『ゆあと恋する7日間!?〜はちゃめちゃ酩酊ラブハリケーン!!〜』第三話
ーライブの始まるSEが鳴り始める。
ロックサウンドの中を照明が照らしていき、スモークが焚かれ、ステージに靄をかける。
会場の人間たちの熱気が一気に上がっていくのがわかる。歓声を上げる人、ペンライトに光を灯す人、奇声を発しながら前に突っ込んでいく人。たくさんの人たちがこのライブを楽しみにしているのかと思い、自分もその1人になっているのがわかった。
体温が少しだけ上がる感覚、演者じゃないのに少し緊張しながら、左足が無意識にリズムを刻み出す。
自分がステージになっていた頃のことがフラッシュバックするが、きっと大丈夫だと思った。
しばらくすると、メンバーたちが登場してきた。
低身長で、髪が長い女の子。僕にビラを配ってくれたゆあちゃん。綺麗な金髪、というより、蛍光色の黄色?の髪の会社の後輩つきのちゃん。黒髪に赤色のアクセントがある少し背が高めな女の子、そして最後に、僕の想像するアイドルとは最もかけ離れている、銀髪でスタイルが良いショートカットの女の子。
全員が揃って、曲が始まろうとする。
フロアの人間たちの熱も最大限に上がっているのがわかる。
ーそれにしても、ゆあちゃんとつきのちゃん。本当にアイドルをやってるんだなぁ。と再認識した。
そこで僕の目に留まった最初の女の子を見て僕は驚愕した。
『ひなた…ちゃん???なんで…??』
そう、どこからどう見ても、ひなたちゃんなのだ。ひなたちゃんは、僕の年の離れた兄の娘。姪である。
最近は会ってないけど、小さい頃から僕の後ろをついてきていたから、見間違えるはずもない。
僕の頭が混乱しているのがわかった。
ーーーーー時は10年前に遡る
『ひなたね!大きくなったら!いろんな人を笑顔にする仕事するの!!』
当日10歳にも満たない彼女が、そう宣言していたのを思い出した。
『じゃあ、叔父さんは、そんなひなたちゃんを応援するよ!』
その答えに対し、屈託のない笑顔でひなたちゃんは笑っていた。
まさか、あのひなたちゃんの目指した未来が、アイドルだったとは…。
確かに笑顔は素敵だし、昔から天真爛漫で、親戚の中ではアイドルのような存在だった彼女。
妙に納得してしまった自分がいたことにも驚いた。
『そうか、あのひなたちゃんももう大人なんだなぁ。』そんな親御目線で彼女を見つめているが、彼女はまだ僕に気づいていないみたいだ。
ステージでは、ただ、ゆあちゃんがこちらを見て笑っている。
その隣に立つ人に目をやると、もっと驚くべきことに気がついた。
『え…?みうちゃん…?みうちゃんじゃないか…。』
つづく…。
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