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Glider: Spectrumation 私的ライナーノーツ⑧   エミカレプリカ

先行シングル第2弾としてリリースされた「エミカレプリカ」。なんてわかりやすい、と言うか親しみ易い曲なんだ!明るいメロディ、耳につくリフレイン。ヒット曲とはこう言うものだと言う見本のようなナンバー。人気が出るのもうなづける。

先行リリース時点では、アルバムでの位置はどこになるんだろう?と想像巡らせていたが、8曲目。LPで言ったらB面ど真ん中(5曲ずつ配置されたとして)。いい位置だ。一曲ずつ紹介しているからアルバム単位での感想がなかなか入り込む余地がないが、A面5曲が終わり、盤を返すとインストゥルメンタルの”Neighborland”の出だしの太鼓にびっくりしたかと思うと、70年代末にジャンプする”Love Scene”が来て、次にこれだ。実にいい流れ。

先行リリースで「逃亡劇」が出た時、なに、Moby⁈⁈、まさかエレクトロポップで来るのか⁇と思ったらこの70年代英国風味のROCKが出たから、僕はすっかり混乱してしまい、アルバムの全体像がどんなものになるかなんてまったく予測出来なくなった。仕上がったアルバムとしてはこの曲のあとに来る2曲がまさに”Revolver”のラスト2曲のように強烈だからここに「エミカレプリカ」が来るのは必然と言えるだろう。

さて、この曲だが、またまたLove songだ。しかし、ここに登場する主人公はロボットかアンドロイドか。咄嗟に前作の「スティール・シュガー・パイ」を引き合いに出したくなるGliderの女性像のひとつと妄想する。「スティール・シュガー・パイ」が密室的で夜の主人公だとしたら「エミカレプリカ」は天気のいい遊園地の人物と言う違いはあるにせよ、どちらも人工的な匂いがする。これと対象的なのがこのアルバムで言えば「くちびるはサルビア」に登場する女性だし、前作で言えば「サイコグラフィア」のケヤキハイツ201号室に住んでいる女性だ。こちらは妙に生々しい。とくに後者の、劇画的イメージがすごい。勿論、直接、対象の人物を歌っていない「衛星グッバイ」のような歌から想像出来る愛する人もいる。とは言え、「エミカレプリカ」の人工美は捨てがたいものがある。

楽曲で言えば親しみ易さは、矢沢永吉並みである。とくに、頭から3番目の7thコードに乗せて歌われるフレーズがえーちゃんを思わせる。しかも、歌詞を粘っこく歌っている。とくに「ガス欠しそうだ」の「ガ、スゥ、ケっツぅ」などたまらない。その前の「ななまがり」もぐっとくるが。

コード展開としては”Don’t Let Me Down”(The Beatles)やRod Stewartが好んで使いそうなC→Dmが印象的だ。ギターのカッティングもちょっとThe Facesぽい。しかし、それが、大股で歩くようなブラスバンドのようなリズムに乗っているのが愉快だ。

たしかユウスケだったか、TwitterでThe Kinksを引き合いに出してたと思うけど、エンディングに向かって繰り返しで裏声になったりするところは、彼らが一時期唱えていた”Young Adult”ならぬDavid Bowieの”Young American”を彷彿させる。そしてそこに被さってくるカセットテープのFFモードが何を喋っているのか、解明しようと色々試してみたが、いまだに解けていない。

エミカレプリカはここで聴けます。

https://music.youtube.com/watch?v=z7fX_3xK_jY&list=OLAK5uy_lS8yvdWUEbc-VF8x9RpRz7Z4QvFiGVglE




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