観客のいない世界で

Kリーグが開幕したり、ブンデスも正式に再開が決まったりと少しずつだが動き出しているフットボール界。

しかし、この状況下でスタートする理由は決してポジティブなものばかりではない。一番はリーグを成立させないと潰れてしまうクラブが出てしまうからだ。特に欧州の4大リーグと言われるリーグの放映権料は非常に大きく、これが吹き飛べば潰れるクラブが出るのは容易に想像できる。感染リスク0の状況でスタートしたいのがどこのリーグも本音だろうが、それを待っていられないのだ。

今回開幕と再開にあたって、両リーグで共通していたことがある。

”無観客”試合ということだ。


無観客でやるプロの試合

無観客といえば思い出されるのは2014年の浦和vs清水の試合。選手とベンチからの声しか聞こえない異様な感じは、テレビ越しからも伝わってきた。しかし、このときはあくまでいくつかある試合の1つであり、特別な空気を楽しむ余裕があった(少なくとも観る側には)。

しかし、今は観客を入れていつ試合ができるようになるかはわからない。今年なのか。来年なのか。再来年なのか。それとももっと先なのか。本当にわからないのだ。

昨日DAZNにあった16-17シーズンのバルサvsPSGの試合を観た。この試合は2nd legで、1st legではパリが4-0で勝っている。少なくとも無失点で4点を獲らないとイーブンになれないという状況は絶望的に近い。勝つ確率は限りなく0に近いように思う。

しかし、結果は6-1でバルサが大逆転。バルサが勝ち抜けるのは覚えていたが、ゲーム展開は結構忘れていたので普通に驚きながら観ていた。

では、なぜバルサは勝ち抜けたのだろう?戦術?パリが前半受け身になったから?パリがチャンスを決め切れなかったから?まぁ、いろいろあるだろう。

だが、この試合を観た人が誰しも思うであろう勝因の1つがある。”観客(サポーター)”の存在だ。

カンプノウが超満員で、声援で後押しをする。あの空気作りは、バルサにとっては心強く、パリにとっては平常心でいるには難しい空気だったと思う。

しかし、無観客であったら、今回のようなことが起きたのだろうか?と疑問に思った。もちろん可能性が0ではないが、戦力差が大きくかけ離れている相手ではない相手に4-0のスコアを無観客の状態で実現するのは極めて厳しいように思う。


選手が観客を求める世界

私はコロナ前の世界はどちらかというと”観客が選手”を求める世界だったように思う。満員ではないにしろ、常に一定数の観客が当たり前のように入っていたクラブの選手は「もっと観客が入ってほしいなぁ」とは思いつつも、その願いが切実だったかというとそうでもないのではと思う。

たぶん、選手によってはそこまで関心がない人もいたと思う。

しかし、Jリーグも含めて少なくとも今年は無観客でやる可能性が高いと思っている。

私が応援しているジュビロ磐田は、まだ41節を残している。41試合も無観客でやる可能性があるのだ。これほどの試合をやれば、嫌でも観客が今までどのような存在だったかを味わうことになるだろう。

今回のような状況は、当然起きなかった方がいいのだが、あえてポジティブに捉えれば、選手(や現場)が本当の意味で観客の価値を知る機会になるのではと思う。このような状況を経験した選手たちが将来フロントに入るかもしれない。そうなったときにもしかしたら、そのときはコロナのことを全然知らない世代がいるかもしれない。そうなったときに観客がスタジアムにいてくれることの価値を本当の意味で味わった人の経験値は非常に大きいと思う。

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