テレビとYouTubeの違い
私のnoteは経済や投資の話が中心ですが、メディア論もときどき流しています。
きょうは「テレビとYouTubeの違い」という話題を起点に、「個の情報発信」について考えをまとめてみました。
テレビもYouTubeも動画コンテンツですが、いろいろ違うところもあるのはみなさんもお感じだと思います。視聴者層、出演者、スタッフ、収録設備、時間、広告主…いろいろ違うので、結果として仕上がるコンテンツにも差が出ます。
私は映像コンテンツに少し出るようになって、まだ1年ほどなので新入社員の戯言のようになってしまうかもしれませんが、一番大きな違いは視聴者層、もっというと視聴者の意識です。
◆ 受動的 能動的
テレビは「ながら視聴」が多いと思います。スマホをみながら、ごはんをたべながら、家事をしながら…。番組も、「これをみたい」といってチャンネルをあわせることもありますが、たまたま流れている番組を漫然と受け取っていることも多くあると思います。
一方、YouTubeはみずからサムネイルをクリックしたり、YouTubeのアルゴリズムにもとづいたおすすめ動画が流されます。基本的にその人の関心に刺さりやすいコンテンツ。少しマニアックであっても、おもしろければ1時間でもみますし、逆にいまいちなら数秒で別のコンテンツに移ります。
つまりテレビは受動的な面が強いのに対し、YouTubeは能動的な色合いが強いと思います。
◆「広く浅く」「狭く深く」
となると、テレビは「広く浅く」、YouTubeは「狭く深く」という意識になります。テレビはあまりに専門的すぎると、ついていけない人がチャンネルをかえてしまいます。逆にYouTubeは浅い内容だとチャンネルをかえられがちだからです。
ニュースでいえば、テレビでは限られた時間のなか、平均的な国民目線で幅広いジャンルのニュースを取捨選択し、バランスよい分量で伝えます。
一方、YouTubeは網羅的である必要はありません。「ロシア」「ワールドカップ」「FRB」など特定の話題1つだけ扱っても「このチャンネルはニュースのジャンルが偏っている」と不満を言う人はほぼいません。つまり、そのジャンルで、ほかにない視点や新しさ、深掘りが求められやすいと思います。
◆同じ100万人でも…
テレビの視聴率。最近はレギュラー番組でランキング上位にくる個人視聴率は5-10%程度が多いようです。ざっと500-1000万人がみているということになります。視聴率1%なら100万人ですね。
一方、YouTubeは短い日数で100万再生を超えるものはかなり人気といえます。
でも、テレビの100万人と、YouTubeの100万人、意味あいが結構違いますよね。
同じ100万人でも、そのなかで番組をしっかり見ている人の数はおそらくYouTubeのほうが多いでしょうし、別の放送回をみるリピーター率もYouTubeのほうが高そうです。実際、YouTubeの場合、一度そのチャンネルをみると、今後おすすめ動画でも現れやすくなります。
◆ 一長一短
そう考えると、YouTubeの100万人のほうが価値があるように思えます。
ただ、発信する側からすると、一長一短だとも思います。
私が発信している「金融情報」「金融教育」を例にとりましょう。
たとえばFOMCを素早く解説するコンテンツはYouTubeやnoteのほうが分量・時間も自由に調整できるので、向いているといえます。
一方、「NISA拡充って?」「投資、なにからはじめればいい?」といった話題はむしろテレビのほうが向いているかもしれません。
というのもこうした初歩的なテーマは、経済や投資にあまり関心のなかった人こそターゲットだからです。関心の高い人は自分からネットや書籍で調べて、行動に移しています。むしろ、「投資はやったほうがよさそうだけど、難しそうだし、面倒…」といった感じで先送りしている人にはテレビでフワッと届くほうがリーチ力があるんだと思います。
なので、私はいまのところ有料noteやYouTubeでは、あまりNISAのような初歩的な話をしていません(時間がないのが主因ですが…)。かわりにテレビなどでお声がけがあると、初歩的な話題も伝え方を工夫して、しっかり対応しています。
◆ リアルもいろいろ
同じことが対面イベントでもいえます。
証券会社のセミナーであれば、私個人のYouTubeチャンネルに近い視点で話します。幅広い学生さんに話す場合はテレビに近い視点です。
ちなみに明日、NewsPicks主催の中小企業経営者向けイベントで経済について話します。同じようなテーマであっても、強調するポイントや話すスピード、資料の使い方、などずいぶんかわってきます。
◆ 「最強のメディア」はない
「テレビとYouTube、強いのはどっち?」といった議論もおもしろいのですが、あまり本質的ではないように思います。
いろんなメディア、プラットフォームが乱立するなか、それぞれに特性、役割があり、優劣では測れない傾向がここ数年でさらに強まっているように思います。
Twitterもイーロン・マスクの買収後、急速に変化しています。プラットフォーム間の勢力図もかわるかもしれません。
10数年前まではテレビや新聞といった伝統的マスメディアの影響力が強かったわけですが、その構図はがらりと変わりました。これからメタバースのようにテクノロジーやデバイスがどんどん生まれ、変化は加速するでしょう。
発信者としてはできるだけ幅広い発信チャネルに触れることが大切だと思っています。そのうえで、視聴者・読者の関心はどう動いているのか、時代のうねりを読むことが一層重要になっていると思います。サーファーにたとえれば、どれだけ立派な肉体(コンテンツ)をもっていても、自分の居場所でじっと待ち構えているだけでは波にのれません。
もちろん新しいものがいいとは限りません。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、書籍…と伝統的メディアにもそれぞれの強みがあります。
その点、できるだけ多くの人の声を聴くことが大切だと思っています。まったく異なるフィールドで活躍する人もそうですが、私の場合、noteメンバーや学生さんといった視聴者目線の声もとても大切です。
私の仕事の理念は「国民の金融リテラシーの健全な向上」ですが、ひとりよがりで伝えるべきことを磨いているだけでは目標にほとんど近づけないように思います。幅広い方とリアルの場での接点を多く持つことで、これからの情報発信の波はどこにむかっていくのか、うまくアンテナを伸ばせればと思っています。
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