悪化し、失業が増えかねません株安で金融市場が不安定になったり、企業が資金調達しづらくなる可能性もあります。

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2つの使命

FRBは金融政策を進めるうえで①物価の安定②雇用の最大化の2つを使命としています。いまは①を優先し、利上げしていますが、行き過ぎると②にしわ寄せがきます。また、①②以外にも金融システムの安定確保はFRBにとって重要です。企業の資金繰りが行き詰まるようになることは避けねばなりません。

FRBはいまは①の物価安定を最優先しています。利上げは通常0.25%ずつ実施しますが、5月には0.50%6月には0.75%も一気に利上げ。7/27の会合では0.75%か1.00%の利上げに踏み切るとみられています。このことが景気や雇用、金融システムの安定にどれほど影響を与えるかが、これからの大切なポイントとなってきます。

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次回以降、いろいろと

きょうはザックリとした総論です。まだまだ深掘りしていくべきポイントがたくさんあります。たとえば、「金利と株価の関係は?」「FRBと市場の対話」「政策金利と長期金利の関係は?」「逆イールドって?」「歴史的には?」などなど…。みなさまからのご意見・ご要望にもこたえつつ、ほかにはない「FRB入門」をつくっていきます。

7月中に何本か記事を流し、最低限のカタチにし、8月にもう少し補充して、いったん完結する予定です。

2022/7/23 後藤達也

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