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Dolphin Saneリスニングメモ(初稿・1)

待ちに待ったMerchantこと栗田将治のソロアルバムが届いた。KEYAKI RECORDSの通信販売で購入したので、文字通り、僕の郵便箱に届いたのだ。

GLIDERがバンドとしてアルバム「Spectrumation」をリリースしたのがいつだったかなぁ、調べたら2020年9月だから3年半か。当時、「Dark II Rhythm」、「衛星アムートゥ」と合わせての3部作と言うことだったっけ。その3部作の中では配信オンリーということもあり、僕の中では一番存在感が薄いのだが、収められている曲はその3作の中では一番海外のインディーズぽい印象だった。一筋縄では行かないレパートリーもここまできたか、という感じがした。しかし、とにかくそれっきり、バンドとしてのライヴもなかったように思う。解散したわけではないと聞いていたのが、唯一の救いではあった・・・。

その後に及ぶコロナ禍によって、僕自身、本庄に行くこともなくなり、物理的に遠ざかってしまったが、今となっては懐かしくさえあるStudio DIG Sessionsをはじめ、彼らにとって、音楽を作り出し、演奏して届ける活動は途切れることなく続いていた。そんな中、将治はインスタに国内外の既成曲をストレンジなアレンジでカバーしてあげていたりしていたが、そのうち、このアルバムにも収録されることになるオリジナルチューンを発表し始めた。僕はそれがインスタに上がるたびに気になってチェックしていたのだが、気がつくと彼は葡萄畑のメンバーになっていたり、兄弟揃ってバンドHedigan’sを結成して数曲入りアルバムをリリース、そしてツアーと、「おいおい、そう言うのもいいんだけど、GLIDERを聴きたいんだよ、僕は・・・」と言うのが偽らざる気持ちだった。

そして、ついに出たのがこのアルバムDoiphin Saneだ。将治のソロ名義で、2、3の曲でコーラスとフルートが加わっているほかは、ヴォーカルも楽器演奏も1人でやっている。しかし、クレジットを見ると、作詞作曲がYusuke & Masaharuとなっていて、なるほど、歌詞は「Dark II Rhythm」から端を発するところの「Yusuke調」が全面的に支配している印象だ。僕にとっての「Masaharu調」はたとえば「オカルト」なのだが、それすら歌詞は「Yusuke調」なのかもしれない。

精神分裂症というか、それこそ、Being for Mr. Kiteのテープよろしく紙片に書いた歌詞を放り投げてつぎ合わせたかのような、突拍子のないものなのだが、これが歌として聴くと、たとえ歌詞カードを読みながらであっても、不思議とその情景に納得をしてしまう。そう、合理的な不条理とでも言いたいものだ。

さて、アルバムの一曲目は「微笑み」だが、ああ、ここに来るまで、かなりの語数を使ってしまった。僕がどれほどこのアルバムを待っていたかということを感じ取って頂ければ・・・。

その「微笑み」は僕が知る限り、このアルバムで初めて披露されたナンバーだ。CDプレイヤーのPLAYを押して、待っていると、スネアの軽い連打に導かれて始めるメロディが、いきなりドミナントマイナーへ展開する憎い仕掛けだ。そして、このイントロとは別のAメロがAll My Loving的なコード展開をみせるが、どこか「月光値千金」的、そう、オールドジャズのような親しみやすさと懐かしさが心地よい。この「懐かしさ」はこのアルバムを通じて僕が一番最初に接した感覚だ。懐かしいと言ってもキミ、昭和の懐かしさやそれこそジジジ・・・と針音がするセピア色のよくある懐古なんかではないよ。「自分が体験したことがない懐かしさ」と言って理解してもらえるだろうか。将治のヴォーカルもぽかぽかとした暖かさに包まれるような心地よさをもたらしてくる。1人で演奏をしていることもあって、サウンドアレンジも凝っている。
・・・さて、一曲目の紹介をしたところで、今回はここまでとしよう。
(続く)

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