筋ジストロフィーの遺伝

筋ジストロフィーが発症する確率

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性、壊死による筋力低下を主な特徴とする遺伝性の疾患のことを指します。

さらに掘り下げれば、ジストロフィンと呼ばれる蛋白質の欠損によって、筋細胞膜の保持、強化、情報伝達に異常をきたす病気です。

ジストロフィンとは、いわゆる生物の性別を決める遺伝子であるX染色体短腕にある巨大な遺伝子の一部のこと。

何が言いたいのかというと、この病気は遺伝性の疾患であり、親から子へ遺伝する可能性があるということ。

実は、この病気の怖さの一端はここにあります。

今回はこの病気の遺伝に関する確率のことを書いてみます。

なお、今回取り上げるのは、筋ジストロフィーの中でも、遺伝形式が同じとされるデュシェンヌ型、ベッカー型になります。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、3,000人に1人の割合で発症する

筋ジストロフィーの中でも、もっとも発現頻度が高く、重症であるデュシェンヌ型は、3,000人に1人の割合で発症すると言われています。

これは、両親、祖父母、親族共に健康な場合のだいたいの数値としてご認識ください。

もし、両親や祖父母、親族に病気の遺伝子を持った人がいれば、確率はまた変わってきます。

ベッカー型筋ジストロフィーは、30,000人に1人の割合で発症する

筋ジストロフィーの中で、発現頻度が低く、軽症であるベッカー型は、3万人に1人の割合で発症すると言われています。

なお、後述していますが、女性が病気の原因遺伝子を持っていても、ほとんどの確率で発症しません。

父親が病気の原因遺伝子を持っていると、25%の確率で孫に発症し、母親が病気の原因遺伝子を持っていると、50%の確率で子に発症する

筋ジストロフィーは、「X連鎖劣性遺伝」という形式で遺伝します。

生物の性別を決定する遺伝子に、X染色体とY染色体があり、その中のX染色体の異常、欠損によって遺伝するとされています。

遺伝の確率をわかりやすく言うならば、父親が病気の原因遺伝子を持っていれば、25%で孫に発症し、母親が原因遺伝子を持っていれば、50%の確率で子に発症するといえます。

言葉ではわかりづらいので、簡単に手書きで図を描いてみた。

男性はX染色体とY染色体が1つずつ、女性の場合は、X染色体が2つあるとお考えください。赤丸で囲ったXが、病気の原因遺伝子を示しています。

子供が生まれるとき、母親と父親の片方の遺伝子が受け継がれます。

上記のルールに則って考えてみると、父親が原因遺伝子を持っていた場合、娘に病気の遺伝子が受け継がれ「キャリア」となることがわかります。

しかし、女性の場合は、キャリアとなっても、ほとんどの場合、病気を発症しません。というのも、女性の場合は、X染色体が2つで1対となっているため、遺伝子の欠損が補完されるからです。

ごく稀に補完されずに、女性でも発症する方もいるようです。

次に、母親が原因遺伝子を持っていた場合についてです。

この場合は、子供が生まれると、息子に原因遺伝子が受け継がれる可能性が出てきます。

息子に原因遺伝子が受け継がれた場合、この病気が発症します。私のパターンがこれでした。

私の場合は、仮に結婚して娘が生まれたら病気の原因遺伝子が受け継がれたことになります。子供には発症しないけれど、娘がキャリアとなる可能性があり、最終的に25%の確率で自分の孫に発症する可能性があります。

ともあれ、筋ジストロフィーに限らず、希少難病は、健康な両親から突然変異で生まれることもあるので、誰にいつ発症してもおかしくありません。

世の中に数千以上ある希少難病のことを考えれば、健康に生きていること自体が奇跡なのかもしれないですね。

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