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Rivianって何?ーシリコンバレーでRivianに遭遇


はじめに

Rivianという電気自動車メーカーを聞いたことがありますか?アメリカのスタートアップで電気ピックアップトラックを開発している会社です。AmazonやFordが出資したことで話題になりました。また今年11月のIPOで高値をつけたこともあり次のテスラとして注目を集めています。

12月の初めのことでした。サンフランシスコに出かけた帰り、フリーウェイをシリコンバレーに向かって走っていたところ、前方に見たことがないピックアップトラックがいることに気づきました。近づいてみるとなんとRivian!慌てて撮影したのでフロントガラスにピントがあってしまい残念な写真になってしまいましたが、Rvianの特徴的な横一文字のブレーキランプは確認できます。多くの自動車メーカーの多種多様なモデルが走っているアメリカの道に調和していながら、特徴的なデザインで個性をアピールしている感じがとても印象的でした。そろそろ出荷が始まったらしいとは聞いていましたが、まさかこんなに早く遭遇するとは思っていなかったのでびっくりでした。

せっかくの機会なので、今回はこのRivianについて調べてみたいと思います。

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Rivianについて

Rivianはイリノイ州のノーマルに工場を持ち、現在の本社はカリフォルニア州のアーバインにあります。元々はCEOのRJ Scaringeが2009年にフロリダでMainstream Motorsとして創業し、2011年にRivian Automotiveに名前を変えています。彼はMITで機械工学(Automotive)のPhDを取得しています。

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開発しているのはR1Tという名前の電気ピックアップトラックです。彼らはこれを“Electric Adventure Vehicles“と呼んでいます。Webサイトを見ると”A truck built for whatever you call a road. Your electric adventure awaits.”と書かれていて、道があるところはどこでも行けるアドベンチャーな電気自動車というコンセプトのようです。平日は通勤用にテスラを使っている人が、週末や休暇に山やビーチへ遠出してアウトドアやキャンプを楽しむようなユースケースでしょうか。

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Rivianのサイトを見てると舗装されていない山道を駆け抜けていく動画や、アウトドアを楽しむ写真が溢れています。中央部に車体を貫通するトンネルのような荷物用のスーペースがあり、ここに“Camp Kitichen”という電気コンロ付きのキッチンテーブルがを収容することができます。山道をドライブした後、このキッチンテーブルを引き出せば、いつででもどこでもすぐに料理ができます。なんだかワクワクしてきますね。

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このR1Tは9月中旬にイリノイ州ノーマルの工場で生産が開始され出荷が始まっています。またRivianはこのR1T以外にもSUVタイプのR1Sを開発してます。こちらはアドベンチャーな感じを残しつつもう少し街での走行を意識した感じのデザインになっています。RivianはR1TとR1Sを合わせて既に7万件以上の事前予約を受けていているとか。注目されていますね。

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電気ピックアップトラック

日本ではピックアップトラックという車に馴染みがないかもしれません。トヨタのハイラックスぐらいでしょうか。アメリカでは普通の乗用車やSUV等についで人気のある車種で、17%程度のマーケットシェアがあると言われています。

私の住んでいるシリコンバレーでもピックアップトラックをよく見かけます。荷台にオフロード用の四輪オートバイを積んでいたり、キャンピングカーを牽引したりとレジャー用途のほか、ホームセンターで家の補修や園芸に必要な大きな部材を購入して荷台に乗せているDIY用途の人が多いようです。もちろん日常で使用する車として使っている人もいて、週末のショッピングセンターに乗り付けて、デートを楽しむカップルを見かけることもあります。パワフルで多目的に使えることから、アメリカで人気があるのかもしれません。

電気自動車というとアメリカではTeslaの存在が圧倒的に大きいです。セダン・ハッチバックのタイプだとモデル3、SUV・クロスオーバーだとモデルYが人気です。これらの売れ筋のセグメント、特にSUV・クロスオーバーに対しては、世界各国の主要自動車メーカーがアメリカ市場に電気自動車のモデルを投入して、競争が激化しています。

このような中でRivianのようなスタートアップが電気自動車市場に参入しようとすると、2つのアプローチが考えられます。1つ目はTeslaが成功している売れ筋の市場に向けたプロダクトを開発する。Lucidがこれにあたります。もう1つはTeslaがまだ参入できていないがポテンシャルのあるセグメントを狙って開発する。これが電気ピックアップトラックの市場であり、Rivianが狙うところでしょう。

とはいえアメリカでは既に電気ピックアップトラックの市場においても競争が始まっています。既存の自動車メーカーを含めて開発が進んでいて、生産・販売開始が間近の状態です。電気自動車のためパワフルな走りが可能であることに加えて、電池技術の向上で走行距離が伸びたことに伴いピックアップトラックのニーズに応えられるようになってきているためと考えられます。

まずはTeslaのCyber Truck。2019年11月に発表がされ、斬新で未来感のあるデザインで、頑丈さを全面にアピールしたピックアップトラックとして話題になりました。2022年に生産開始になるようです。

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続いては、GMC HUMMER EV。昔話題注目を集めたハマーのリムジンを思い出させる強さと高級感を漂わせる電気ピックアップトラックになっています。TeslaのCyber TruckとRivianのR1Tのちょうど中間くらいの感じでしょうか。12月から生産開始されたそうです。

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そして大御所FordのF-150 LIGHTNING。FordのFシリーズはアメリカのピックアップトラックのマーケットシェアNo.1で、F-150 LIGHTNINGはこの人気シリーズの電気自動車モデルです。今年5月に発表されて、2022年に生産開始と言われています。個人ユースのほか各種業務用のトラックとしての展開も予定されています。

Fordは当初Rivianへの投資も行い自社のラインナップとしての展開を狙っていたようですが、方針を変えて電気ピックアップトラック市場は自社プロダクトで行くことにしたと報道されています。

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またシボレーも電気ピックアップトラックを1月のCES 2022で発表予定です。まだテザーしか出ていませんが、ピックアップトラックのマーケットシェアNo.3のSilveradoをベースにした電気ピックアップトラックです。こちらも人気が出そうですね。

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Rivianの魅力

このようにアメリカで競争が激化している電気ピックアップトラックのマーケットですが、Rivianの魅力は何でしょうか?

Rivianに興味を持ってからRivianのWebサイト、YouTube、Instagramを眺めていたのですが、スタートアップということもあり、既存の自動車メーカーとは全く違うコーポレートカルチャーであることをアピールしている印象を受けました。もちろん車のデザインや性能を紹介したものも多いのですが、それだけでなく従業員やその家族、またプリオーダーをした人を集めたイベントの紹介等も多くみられ、人とのコミュニケーションを大事にしている会社であることがわかります。新しいコンセプトの自動車を作ろうというだけでなく、どのようにすればオーナーとなる人達により良い経験を提供できるかに力を入れています。

例えばプリオーダーをした未来のオーナーに対してRivian Guidesというプログラムを提供しています。これにより各オーナーに対して専属のガイドとなるサポートメンバを割り当て、個々の質問や問い合わせにきめ細かな対応をするものです。サポートメンバはイリノイ州のノーマルの工場にいるため、どんな質問がきてもエンジニアリングやデザインをはじめ社内の全ての部署にすぐにアクセスし、迅速に回答を提供ができるとのことです。

ここまでの手厚い対応をするのはなかなかコストもかかり大変なことだと思いますが、プリオーダーする人はRivianのサポーターであり、こうした人たちがRivianから良い体験を得ることで、より良いオーナーのコミュニティができあがることを狙っていると考えられます。


TeslaやLucidはショッピングモールにショールームを作り、実際の車を見たり触れたりできる場を提供していますが、Rivianはこれとは異なるアプローチをとっていてます。彼らは車の展示や販売を目的としたショールームというよりも、Rivianのファンやオーナーが集うことができるオープンなコミュニティースペースを作ろうとしています。第1号はカリフォルニア州のヴェニスで、Venice Hubと名付けられました。ここにRivianのファンたちが集い、仲間を作ったり、ワークショップに参加したり、ガーデンでリラックスしたり、新しいアイデアを議論したりする場にしていくそうです。今後このようなコミュニティースペースは郊外に増やして行くとともに、将来的にはアウトドアでアドベンチャーを感じながら楽しめる場所にも展開していく予定です。


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アメリカでは企業の企業は会社のロゴ入りのグッズ(パーカー、Tシャツ、キャップ、マグカップなど)を作るのが好きです。会社に採用された時、開発したプロダクトをリリースした時、年末のパーティーの時などに従業員に配ることで、チームに属している一体感を高めるのが狙いです。最近はコーヒーショップやビールのブリュワリー等の小さな店でもロゴ入りグッズをカスタマに対して販売するところが増えてきました。お気に入りの店のロゴ入りのものを身につけることでサポートしている感じが高まり、カスタマーとのコミュニケーションの一つと言えるでしょう。

RivianのWebサイトも“Gear Shop“という名前でロゴ入りTシャツやキャップを販売ページが設けられていてます。これがなかなか充実していて、とても好感が持てました。Rivianがオーナーやファンを大切にしていることが伝わってきます。

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Amazonの配送用バン

Rivianは個人ユースのR1TとR1Sに加えて、業務向けの電気自動車の開発しています。これは荷物の配送用バンで、自動車の本体だけでなく、配送・配車システムのソフトウェア、充電・給電のシステムなどを含めてFleetという配送業者向けのソリューションとなっています。2021Q4予定となっていますので、そろそろ出荷が開始されると思われますが詳細は不明です。最近のニュースによるとこの配送用バンはAmazon以外の業者にも販売していく方針になったとのこと。RivianのIPOで期待される結果を出すには、さらに販売台数を増やす必要があるということでしょうか。


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まとめ

今回はRivianについて調べてみました。アドベンチャーをテーマにした電気ピックアップトラックやベンチャーらしいオーナーとのコミュニケーションの方法など、旧来からの自動車メーカーとは異なる全く新しいタイプの自動車会社だと思います。

Rivianはこのまま電気ピックアップトラックの市場をリードしてCEOのRJはElon Muskのようになっていくのでしょうか。またFordやシボレーといった老舗の自動車メーカーとはどう戦っていくのでしょうか。今後の自動車業界がどう変わっていくかを理解するためにも2022年はRivianから目が離せません。

気になるのはアドベンチャーとしてワクワク感のある電気ピックアップトラックのイメージと業務用のAmazonの配送用バンの方向性がいまいちしっくりこないところです。ビジネスを広げて会社を成長させるには両方の市場を狙う必要があるのは理解できますが、そうすることで今あるスタートアップらしいコーポレートカルチャーが変わらなといいなと思います。

追記

RivianのR1T電気ピックアップトラックの詳細を知りたい方には、MKBHDのレビュー動画の視聴をお勧めします。MKBHDは人気YouTuberで、ガジェットや電気自動車のレビューに定評があります。これまでにテスラのイーロン・マスクや、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグなどとの対談も行ったこともあります。このRivianの動画でも彼の鋭い視点でフェアなレビューをしています。



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