【特許研究】シグマ35mmF2

出願者株式会社シグマ・出願2020年4月8日・公開2021年10月14日


「正・負・正」タイプのインナーフォーカスレンズ、一枚の非球面レンズのみからなる第2群がフォーカスを担う

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実施例
・33.81mm F2.07,画角33.47度→公称35mm F2.0の範囲内
・像高21.6mm→フルサイズ用
・バックフォーカスが短い→ミラーレス専用
インナーフォーカス式
・「正・負・正」で中央の負の第二群フォーカス群第一・三群は像面に対して固定(=カメラや鏡胴に対して固定)
・フォーカス群は1枚のレンズのみからなるが非球面レンズととして収差変動を抑制。

広角レンズ(あまり画角が広くないもの)の設計アプローチとしては構成の複雑化が容易で高性能化に有利なレトロフォーカス型レンズ構成からのアプローチと、バックフォーカスの制約で構成の複雑化に限界があるもののコンパクト化に有利な対称型レンズ構成からのアプローチがありますがこの光学系はどちらかと言えば後者ですね。ミラーレス用なのでバックフォーカスの制約が緩く、焦点距離も極端に短いわけではないので対称型からのアプローチが選択されています。後群に大きな負レンズを配置し全体としては「(負・正)・負・(正・負)」の対称型としてはそこそこ複雑な構成になっています


設計の要点は


・コンパクト化に有利な対称型構成からのアプローチ
インナーフォーカス式で、前群となる第一群・絞りユニット・後群となる第三群が鏡胴に対して固定されているので構造の単純化と防塵防滴化が容易
フォーカス群が一枚のレンズのみからなるので、AFユニットの小型化と高速化が容易


収差特性

文献には以下の収差図が記載されています。収差が0に近いほど垂直な直線に近づきます

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球面収差はごく小さく(グラフのスケールの問題もありますが)、光束の外縁から中心まで良好に補正されています軸上色収差や球面収差の色差も少なく、収差の形状も曲がりが少なくまっすぐに立った形なので高解像でボケの縁付きや不自然な色付きがなく、癖の少ないボケ味が期待できます
像面収差(像面湾曲と非点収差)は、非点収差(ΔSとΔMの差)が小さく、画面端へ向けてΔSとΔMが寄り添うようにずるずる像面湾曲が大きくなっていくタイプ。このタイプの像面湾曲は画面中央から外縁へ向けてボケが連続的に少しずつ変化していくことになるのでボケ味は比較的滑らか(コマ収差も影響するので一概には言えませんが)。画面の四隅では特にメリジオナル像面の結像位置が画面中心と比べて0.25mm程度離れてしまい解像度の低下はそこそこ大きそうです、後述の歪曲収差を除けばこの光学系最大のウィークポイントと言えるでしょう。

歪曲収差は非常に顕著な樽型で、カメラ側補正が前提。歪曲の形状は外縁に向けて単調にマイナス方向に増大(=樽型傾向が強まる)タイプなので、陣笠型歪曲のような複雑で不自然なディストーションに悩まされることはなく画像処理による補正が容易なように設計されているようです。

コマ収差・周辺減光などは文献の収差図からは読み取れないので不明です

歪曲収差の補正を放棄する代わりに、コンパクトさ・防塵防滴・高速AF・高解像・自然なボケなど多くの長所を持つ光学系と言えます







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