【#ガーデン・ドール】分からなかった気持ちが生まれた日
『シャロンさんが見つかった』
その一報を受けて、寮のLDKは様々な反応で溢れかえった。
共通してあったのは『見つかってよかった』と、『優しさ』
表現は違えど、それを多種多様な形でみんな持っていて、改めてドールたちの暖かさに触れた日。
私に、分からなかった気持ちがうまれた日。
見つかったと聞いた瞬間、喜びと安心のあまり、隣にいた彼に抱き着いてしまった。
「みつ、みつかったって、いま…!!」
「おっ、と!?」
これが私の聞き間違いじゃないことを知りたくて、優しい深緑の瞳を見ながら伝えると、私を受け止めぽんぽんと優しいリズムを刻んでくれた彼も、ちゃんと連絡を受け取っていたようだった。
安心してなのか、私の視界はゆらゆらと揺れて、ぽろぽろと零れていき、誰にも見られたくない思いから、彼の制服を握り少し俯く。
「良かった、です…」
ひとりごとのような言葉を落としてただ泣きつくしかできない私を、やさしく、頭をわしわしと、安心するように撫でてくれる。
「緊張の糸が切れたかあ……俺でも力抜けるんだから、外に出て捜索行ったら余計にそうなるよな……」
落ち着いた声で言葉を紡ぎながらも、次にはどこで見つかったのか、食べ物は足りるか、などの心配をしている様子に、彼らしさを感じる。
(いつも誰かのことを庇護している彼らしい…自身の尊厳を忘れない)
まだ視界の揺らぎは落ち着かないのにも関わらず、頭の中は太陽のような彼女のことから、冷静に物事を見つめる彼のことを考えていた。
「今のうちに泣いとけ泣いとけ。シャロンが帰ってきた時に泣かなくていいだろ」
そう言って背中をゆっくりさする彼の手の暖かさに、お世辞にも綺麗とは言えない表情と返事を返しながら、またぽろぽろと透明な雫は零れていった。
どれくらい経っただろうか。
長かったのか短かったのか分からないけれど、自分の気持ちの整理が出来て落ち着き、改めて冷静に現在の状況を考える。
とたん、恥ずかしさが込み上げてきた。
「んん…もう、だいじょぶ、です…!失礼しました…!!」
「……気にすんな。そうなるだろ、こんな状態なら」
よくあるコミカルな効果音が付きそうなほど、勢いよく離れて、顔を乱雑に拭い、自分をまた違う意味で落ち着かせるために、キッチンへと逃げ込む。
そんな私を笑いながら送り出してくれる。
その様子にまた、私は落ち着きがなくなる。
キッチンに辿り着いて、先にいたドールたちと会話をしつつ、お腹のことも考えた結果量産されていくおかゆをかき混ぜながら、また思い出してはぱたぱたと顔を仰ぐ。
途中、林檎を剥きに来た彼に再度どきりとしたが、それはナハトさんの念話ですぐにかき消された。
私の太陽が帰ってきた日。
そして、私がずっと分からなかった『誰かを想う気持ち』が生まれた日。
この日は、私にとって特別な日になった。
そんな気がした。
リラ、はじめての気持ちに混乱気味。
実は泣き顔をはじめて見せたドールは彼なんですよね、という知ってるとまたうふふ、となる情報なぞ。
#ガーデン・ドール
#ガーデン・ドール作品
【主催/企画運営】
トロメニカ・ブルブロさん
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