たもん

米津玄師

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最近の記事

米津玄師「首なし閑古鳥」

初めてこの曲を聴いた時、何も感じ取ることができなかった私を恨んだ。 他者と生きることが難しい人間に、それでも他者と生きていく素晴らしさをこんなにも優しく説いているのだ。 それに気がつかずにここまで生きてきてしまったことに呆然としている。 12年前、高校生だった私は未熟すぎたんだな、と後悔するばかりだ。 あの時、人間的に成熟した状態でこの曲に出会えてたら、楽しい人生を送れただろうに。 アラサーの私が12年越しに「首なし閑古鳥」から感じたことをつらつらと書いていく。

    • 米津玄師「ゴーゴー幽霊船」

       映画「日日是好日」で、主人公典子は世の中には「すぐに分からないもの」と「すぐに分からないもの」の2種類があると言っていた。 この映画を見た時、わたしはこれを「まるで米津玄師楽曲のようだな」と思った。 米津玄師楽曲の中には、歳を重ね、人生経験をある程度経たからこそ響くものがある。 「ゴーゴー幽霊船」もその一つだ。 米津玄師「ゴーゴー幽霊船」米津玄師「ゴーゴー幽霊船」は、歌詞の詳細な意味を理解しようとすると、さまざまな解釈が生まれるような作りになっている。 リリースさ

      • 米津玄師「caribou」、絵本「幸せな日々」

         「caribou」は初めて聴いた当時も、今も「めっちゃ喧嘩してるやん・・・」という感想で一貫している。 言葉が弾丸なら、銃口は一周回って言葉を発する口なのだなとか、細かい面白さはあるが、一旦ここではそこは割愛する。  今回話したいのは、曲そのものよりも、この曲とリンクした絵本「幸せな日々」の方である。 「幸せな日々」は米津玄師公式ホームページで読める絵本であり、1stアルバム「dioarma」に収録されている「caribou」はこの絵本に出てくるカップルの喧嘩ソングだ

        • 米津玄師「街」

          はじめに 私が米津玄師の曲を推し始めて、ついに12年を超えてしまった。 この12年で私も人並みには人生経験を積み、以前よりも曲を解釈する力がついた、はず。以前聞いた時にはピンとこなかった曲も、今なら理解できるかも。 そんな今、ひたすら米津玄師曲オタ活に狂い続けた私が、もう一度、米津玄師の曲を振り返ってみようと思う。 最初に言っておくが、これより始めるは曲解釈ではなく、私の個人的な感想がつらつらと並ぶだけの振り返りである。 様々な情報から深い解釈をする、のもひとつやって

          ラストマイルを見た

          ベルトコンベアは止まらない。人が落ちてこようが、人が命を落とそうが、誰かの「欲望」のために。 「2.7m/s→0  70kg」  作中では人間の異常なまでの利便性の追求を象徴するワードとなっているが、果たしてこれは物流の業界だけであろうか?  私は医療の現場で毎日毎日、忙しく、日々疲れ、クタクタになるまで働いている。 医療の業界は本当に逼迫していると思う。 給料は上がらず、人は増えず、どこの病院も赤字経営。 それでも医療の質は保たなければならないし、ミスは許されない。

          ラストマイルを見た

          ちょっと思い出しただけ

          『ちょっと思い出しただけ』を見た。 感想を書きたいような、書きたくないような。 映画を観た感想として誰かに話したいことがあるような、ないような。 いやほんとはあるんだろうけど、1番口にしたいことは、自分の中のことすぎるような、そうでないような。  誰にでもキラキラと輝くような、忘れられない瞬間はある。 まだないとしても、それはきっといつか訪れるし、あとからあれはそうだったのだと気がつくのだろう。 一瞬は永遠。 日々は忙しいから、永遠の思い出を忘れてしまう。でも、ふ

          ちょっと思い出しただけ

          虎に翼

           昔から理解できない価値観が至る所にあり、それに阻まれて生きてきた自覚はある。 それは私が女だからで、世界をよく理解していないからで、どこから春が巡りくるのか知らなかったからだと思う。  虎に翼はそんな「差別による言語化できなかった辛さ」を言語化し、辛かったと感じる理由を提示してくれたと思う。 何が辛かったのか、理由を知るだけでも救われる人は大勢いるだろう。 今、SNSでは虎に翼を見た感想として「私も同じような体験をした」「母が同じ目にあっていた」など個人的の体験がよく書

          人間をやるのに疲れた

          人間をやっていると疲れる。人並みに仕事はしなければいけないし、家事もしなければいけないし、それなりに人付き合いもしなければいけない。 私レベルのめんどくさがりやになると、そもそも人間の形を保つことがめんどくさい。 毎日風呂に入って、飯を食って、寝る準備をして、なんとか寝ついて、朝起きて、また飯を食って、化粧をして、家を出きゃいけない。このルーティンがもはやルーティンではない。一個一個が「人並みでいる」という対価のもとに成り立つ労働。 労働は罰らしいが、いったい私が何をした

          人間をやるのに疲れた

          家族の形(離婚しようよ、を見た)

           小さい頃、ラムネ瓶のビー玉を取ろうと思ったことはないだろうか。これがなかなか取り出せない。ああでもない、こうでもないと、試行錯誤を繰り返す。ついに瓶を割る。だが、瓶から取り出せばそれはもうただの、なんの変哲もないビー玉なのだ。その価値はたちまち下がってしまう。  Netflix「離婚しようよ」を観た。最終話まで見た時、脳裏によぎったのは坂本裕二脚本「大豆田とわ子と三人の元夫」で見た家族像だった。  坂本裕二といえば、近年は「カルテット」「anone」「大豆田とわ子と三人の

          家族の形(離婚しようよ、を見た)

          空想が繋ぐもの(君たちはどう生きるか)

           スタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』を見た。エンドロールを見たとき、ここ最近で私が体験してきた事柄のひとつひとつが、線となる感覚に鳥肌がたった。遡ること2023年6月、私は「米津玄師2023TOUR 空想」に参戦した。ライブのMC中、米津さんは自分が幼い時によく空想をしていたこと、曲を作る時は物語を空想をしてから作ることをおっしゃられていた。その時は音楽だけでなく、漫画やイラスト、動画まで作ってしまう想像力豊かな米津さんらしい言葉だなあなんて思って聞いていた。ファイ

          空想が繋ぐもの(君たちはどう生きるか)