見出し画像

米債務上限問題とは

年明けから米国の債務上限問題がメディアで度々取り上げられている
記事によっては米国がデフォルトリスクに晒されているという内容もあり、見る人が見れば気が気でないような事態だが、そもそも債務上限問題とは何なのか解説していきたいと思います

債務上限問題は米国債シーリングとも呼ばれ、今回初めて起こった問題ではなく、以前から度々問題に上がっている
言葉の通り米国の債務が上限に達しているという問題で、日本においては問題になることはない

米国では連邦政府が国債の発行等による債務残高の上限が法律で決められており、その上限を超えて債務を増大させるには議会の承認を得なければいけないというもの
日本にはそのような法律はなく、国債の発行の上限は定められていない

米国は同法律を1917年に制定しており、リバティボンド法と言う
米大統領は必要に応じて自身で上限を引き上げることもできる

米国議会では度々債務上限の引き上げを巡って攻防が繰り広げられている
もし、債務上限が引き上げられない状態が続いてしまうと財務省内で予算が執行できなくなることで、公共機関の運営や社会保障、引いては防衛費における支出が賄えない状態となる可能性がある
また、支出が行えなくなると米国国債の利払い及び償還が出来なくなる恐れがあり、そうした事態になると米国債はデフォルト(債務不履行)となってしまう

現状では米国債のデフォルトリスクは低いと見られているが、過去にはデフォルトリスクが高まったことで米国債が格下げされたことがある
2011年、当時のオバマ大統領率いる民主党と、下院の過半数を占める共和党の間で債務削減案を巡って対立し、5月16日に財務省はデフォルト回避のため連邦職員年金基金への拠出を一時停止するなどの特別措置を実施
7月には大手格下げ会社ムーディーズとS&Pが米国債の格下げ見通しを引き下げた
その後両党で合意に達するも、8月5日にS&Pは米国債の格下げに踏み切った
これにより世界で最も信用力の高い米国債への信用不安が伝播し、世界の金融市場は混乱した

このことから米国の債務上限を巡っての混乱は金融市場にはリスクとなっているが、米国債のデフォルトリスクというよりは格下げリスクがもたらす混乱に警戒している
自国の国債を自らデフォルトさせるなど、通常起こり得ない事態ではあるが、ギリギリのせめぎ合いをすることで時の野党は与党に対して要求を通すように迫る構造となっている

政権与党が議会の可決議席数を掌握していればこのような問題は起きないが、米国ではいわゆるねじれ国会の状態がしばしば発生しており、現在のバイデン氏政権においても下院過半数は共和党が握っている

米議会は前回、2021年12月に債務上限を引き上げ、現在は1月19日にイエレン財務長官が債務が法定上限に達したと発表した
これによりイエレン長官率いる財務省は特別措置を実施
債務発行停止期間を設け、6月5日まで一部の公的年金基金への投資を停止している
イエレン長官は債務上限の引き上げを求めているが、1月30日現在の議会は合意する見通しが立っていない

共和党は債務上限の引き上げを認める代わりに高齢者向けの公的医療保険(メディケア)の予算削減などを求めている
一方でバイデン陣営は債務上限を材料とした交渉には応じない姿勢を示しており、両陣営は平行線となっている

当記事の執筆時点では2月1日にバイデン大統領と共和党マッカーシー下院議長が債務上限問題で協議することになっており、進展があるのか注目されているが、両者が合意するとは考えにくいとされている

それは共和党内の意思統一が乱れていることにある
そもそも下院で過半数を握っているはずの共和党は下院議長の選出に多大な時間を要した

本来であれば下院で過半数を握っているのは共和党なので、党内一致で臨めば議長の選出は難航しない
しかし、共和党内の最右派であるフリーダムコーカスと呼ばれる議員連盟がマッカーシー氏が議長となることに反対を表明した
これにより実に100年ぶりとなる下院議長選の再選挙が行われることになった
15回の選挙を経て、ようやくマッカーシー議長が誕生したが、その見返りとしてフリーダムコーカスの議員たちが望む政府の無駄遣い予算の削減や南部の国境警備強化、生活必需品の価格引き下げなどを実現すると表明することとなった

そうした経緯からマッカーシー議長は保守フリーダムコーカスの意向を気にしながらバイデン大統領との交渉に臨まなければならないが、民主党内での意向がまとまっていないのが現状のようだ

市場予想では財務省の特別措置の期限である6月から8月頃には支出が賄えなくなると見られており、そうした事態となれば米国債の格下げリスクが台頭してくる可能性がある

交渉が長引けば長引くほどマーケットにはリスク材料としてのしかかることになりそうです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?