【#ガーデン・ドール】俺の物語 -零-

さぁ、"俺"を始めよう。






同じ髪の色、同じ瞳の色。
…同じ傷。

「…ふふ、はじめまして?私の名前は、リラです」

「…知ってるよ、お前のことはなんでも」

これは、叶うはずのなかった願いが叶ったときの出来事。

+++++

■■が『破壊』に気付いた瞬間。

"それ"は息をした。
また、同じことの繰り返しになるのか。
それを懸念した本能が生み出した存在。

"それ"は、暗闇の中にいた。
真っ黒で何もないその空間は、寒くもなければ暑くもない。
目の前には、なにもない。
しかし、目を閉じると見える景色。
■■を通してみるその世界は、見ていて楽しいものも、複雑なものもある。

"それ"は、口を出した。
■■の意識に介入することを覚えたあとは、よく勝手に外に出ては世界を楽しみ。
危なくなると、有無を言わさず自分が盾になった。
純粋な花を傷付けないように。
護るべきものを護るように。

"それ"は、気付いた。
落ち着いた深い、安心感を与えるその緑が、最近よく見えることに。
ほどなくして、その色が■■の世界の中心になっていた。
護ると決めた存在は、護られるものを自ら選んだ。
ないはずの心がすこし傷んだ気がした。

"それ"は、自覚をした。
『■■■■』と幾度か言葉を交わすうちに、見かけると自ら出るようになった。
ふわふわと笑うその表情を、自身の記憶としたのは何時からか。
楽しむのもつかの間、その隣には知らない色がいた。
そして、己の介入する余地のないことに目を開けた。

"それ"は、約束をした。
迷い、戸惑う『■■■■』に初めて、欲をぶつけた。
一方的なそれは、ふわりと受け止められて、拍子抜けする。
その後見たふわふわと笑うそいつは、苦しそうに息をしていた。
どうしてこんな時に、そこにいないのか。
悔しさで、また言葉をかけた。
そいつは、からころと笑って「ありがとう」と言った。

"それ"は、無力だった。
隣にいるはずの色はおらず、今どうしているかもわからないあいつが。

あいつが泣いている気がする。
あいつが助けてと言っている気がする。

あいつが。
あいつが、あいつが。
あいつが、あいつが、あいつが。

 
あいつが、名前を、呼んでいる。

"それ"には、何もできない。

"それ"は、終わりだった。
己を捧げると。その緑が、良いのかと。
■■を見るその色を、認めるしかなかった。
何もできない。どうしようもなかった。
そして、己のタイムリミットを悟る。

一歩、また一歩、白に自分の軌跡を遺して。
一刺し、また一刺し、銀色を自分の胸に飲み込ませて。
笑顔で、「あいしています」と言った■■は、心を緑に捧げた。

そうして、俺の守護じんせいは終わった。

+++++

気付けば、目の前には見慣れた景色。
無力を感じて絶望したはずの世界。
しかし、足の裏には地面の感触を感じるし、頬を撫でる風は少し冷たい。
小さくくしゃみをして、声が出ることに驚いた。
自身の手を握って、開いて、また握って。

そうして確信する。

夢でも構わない。
地獄でも天国でもいい。
足掻いて、藻掻いて、そして、果たしてやる。

行くべきところは決まっている。
精々、首を洗って待ってるこった。

闇から生まれた俺の物語は、これから始まる。

さあ、"レオ"おれの幕開けだ。



#ガーデン・ドール
#ガーデン・ドール作品

【主催/企画運営】
トロメニカ・ブルブロさん

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