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『怪物』を見て。



(呼称は全て呼び捨て、又、ネタバレ含む。ご了承下さい。)
まず私がこの映画を見たいと思ったのが、監督、是枝裕和と脚本、坂元裕二というところ。
これの制作発表があった時から、もうそれはそれは。
是枝監督と坂元さんですよ!この二人が組む事あるんだ!
是枝監督は基本どの作品も自分で脚本書いているのが殆どで、それをあの坂元さんが脚本を書いたというのが、楽しみでしかなかった。

そして実際に映画を見て
『自分の見てるもの考えてる事がいかに浅はかであり、未熟。』
だと非常に考えさせられました。面白かった。

(ここからずっとネタバレ)
正直私はずっと『星川依里』君が父親からの虐待の腹いせに、主人公の『麦野湊』君を虐めてるってことでしょ?って思って見てたら全然違ってたし、逆に私としてはこの内容で自分の心が凄く救われた気がした。

最初、母親目線で見てた時はやっぱり安藤サクラ目線になるし、安藤サクラは何も悪くないし間違った事言ってないから共感でしかなく、それこそ瑛太役のほり先生なんてモンスターでしか無かったし、校長先生もいくらお孫さん亡くしたからっておかし過ぎるだろって違和感でしか無かったけど、徐々に視点が変わると明らかになっていくんだけど、この映画の辛いところって見てる人からはどんどん明らかになるけど、実際に登場人物からしてみたらすれ違った思い、見方のまま進んでいくっていう、見終わった後にそれぞれの視点から誤解していた部分は解決できたのだろうか?取り返しの付かないこともあるけど、それなりにお互いがちゃんと謝ったりして理解できたのだろうか?という、モヤッとした思いは残ったまま見終わることにはなるんだけど、この映画を見てて思うのは、人の本当の姿、考えてる事って全部が全部分からないし、子供の自衛の為の咄嗟につく嘘って良くあるし、大人はそれに振り回されるし、とにかく私が思った1番の怪物は中村獅童役の星川君のお父さんだったなと。
あの人が全てをかき乱し、依里君を傷つけ、湊君を苦しめたのだと。
(あのお父さんも奥さんに男を造られて逃げられたという可哀想な人と言えばそれまでかもしれないけど、それでも、酒に溺れて子供の世話もせず、暴力を振るっていいわけではない。)

また、イジメをしていたクラスの男の子達。正直、腹立つわー。
なんでそんな嫌がることするの?!嫌がること言うの?って思うけど、昔も今も絶対に居る。
人を貶して自分の方が上なんだと皆んなに示さないと気が済まない。
その子はその子で家では自分を認められてないってことがあったりするのかもしれないけれど。
おちゃらけてみたり、目立ったりして皆んなに面白いヤツとか見てもらいたいって思ってるのかもしれないけど、正直、面白いって思ってるのお前だけだからってのあるよね。
周りの皆んなは(やられてる本人も)不快感でしかない。
でも当の本人達は本当にただふざけてるという認識でしかない。
だから罪の意識が全くない。
大抵こう言うのがいじめっ子になったりするんだと思うし、いじめが無くなることが無い無意識の攻撃。

後、東京03の先生も自分の保守で一杯一杯過ぎて、やることなすこと全部間違ってる。
でも何歳になっても、こう言ういつまでも子供みたいな対応しかできない人も居るよなーって。怒られるからとにかく謝っておこう。隠しておこうみたいな。

子供って大人よりも純粋な分残酷だったりするし、同じように自分達も子供から大人になったはずなのに、いつの間にか子供の考えてる事は全然理解のできない分からない大人になってしまったのだと、自分の事を当てはめて考えていた。

大人になって分からないと言うことは、ある意味恐怖なのだと思う。
だから不安が押し寄せてきて恐怖に取り込まれた母親はもしかしたらと、最悪なケースを考えてしまう。
子育てとは赤ちゃんの時から常にこの子を死なさないように育てなければならないと言う目に見えないプレッシャーに常に追われていて、母親は不安と背中合わせで子供を見守る。それが毎日、何年、何十年と続く。
度合いやケースは違うけども親の不安と恐怖は後を尽きない。

子供達が自分の成長と共に心が不安になると同時に、大人に隠す事がいろいろ増えてくる。だから大人からは見えなくなる分、不安がつのる。

子供達は自分の好きな事をひたすらしていていい年齢では無くなってしまった事に落胆と失望を覚え、そして、改めてそれを求めてるだけなのに。

子供の行動に大人の考えを差し込んで考えるようになってくると、余計子供達の行動が見えなくなるのかもしれない。いわゆる大人の物差しで考えると、基準がブレるから、何を考えてるのか曇ってくる。

子供達の姿はただ、ラストの草むらの中を駆け抜ける純粋な姿のままなだけなのに。

映画の疾走感のあるラストは好きだけど、この子達の今後を考え出すと、心のモヤモヤを拭う事はできない。物語の中の状況は何も変わってないのだから。
(瑛太が状況に少し気が付いたというのはあるけれども。)

✳︎伏線の意味がよくわからなかったもの。
・話し合い中。瑛太が飴を舐めるのは高畑充希がくれた飴だから落ち着かせる為か。
・校長が孫との写真をわざわざ安藤サクラに見えるように置き直して確認していたのは何故か。(同情を買おうとしただけか)
・下駄箱のガム取りは自分の汚さを落とすように学校を綺麗にしようとしていたのか。
・瑛太が屋上から飛び降りようとした時に何を見たのか。(おそらく校長と湊の演奏風景を見たのか?)
・女の子達はなぜ先生がやったって言ったのか。(自分達が傍観者だったのを罪の意識か。また、ほり先生がいじめの実態を把握してない事への警鐘か)


映画を見てから少し期間を置いて何度も書き直したりしたけど、やっぱりまとまりのない感想になってしまった。

今日あたりにでも、シナリオ(小説)がこれから来るのでもう一度それを読み直して、まとめた感想にしたい。
色々、見終わった後も余韻で考えて、何か言葉を残したいと思える作品でした。

以上
ラン丸


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