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俺を止めてよ、ゲーリー。

今回は喫煙と禁煙についてだ。

俺は喫煙者だ。世間の鼻つまみ者、現代社会と逆行する愚か者共の1人。
だが今まで1度としてタバコをやめたいと思った事がない。もはや喫煙は生活サイクルの一つだ。

俺がタバコやめる。

まず言葉や心では無理だ。
禁煙セミナーに行ったところで、
「タバコは悪だ!あなたも周りも不幸になる!今すぐやめなさい。」と小一時間説教を食らって面接室を出たあと、
「ふぅ〜やれやれ」などと言いながらポケットを弄りタバコを咥える俺が眼に浮かぶ。

喫煙者を禁煙させる事は基本的にできない。もし、俺が禁煙できるとしたら物理だ。物理的に俺を止めるしかない。24時間365日、めちゃくちゃ強くて怖い外国人が俺に張り付いて喫煙を阻止する。例えばそうだな、ゲーリー・グッドリッジがいいだろう。え?ゲーリー・グッドリッジをご存知ない?

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こんなの。
別にブアカーオでも、ピーターアーツでも、ミルコ・クロコップでもいい。
怖くて強くて外国人なら。アリスター・オーフレイムやバダハリ、ヒョードルなんかも良い。
ただ、俺にとってしっくりくるのはゲーリーグッドリッジだ。

この人が徹底的に俺の喫煙を阻止する。
多分そこまでやってくれれば、禁煙は成功するだろう。怖いもん。マジで。
だって腕に「剛力」ってタトゥーが掘ってあるんだよ?
そんな人この世にはゲーリーグッドリッジか前澤社長ぐらいしかいない。

初日〜

俺(タバコを咥える)
ゲーリー「No!No smoking!」
俺「はい…。」

こんな調子だ。
怖くて吸えないが、吸いたくてたまらない。

1週間後〜

俺「ゲーリーさん、メシ行きませんか?」
ゲーリー「OK」
俺「ステーキ、美味いすか?」
ゲーリー「Delicious」
俺「この後買い物行きたいんだけどいい?」
ゲーリー「OK」
俺「このTシャツ似合うよ、ほら」
ゲーリー「 Really? 」
俺「これ、買ってあげる。いいやつだよ。supremeだから」
ゲーリー「Oh!Thanks.」
俺「でさ、相談なんだけど。いきなり全禁煙は俺もキツイよ。だから、週に一本だけ吸わせてくれよ。」
ゲーリー「NO!NO!NO!」
俺「うう…ステーキとsupremeだぞ…。」

ゲーリーグッドリッジは鋼の意思で俺の喫煙を阻止する。仲良くなって断りにくい雰囲気にしてやろうとしても無駄だ。俺は本当にタバコが吸えないのだ。

3年後〜

俺「ゲーリー、俺さ。」
ゲーリー「ドシタノ?」
俺「禁煙始めて3年経つじゃん。」
ゲーリー「ソダネ。」
俺「もう、吸いたいって思わないんだ。たぶん、今後ずっと。俺、禁煙できたよ」
ゲーリー「ソレデハ、ワタシノヤクメハ、オシマイデス。」
俺「どういう事だよ!こんなに仲良くなってさ、ゲーリー日本語ペラペラじゃん!お別れなんて嫌だよ。」
ゲーリー「ワタシハ、ツギノ、タバコヲヤメラレナイヒトノトコロへ、イキマス。」
俺「……。」
ゲーリー「ワタシモ、タノシカッタ。サヨナラ」
俺「………ゲーリー!!!」

禁煙は2つの別れだった。タバコとゲーリーと…。
俺はもう一度彼に会いたい一心で3年ぶりにタバコを買い火をつけた。

ゲーリー「NO!No smoking!」
俺「ゲーリー!!!」


ん?
あれ?
このままだと俺は禁煙できないどころか、ゲーリーグッドリッジに会いたいという理由だけでタバコを吸うキチガイ人間だ。
そして、その行為は彼が先立つまで続いた。

20年後〜

俺「ゲーリーに会いたいな!タバコ吸お!」
俺「あれ?ゲーリーがこない…。もう吸い終わっちゃうぞ。」
俺「もしもし!ゲーリーこないんですけど!」
電話口の男「ご存知ないのですか?グッドリッジ氏は先月、交通事故で亡くなりました。」
俺「嘘だ!ゲーリーは誰にも負けない…世界で一番強いんだから!」
電話口の男「彼をはねた車はボルボでした…。」

ボルボは非常に丈夫な車だ。ボルボの祖国スウェーデンでは毎年相次ぐヘラジカ衝突事故への対策として車を徹底的なまでに頑丈に作り上げている。
試しにグーグルで「ボルボ 事故」と調べてみるといい。ボルボ車にぶつかった車がペチャンコになった写真が山ほど出てくる。
自家用装甲車と言っても過言ではないだろう。

俺「ゲーリーも流石にヘラジカより強いって事はないか…。」
俺「墓参り、行かなきゃな。」

俺は家族と共にゲーリーの祖国トリニダード・トバゴに飛んだ。
偉大なる彼の名が刻まれた墓に花束を添える。
白く冷たい花弁が溢れてカリブの海風に漂う。

俺(タバコを咥える)
    「俺を止めてよ、ゲーリー…。」
    「くそ、雨だ。火がつかねえ。」
娘「おとうさん、雨なんて降って…。」

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…。


は?


バァン!
SEE YOU SPACE COWBOY…


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