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Space XとISSのドッキング映像がYouTuberのスタジオのようだった話

はじめに

YouTube Live等で見た方も多いと思いますが、アメリカ時間で5月30日土曜日のお昼にElon Musk率いるSpace Xが有人飛行船Crew Dragonを打ち上げました。民間の宇宙開発ベンチャーが再利用可能なロケットを作って、有人飛行を成功させるって快挙ですよね。

そして翌日、有人宇宙ステーションISSにドッキング。ドッキングの瞬間は朝早かったため見逃してしまったのですが、その後実際に宇宙飛行士がISSに乗り移るまでには結構時間があったので、YouTube LiveでISS内部の準備状況の映像を見ていました。

ハッチを開くまでに事前に決まった細かな手順がたくさんあって、きっと退屈な映像をみることになるんだろうなぁ、と最初は思っていたのですが、意外にも作業の大半がカメラの設定になっていて、自分のツボにハマり、思わず食い入るように見てしまいました。

Space XとISSのドッキングの本質的なところからかなり外れますし、映像の撮影が好きな方でも共感してもらえるかわかりませんが、せっかくなのでnoteにまとめておこうと思います。

YouTuberのスタジオのようだった

次の写真は、最終的にSpace Xの2名がISSに乗り込んで、ISS側メンバを含めた合計5名で並んだところです。乗り込んだ直後のセレモニーとして、管制センターにいるVIPと会話をする一番の見せ場。この映像からだけで、何と6台ものカメラが確認できます。まるでどこかのスタジオのよう。

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1、2、3は業務用の小型ビデオカメラに見えました。1が地上とのセレモニーの際のメインカメラになっています。2は宇宙飛行士とは逆方向のISSの内側に向けられています。3は床に置かれているようなので、もしかしたら手持ち撮影用のカメラかもしれません。

4は、レンズがいっぱい付いていたので360度カメラのようです。5はストロボがついているので、静止画用の一眼レフと思われます。

そして6。少し大きめのカメラで外観はシネマカメラのようです。もしかしてRED?と思って検索してみると、2018年の11月にREDがアナウンスを出していて、ISSでの活動を8Kで撮影するためにRED HELIUM 8K S35が使用されているとのこと。RED HELIUMの実機を見たことがないので、これがそれなのか判断つきかねますが、可能性は高いと思います。(これ以降はREDと思い込んで書きます。)

https://www.red.com/news/first-8k-from-space-nasa


ワンオペの準備がすごかった

上記の写真は最終的な設定が完了している状態です。ここまでに到る準備の映像が長々とYouTube Liveでストリーミングされていたのですが、なんとこれらの撮影環境の設定は一人で行ってました。調べてみるとChris Cassidyという人で4月にNASAからISSで作業をしているそうです。複数台の異なるカメラがあり、かつ時間も限られている中で、撮り直しのできない歴史的瞬間を撮るための環境設定って、想像するだけでも大変そうですよね。

彼は無重力でフワフワしながら、準備作業をテキパキとこなし、かつ画角やライティングも細かく調整していて、まるでプロの業者のよう。地上の映像の担当者との会話でも、カメラのバッテリーの持ち時間の懸念を指摘したり、どのオーディオの音源をエンコーダに接続すべきかを細かく確認していて、地上からの指示で動いている感じでなく、彼自身が撮影に詳しい感じでした。

下の写真は彼がREDの設定をした後、モニタを自分の方に向け、画角を調整しているところ。この後カメラに向かって何かを話していたので、恐らく自撮りしていたと推測。

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次は、Space Xとドッキングした通路を撮影するために、狭い通路にアクションカム(多分)を取り付けているところ。このカメラはヘッドバンドで彼の頭につけたりもしてました。右はLEDライト。ゴリラポッドの一脚みたいのを多用してます。

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そして、最終的にハッチが開いてSpace Xのメンバが乗り込んでくるのを待っているところ。左に大容量バッテリー付きのLEDライトがあります。これもゴリラポッドの一脚みたいので支えています。よく考えてみると無重力だからこの装備で支えられるんですよね。地上だったら重さで簡単にクシャってなりそう。

このシーンの後、Space Xから乗り込んだメンバと5人が横に並んだ喜んでいるのですが、ChrisはこのLEDがメインカメラに映り込んでいるのが気に入らなかったようで、速攻で位置を変えていました。映像の細かいところまでこだわっている様子が伺えます。

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ちなみに上の写真で彼が右手に持っているマイクは、管制センターと交信用のものではなく、セレモニーのインタビュー撮影用のもの。ワイヤレスになってます。

これに加えてChrisのジャケットにはピンマイクが3つ付いてました。使用用途は謎です。彼の体からケーブルが出ていないので、これもワイヤレスなのかな??

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最後に

思い返してみると、宇宙開発とカメラって密接につながっていますよね。例えば月面着陸で使われたハッセルブラッドとか。宇宙という想像もつかない過酷な状況の中で、確実に記録を残せるよう高度なカメラが開発されたり、それで撮られた写真で感動したり。


今回の映像を見てると、だいぶ時代が変わったなぁという印象です。民生品とほぼ同じようなものが使われていて、かつビデオカメラが主流になっていたり。これから民間の宇宙開発が進み商用化が加速すると、単純な記録だけでなくYouTubeやその他のPR用に使えるレベルの映像が必要になってくるかもしれませんね。宇宙飛行士にもハイエンドなYouTuber並の撮影技術が必要になるかも、と本気で思いました。

このYouTube Liveの動画はアーカイブとして残っているので、興味ある方は下のリンクからみてみてください。ちょうど良いところから再生するようになっています。


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