「貴女とエスケイプ」
真夜中。
君を乗せた僕のcoupéがカーブに差し掛かった時、不意に手元のsmartphoneが鳴り響いた。
判っている。
彼女からの電話だ。
助手席の君は不安げな表情さ。
僕はアクセルを踏み込む。
急加速に伴うGが、僕達を引き戻そうとするかの様に、シートへと身体を沈み込ませる。
ライトに煌く貴女の横顔はあまりにも美しく、僕はつい理性を忘れてしまいそうだ。
いや。きっと既に忘れているのだろう・・・
ただの友達だった筈の君が、今は僕のcoupéの助手席に座っている。
手元のsmartphoneはまだ鳴り響いている。
『僕達の逃避行』
徐々に凪の夜風が車内に感じられるようになると、それは目的地が近い証拠だ。
いつしか僕のsmartphoneは沈黙し、助手席の君は黙りこくったまま。
更にアクセルペダルを踏み込む。
彼女には申し訳ないが、今の自分の気持ちに嘘はつけない。
湾岸沿いに佇むHotelへと僕のcoupéは滑り込む。
70年代のアメリカ西海岸をイメージしたそのHotelの名は『Hotel California』。
白を基調とした外観が実に良い感じに薄汚れている。
退廃的な僕達にお似合いじゃないか?
駐車場に車を停め、frontでcheck inを済まし、ロビーを抜け、エレベーターホールに向かうと・・・
そこに彼女が立っていた。
「カツ、カツ、カツ、カツ、」
立ちすくむ僕達へと、ヒールを鳴らしながら向かって来る彼女。
徐ろに右手を振り上げると僕を殴った・・・のではなく、僕から君を引き離した。
抱きしめ合う彼女と君。
「貴方の本当の気持ちが分かったわ。貴方とはこれで終わりにしましょう。
これからは私を本当に愛してくれる、この子とお付き合いするの。
今まで本当にありがとう。
お元気で。」
エレベーターのドアが閉まり。
二人は消えていった。
そうか。そういう事か・・・
エレベーターの前、途方に暮れる僕を哀れむかの様に、frontの男が視線を投げかける。
嗚呼そうさ。僕はブルージーン・ピエロ。
馬鹿な道化師さ。
「シクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシクシク・・・・・・・
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「エスケイプ」 稲垣潤一
作詞・井上鑑
作曲・筒美京平
これまた最高に素晴らしい組み合わせ!!♫
実際、筒美京平先生はこの「エスケイプ」の他に、有名な作品を連発しておりますネ(^ω^)♫
それはまた後日に⭐️
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