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俺は壊れるのか

2014.3.11.

 畜生、また夢の話をするけど、気を悪くしないでくれよ。
 夢の中の俺は、まだ離婚してないようだ。
 そして数人の女と食事をしていて、会話を楽しんでいるのだが、そのうち、どの女も自分勝手なことを言ったりやったり、なんだか腹が立ってくる。
 その時気が付くんだね。こいつらと比べて俺の妻は、うるさいことは一切言わず付いて来てくれてたんだって。
 それで俺は、これまでのことを悔い改め、決心する。頭を下げて、言ったことのない「ごめんね」を言おうって。
 何を謝ろうとしているのかは分からないんだけど、そうしなきゃいけない、わかってもらわなきゃ、そんな気持ちが頂点に達したところで目が覚める。
 しばらく天井を見つめて「そうだ。そうしよう。」「今日、必ず謝ろう」って、まだ夢の続きをやってんだよ。
 ああ、ここは刑務所だったって気が付くのはしばらくたってからだ。
 しかもあれから20年もたってる。
 別れた妻を、まだ考えてるというには時間がたちすぎた。だから、この夢が一番うざい。そして怖い。
 現実は、すっぽり切り取られて、昔に放り投げられる。夢から覚めても夢と現実が区別できない嫌な間があること。そしてその間が少しずつ長くなってきていること。そのまま区別できなくなって、むかしに置き去られたまま戻ってこれなくなるんじゃないか?って考えたりする。
 以前、薬でおかしくなった後輩が事件を起こし、精神病院に入った。  心身膠着の状態であるため罪には問われず、町で偶然出会ったとき、俺は興味本位でいろいろ聞いた。「どうしてそんな風になったのか」と聞くと奴はこういった。
 「現実が夢みたいで、夢が現実なのかなって・・・・。」
 いまだにはっきり区別のついていない表情で、迷いながら話す奴は、もう昔の奴ではなかった。
 あのセリフが忘れられない。だって今、まさに自分がその一歩手前で苦しんでいるのだから。俺の中ではもう夢を不思議だ、面白いだとは言ってられないものになってしまっている。
 やっと見なくなってきた夢にまた苦しめられるようなって、これが一種の拘禁病ならその方が楽だ。解放されたら治るのだから。でももしそうじゃなかったら・・・・・。
俺はもう、壊れ始めているのかな。誰か助けてくれ。



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