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Glider: Spectrumation 私的ライナーノーツ②  マイトな季節

昭和色濃い僕は「マイト」と聞くと連想するのは「ミスター・マイトガイ」だ。イージーな発想だと呆れるが仕方ない。すっかり擦り込まれている。そんなマイトガイなタイトルを持ったこの曲は、予想を裏切って、実にサージェント期のサー・ポール・マッカートニー風味で、聴いてるうちにミスター・マイトガイのことなどすっかり忘れてしまった。

冒頭のギターフレーズからしてブリティッシュ!それに続く無理やりなメロディも所謂ひねくれポップどころか、むしろ、俗に言う「裏の裏(苦笑)」的な自然さがある。

彼ららしい伝統的な四拍子で日曜から数え歌的手法で歌詞が進むが、ちょっと加工されたヴォイスが楽器群に溶け込み、何言ってんだかわからないのに、妙に納得させられてしまう仕掛けだ。よく歌が聞こえないからダメ…なんて言うけど、この聴き取りづらさがまったくマイナスに感じないところがとても興味深い。言葉を音として操っているかのようだ。そして突然、脈絡も無く「メイベリン、メイベリン」と唸っているが、なぜメイベリンでなくてはならないか、これは謎解きに時間が掛かりそうだ。いや、それはひょっとしたらGlass Onionなのかも知れない。みんな訳知り顔で歌詞をmake senseしようとしていたように。

この数え歌から音階に沿ったドレミファソラシドなBメロに移る直前のドラムのフレーズがどうにも「ああ、なんだっけ」な気持ちを掻き立てたが、さっきその正体は突き止めた(気になる人の興味のために言わないでおこう)。しかしこれまたGlass Onionかも知れない。当人たちがどこまでオマージュを意識しているかなんてわからないしね。

冒頭でサー・ポール・マッカートニーと書いたが、Aメロ、Bメロ、Cメロと来て中間には地下世界の呟きが置いてある。そして地上に這い出たごとく、A、Bと繰り返され、ムニャムニャとなって終わる。これ、つまりミニ・オペラだ。そう、ここで出て来るのがまたまた”Band on the Run”だ。するってえと2曲目も逃亡なんだろうか。サージェント期あるいはその前のRevolverのかったるい気分ともう半歩前の”Paperback Writer”までが頭をもたげて来るが、そんな気分から我に返る瞬間がCメロのタイトルにも使われた「マイトな気持ちが100メガトン」の箇所だ。ほら、やっぱりあれだ(笑)。ダイナマイトは昭和時代は150屯だったのだ。メロディもここだけブリティッシュの中にちょい和風を感じるのも面白い。


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